軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

3話「人間はやめますわ」

ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ。

あのですわね、私、フルーティエの長男やその他生き残り達を奴隷にしたらお金も儲かりますし、復讐にもなっていいと思いましたの。

でも、奴隷に首輪を嵌める機関はエルゼマリンにはありませんの。

エルゼマリンに機関を誘致するためには貴族位を大量に買ってエルゼマリンには奴隷の需要がある、と思わせる必要がありますわね。

そして貴族位を買う金はありませんわ。

……ですので戦争ですわ!ええ、簡潔な答えですわね!

「お嬢さん。あなた戦争ってね。ちょいとぶっ飛びすぎなんじゃあありませんかね?」

「そうかしら?一番手っ取り早く稼げる方法だと思いますわよ」

だって国を挙げて代々やってきた金策ですもの。稼げないわけが無くってよ!

「まず、戦争に勝てばお金が手に入りますわね」

「そーね」

「戦争中は武器がよく売れますからそこでも稼げますわね」

「銃は売らないにしても、まあ、剣とか集めときゃあそれなりに稼げるでしょうよ」

「薬の類も売れますわ。敵国で略奪すればその分は臨時収入になりますわね」

「……発想が悪魔のそれよねお嬢さん」

ええ。冴えすぎていていっそ悪魔的、というのもよく分かりましてよ。

「ですから、戦争ですわ!戦争で儲けますわ!これが一番ですわ!」

「そりゃあ、国単位での武力がありゃあ、戦争で稼ぐ、って発想も許されるかもしれないけどね。俺達、ギルドの連中だの山賊だの合わせても100かそこらの勢力よ?戦争に足りるとは到底思えないね」

でしょうね。まあ、国を落とすには国単位での武力が必要になりますわね。分かり切ったことですけれど……。

「それは、国を相手に私達が戦争しようとしているからでしてよ!」

「流石に、国相手に戦争吹っ掛けて勝てるとは思いませんわ。というか個人や町1つ程度じゃあ、国に歯向かったところで『戦争』の体にすらならないでしょうし」

他国が相手にしてくれれば良いですけれど、到底、それは期待できませんわね。恐らく普通に無法者扱いされて終わりですわよ。戦力差が違いすぎますわ。

大規模な戦争をする力は私達にはありませんし、私達にもできる規模の戦争じゃあみみっちすぎて儲けられませんわ。どうせやるなら一気に儲けられた方がよくってよ。

「……ですから、私達は戦争しませんわ。ドンパチやるのは他所と他所。私達はそこに商人や火事場泥棒、時々傭兵として入るだけですわ!」

そう。戦争なんて、自分達でやるのは馬鹿らしくってよ。リスクは国が背負う。旨い汁は私達もお相伴に与る。これが一番いいですわ!

「国が動く理由は十分にあると思いますわ。ここで戦争一発吹っ掛けて儲ければ民衆の怒りも収まるでしょうし。国としても儲かりますし。ね?今、戦争を起こすだけの理由は王家にも十分あってよ」

本来なら私の公開処刑で民衆の鬱憤晴らしにしたかったんでしょうけれど、その私が適当に一演説ぶちかまして逃げましたもの。民衆の怒りは私で解消されることなく、むしろ増幅されて王家へと向かっているはずですわ。

「確かにね。僕ら、町の方に行ってきたけどさ。結構どこもピリピリしてた。王家の悪口はどこででも聞ける」

「いい気味ですわねえ。でも、だからこそ王家は躍起になって対策しているはずですわ。私だけに執着している余裕なんて無いはずでしてよ。どこかで民衆の鬱憤を晴らさなくては、と考えるなら……戦争には乗ると思いますわ」

2月後には王国祭ですけれど、まさか王家が『お祭りで民衆を楽しませよう』なんて発想にはならないでしょうしね。なら、他にやることが無い今、戦争はいい選択肢だと思いますのよ。

「……で、具体的にはどうやって戦争に持っていくのよ」

そう。残る問題はそこですのよね。でも大丈夫ですわ。ある程度は考えてありますわ。

コストはほとんど無し!ただ情報を流して王家の出方を窺うだけ!たったそれだけの方法ですわ!

「王家も儲けたい気持ちは私達と同じ。きっかけさえあれば戦争吹っ掛けてくれると思いますわよ。……ですから、エルゼマリンの時と同じですわ!私の名を出してきっかけを作って、そこを潰させますわ!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアを匿っている国があったら、潰す名目は十分でしょう?」

それから1か月弱。私達は動きましてよ。

私は実際に適当に渡航して海外旅行を楽しみましたし(当然ですけれど密入国、密出国ですわね)、そこで私の痕跡を残してきましたわ。

勿論、外国に伝手なんてありませんから特に大きな行動はできませんでしたけれど。でも、エルゼマリンのギルドに居た時よりもよっぽど色々と情報を残してきたつもりですわ。

……その間に大量の武器を仕入れておいたり、薬の類を買い占めたりして準備しましたわ。

そうして『いつ戦争が起きても問題ない』と思えるくらいになったら、エルゼマリンのギルドから王家へ『ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアが隣国に匿われている』という情報を提出しますの。

これで王家はきっと動きますわ!戦争大好きな連中ですもの!

