軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15話「お久しぶりですわね野郎共」

ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ。

私は今、子供ドラゴン達と戯れつつ、次なる作戦について口にしているところですわ。

それは……エルゼマリン分裂!

ギルドを中心とした一派と、『悪党』たる一派が対立して分裂する。そんな作戦でしてよ。

「分裂?スライムみたいに増えるってことか?」

「スライムみたいに、というとまた違う気もしますけれど。『2つに分かれる』という点ではスライムが増える時に似ているかもしれませんわね」

エルゼマリン分裂、の概要は、こんなかんじですわ。

まず、ギルド側が黒金貨を納めるときに、『王家に反発する一派がギルドから離反した。おかげで現在のギルドは王家に対して非常に友好的な組織になったが、離反した者達が何かしているかもしれない』というようなことをギルド所長から言わせておきますわ。

そして、その伏線を回収するかのように、黒金貨の箱を奪取。これにより、兵士達には『反王家反ギルド派』の存在をしっかりと認識してもらいますの。

……最終的に、黒金貨の箱は王家に届けられ、そこで開錠を待つことになりますわね。丁度その頃……『エルゼマリンで反乱発生、ギルド率いる親王家派と、悪党の集団である反王家派が衝突している』というような情報を流しますわ。

実際にある程度は戦うつもりですわよ。ある程度、街並みに戦いの痕を残しておきますわ。

……けれど、それが終わったらもう解散。反王家派は親王家派に押されて、投獄されたり逃げ出したりして一件落着、となりますの。

「要は、お芝居ですわ。『ギルド所長率いる新生エルゼマリンは、しっかり王家に尻尾を振る犬だ』と認識してもらいつつ、一方で反王家派の者達がエルゼマリンを追い出された、という印象付けを行いますの」

「ついでに、黒金貨を盗んで『贋金とすり替えた』のは反王家派の者だ、と主張できるか」

「そうですわね。贋金が最初から贋金だったかなんて、どうせ分かりっこありませんわ。兵士の目にさえ見破られなければいいんですから」

見えやすい位置に『敵』を作ることで、『真の敵』が地下に潜みっぱなしで『味方』と手を組んでいる、などとは思えないようにする。そのためのお芝居でしてよ。

「……ただ、それは構わないが、役者は足りるのか?お前が表にでるのは得策ではないだろう」

「そうですわねえ、若干、役者が足りていない気はしますわ。ドランならまだしも、キーブあたりはまだ温存しておきたいですし……」

キーブが居ると、『ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアと関係がない人物』の役回りができる人ができて助かるんですの。今回の処刑台脱走もそうでしたけれど、顔が割れていない仲間が1人いるって、とても有用ですのよ。

ですから、このアジトの5人を使いまわす、というのはあまり得策ではなくってよ。どうせなら、新しい人員を手に入れたいところですわね。

……ただ、こんな用途で人員を募集できるかというと、まあ、当然ですけれど無理がありますわ。

勿論それは……『ギルドが悪党と手を組んでいなかったら』の話ですけれど!

「なら、ギルド所長の方で適当な冒険者を見繕ってもらいますわ!」

「あー、そっか。ギルドももうこっち側なんだっけ。じゃあ問題ねえな」

適当に暴れて逃げてくれるような、既に裏通りに片足突っ込んでる連中を雇えばよくってよ。彼らを雇うくらいのお金なら準備がありますわ。

まあ……彼らの人数がどれくらい集まるのかは分かりませんから、そこはちょっと不安要素ですわね。できれば他からも人材を集める筋があればいいのですけれど……あまり期待できないかしら。案件が案件ですものね。

まあ、役者は何とかしましょう。ここで大がかりなお芝居を1つ打てば、エルゼマリンのギルドを通じて王家の情報がしっかり入ってくるようになりますわ。こうしてエルゼマリンは表の顔と裏の顔を持ち合わせる、私の町になるのですわ!

