軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帰国

王都に到着して辺境伯と別れ、学校の王族寮に戻った。

サールは執事に頼んで、王都のギルドで必要な薬草を買って来て貰う。すぐに調合して、ロゼレムに渡す薬を作成した。

念の為、執事に頼んで本職の薬師にも同じ物を調合して貰う。両方揃えておけば問題ないだろう。

ロゼレムは家族も同伴するし、荷物をまとめないといけないので、王都に来るまで時間がかかる。完全に引っ越す訳ではないが、しばらく滞在して、薬が効くか様子を見なければならない。ある程度の荷物は必要だ。

ロゼレムの旅にかかる諸経費はノエラが渡したので、そう時間をおかずに到着する筈だ。

一方、レオンと老人には帰国しろという催促が絶え間なくきていて、モルフの額には青筋が浮き立っている。

サールもそれに同行するので、ロゼレムの到着を待っていられない。

そこで言い出しっぺの執事に後を任せて、トマリーナに帰国する事にした。必要な書類は用意しておいたので、説明も執事にお任せだ。万事そつがない執事なら、滞りなく契約をまとめてくれるだろう。

問題があれば、マナミリュ殿下の意を汲んだユーズが上手く采配してくれる筈だ。

サールは後ろ髪を引かれながら、また旅立った。

帰りの旅は順調だった。国境には王都からの迎えの騎士団が待ち構えていて、レオンと老人は直ぐさま捕獲されたのだ。

レオンも老人も苦笑していたが、モルフはほっと胸を撫で下ろしていた。

明らかに貴人が乗っていると分かる豪華な馬車に揺られて数日。

ようやく王都に到着する。

王城に入り、第一王子宮へ向かう。玄関に横付けされたので降りたら、国王と王妃、第二王子まで勢揃いして待ち構えていた。

「兄上! お帰りなさい!」

よほど待ち侘びていたのか、第二王子が駆け出してレオンに飛び付く。普段は大人びた第二王子なのに、あまりに嬉しかったのか子供みたいにはしゃいでいる。

レオンも久しぶりの弟の笑顔に相好を崩した。

「ただいまブラウ。無事帰りました。父上、母上」

「おかえり。元気そうで何よりだ。どうやら聞かなければならない事がたくさんあるようだが、とりあえずゆっくりと休みなさい。また夕食の席で会おう」

「はい。ありがとうございます」

レオンが家族と挨拶を交わして、国王夫妻と第二王子が去ると、使用人の後ろに控えていたローブ姿の文官が前に出て来た。

「キンバーン様、ようやくお戻りで。無事なお姿、安心しました」

言葉遣いは丁寧だが、その中年文官の顔は引き攣っている。憤りを無理矢理抑え込んでいるかのようだ。

「やあ、チリ。わざわざ出迎えに来たのかな?」

「当然です。お疲れでしょうが、とりあえず職場に寄って貰いますよ。緊急の案件が幾つかあるので」

小さな老人を捕獲した文官は、逃がさないとばかりに腕をしっかり掴んでいる。

にこにこ笑っている老人は、されるがままだ。もしかしたらこのようなやり取りはいつもの事なのかもしれない。

「レオン殿下、しばらく別行動になります。すぐに会いに行く事になりそうですが……」

「はい先生。私も先生の職場を見学させて頂きたいです」

「歓迎しますよ。ではまた」

「はい」

二人の親しげなやりとりに文官は不審そうな表情になったが、足を止める事はなかった。

老人と文官が消えると、第一王子宮の執事や使用人達が動き出した。

「殿下、お帰りなさいませ。モルフ様、サール様もお疲れでしょう。さあ、どうぞ中へ」

「ありがとうございます」

荷物を持ってくれた使用人に続いて、建物の中に入る。アルデはいつの間にかそちらに混ざって使用人になっていた。

「あぁ帰って来たんだな。何だか感慨深い」

玄関ホールの景色を見てレオンが漏らすと、執事がにこやかに応じた。

「殿下のいらっしゃらない王子宮は静か過ぎて、寂しくて、張り合いのない日々でした。お帰りを一同お待ちしておりました」

「留守を守ってくれてありがとう」

「いいえ。お戻りを嬉しく思います」

「そうだ。帰ったばかりで悪いが、都合のいい時に鍛冶職人を呼んでくれないか?」

執事は驚いたようで軽く目を瞠った。

「鍛冶職人ですか?」

「うん。発注したい物があるんだ。それと庭の一角に置きたい物があって……。ちょっと大きいから建物の裏側がいいかな? 庭師が美しく管理してくれているのを崩すようで申し訳ないが……」

「庭師に遠慮なさる必要はございません。鍛冶職人の手配をしておきます」

「うん。よろしく」

執事は頭を下げた。

レオンの不在中は張り合いがなかったのか、久しぶりに命令を受けてとても嬉しそうだった。

夕食の席は、当然レオンの話になる。特にみんな魔法に関して強く反応した。

「魔法の授業で光ったとは聞いていたが……そんなに訓練してしていたとは知らなかったぞ」

「ベッドの中で暇だったので。時間はたっぷりありましたから」

驚く国王と王妃に、レオンは詳しく語る。

小さい時から魔法に憧れていて使ってみたかったこと。ベッドの中でひたすら魔力回路を意識して訓練していたこと。当時は具合が悪くて魔法が使えなかったが、授業で久しぶりにやってみたら使えたこと。しかも体内を巡る魔力がいきなり溢れ出し、白く光ったことも。

「魔法使いの中でも光るほどの者は稀だと聞くが」

「どうやらそのようですね。私も驚きました」

「その後、何やら事件に巻き込まれて更に魔力が増えたとか」

「ええ。ですがその説明はキンバーン先生も同席して貰った方がいいと思います。非常に信じがたい嘘みたいな話になるので」

「そうか」

「我が国の魔法使いの部署は機密扱いだと聞いておりますが、私も魔法使いになりました。見学してもよろしいですか?」

「そうだな。キンバーンからもレオンの手を借りたいと申し出があった。許可しよう」

「ありがとうございますっ」

レオンの笑顔が輝く。とても嬉しそうだ。

つられるように国王も王妃も第二王子も笑顔になり、和やかな食事になった。