そして私達はそこに武器と薬を売って儲けますのよ!完璧ですわ!

……と、思っていたのだけれど。

「全ッ然!戦争が始まりませんわーッ!」

予想と違いましたわ!

予想と違いましたわ。ほんと違いましたわ。

私が隣国に匿われている、という情報も私の目撃情報も、しっかり耳揃えて提出しましたのに、精々いくつかの部隊が派兵されただけでしたわ!まあ派兵された先、もう私は居ませんけれど!エルゼマリンの港から、私を探しに行く兵士達が出港していくのを見送る位置に居ましたけれど!

「……困りましたわねえ。これただ単純に、私が隣国に居ることになっただけでしてよ……?」

私はエルゼマリンに帰ってきたのですけれど、ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアは隣国に居ることになってしまいましたわ。いえ、そうなっても特に困りはしませんけれど……何の得も無くってよ!

「ついでに武器と薬の在庫も滅茶苦茶に抱えたな」

「まあ、そこはどうせ使うものですから……」

……そう、そうなんですの。武器と薬の在庫、確かに大量に抱えましたわ。

まあ、武器も薬も違法改造していない空間鞄に入れておけば保存はできますから、このまま寝かせておいてもいいと言えばいいのですけれど……。

「どうするよ。流石にこれじゃあ無理があったみたいだけど」

「おかしいですわ……ここの王家のことですから、きっかけさえあれば絶対に戦争吹っ掛けると思いましたのに……」

というか、フルーティエは没落直前、銃を使って戦争吹っ掛けにいくんだとばかり思ってましたけど……。

……読み違えたかしら?

まさか『戦争なんて悪い事だからやらない』なんていい子ちゃんな事は今更言わないでしょうし、うちの国、馬鹿ですけれど弱くはありませんし、過去に散々他国を蹂躙してきましたし……正直、ここで戦争にならない理由が分かりませんわ。

それこそ何か……他にやることがあるから、というような理由しか思い当たりませんし、それが『ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアを追う』以外のことだとしか思えませんし……。

……。

「え、まさか本当に王国祭を盛大にやるから戦争どころじゃない、って事なのかしら……?」

「祭を?いやぁ、まさか」

「そのまさかかもしれませんわよ?少なくとも戦争をすると、確かに一時的には民衆の生活は荒れますもの。だったら戦争をするよりも先に民衆のご機嫌取りをしたい、という考えに至ってもおかしくは無いですわ。いえ、その考え自体がちゃんちゃらおかしいものではありますけれど!」

「まあ、王家としては他に打つ手がねえよなあ、多分……」

うーん……王家も最早、軽率に戦争できる程の体力が無い、ということかしら。一体どうしてここまで民衆は荒れてしまったのかしら?あ、私のせいですわね?

まさか自分で自分の首を絞めることになるとは思っても居ませんでしたわ。これ、どうしましょう?

私達の手元にあるのは、大量の武器と薬ですわ。

そして、欲しいものは大量のお金。

……武器と薬が大量に売れる環境さえ生まれればいいのですけれど……それって、戦争以外にありまして?

武器は戦うことでしか使いませんわ。

薬も、怪我をする環境が無ければ不要のものですわ。

ですから、戦って怪我をするような、そういうことがあちこちで起こらなければならなくて……。

「人間じゃなくてもいいんじゃないかしら……?」

「ん?お嬢さん、今なんて?人間辞めるって言った!?」

言ってませんわ!

「いえ、ただ、戦う相手は人間じゃなくてもいいんじゃないかと思っただけですのよ」

そうですわ。人間を無理に動かそうとするから大変なんですわ。

武器を使うのは人間ですけれど、武器を使われるのまで人間である必要は無くってよ!

「魔物を!魔物を大量に用意して!それを大量に解き放てば良くってよ!」

例えば、スライムだったら簡単に繁殖させられますわね。尤も、アレを駆除するのに武器はほとんど必要ありませんけれど。

……でも、他にも探せばいくらでも、繁殖力の高い魔物は手に入りますわ。それを空間鞄の中で大量に生み出して、国にばら撒く!そうすれば自然と武器が売れますし薬も売れますわね!

「……それをやると国が荒れ果てるが」

勿論、問題はそこですわ。

魔物を超大量発生なんてさせた日には、国が荒れ果ててしまいますわよ。

そうなると……まあ、厄介ですわね。貴族共は国外逃亡するでしょうし、復讐を完遂しないまま有耶無耶、ということもあり得ますわ。

でも大丈夫ですわ!

「ですから、うちの国でやる必要は無いですわ」

「隣国が魔物の餌食になるだけですわ!」

国って沢山ありましてよ!