ジョヴァンが贋金を作っている間に、ドランは彼なりの人脈を使って協力者を探しに行ったようですわ。

チェスタは酒瓶片手に子供ドラゴン達と戯れ始めましたわね。……1個っくらい卵のまんま残しておいてくれればよかったのに、2つ目も雌だった時点で全部一気に火にかけたのがチェスタですわ。卵の恨み、忘れませんわよ……。

「俺も参加するかなぁ。楽しそうだし」

「じゃあ投獄してあげますわね」

チェスタなら、私程は顔が割れていませんし、こういうところで暴れる役回りにしても問題は無いと思いますわ。

「投獄されんの?俺、ドランじゃねえから流石に自力で脱出できる自信はないんだけど」

「……まあ、あの筋肉狼と同じ性能だったらあなたは薬中になってませんわよ、多分」

「はは、違いねえや」

チェスタはケラケラ笑ってますけど、こいつ『そもそもエルゼマリンの牢はエルゼマリンの警備隊の管轄であって王家の管轄ではない。むしろギルドの管轄だから実質脱獄し放題』ってところ、分かってませんわね?まあいいですけれど。

「……ところでドランって、どうして王都の地下ムショになんて入れられていたのかしら」

チェスタの脱獄云々の話を聞いていたら、なんかそこらへん気になってきましたわね。

……ええ。気になってたんですのよ。ずっと。

私が初めてムショ入りした時、ドランも一緒に脱獄しましたわね。その縁で私、今、ここに居るわけですけれど。

……けれど彼って、そもそもどうして投獄されていたのかしら?

罪状も気になりますけれど、それ以上に……『どうして捕まるようなヘマしたのか』が気になりますの。

彼の能力があれば、兵士数人蹴倒して出てくるなり、壁ぶち抜いて出てくるなり、やろうと思えばいくらでもやれたはずでしてよ。

「え?あー……俺も詳しくないし、大体、俺が言うことでもないだろ、それ」

「あなた、こういうところだけ真っ当な感覚ですのねえ……」

けれど、チェスタはなんだか言い渋りますわね。まあ、無理に聞き出すつもりもありませんけれど。

「聞きたいんなら聞いてみればいいんじゃねえの?多分、教えてくれると思う」

あ、そうですの。まあ……適当なところで聞いてみることにしますわ。単なる興味で聞くのも何か申し訳ないような気もしますけれど。

さて。

それからしばらくチェスタと雑談しながら待っていたら、ジョヴァンが帰ってきましたわ。どうやら、贋金職人にしっかりやってもらう約束を取り付けてきたとか。それから、滅茶苦茶に面倒くさい鍵のついた小箱も注文したそうですわ。これで小道具は準備万端ですわね。

「ギルドの方はとりあえず、『黒金貨1枚を払う』ってことで王都に連絡済み。黒金貨受け渡しの日は明後日に設定したみたいだから、そこまでには用意してもらえるように頼んできたぜ」

「小道具はなんとかなりますのね。あとは役者、ですけど……」

……ギルドの伝手で、暴れてくれるような奴らを上手く手に入れられればいいんですけれど、本当でしたら、もっと本当に悪党な連中を使いたいところなんですのよね……。

かといって、この裏通りには敵も居ますわ。私達の稼ぎっぷりを良く思わない連中が居るのは相変わらずですもの。今は実力差が見え透きますから相手も黙っているでしょうけれど、下手に協力なんて呼びかけたら、大事なところで寝首を掻かれる結果になりそうですわね。

うーん、都合よくこちらの言うことを聞きそうな、或いは、ちょっと金をちらつかせれば言うことを聞くような、要はその日暮らしのしょうもない悪党、どこかに居ませんかしら……。

あ。

……ということで私、その夜の内に出かけましてよ。念のため、チェスタを連れていきますわ。まあ、必要ない気がしますけれど。

「どこに向かってんだよ?こっちって山だぜ?」

「山に向かってるんですもの。山の方に進んでいるのは当たり前でしてよ」

そう。私が向かう先は、山ですわ。

山にこそ、私が必要とする良い感じの人材がいるのですわ!

「只今戻りましたわ!お久しぶりね、野郎共!」

「お、お頭ァー!?」

ええ、そうですわ!

山賊って、馬鹿ですから裏切る心配はあまりありませんし、その日暮らしですから金と食料で釣れますし、何より、こちらの圧倒的な力を見せつけた相手なら言うことだって聞きますわ!

こいつら、実に丁度いい人材じゃなくって?

「ということであなた達は今日から山賊ではなく、エルゼマリンの裏通りのゴロツキになりますわ」

「そ、そりゃああんまりだぜお頭!」

「話が急で分からねえよ!」

……とりあえず、私が一時期一緒に居た山賊達のアジトに行って、そこで『エルゼマリンで少し暴れて投獄されたふりをしてくれればいい暮らしをさせてやりますわ』というような話をしてみたのですけれど、連中、『よく分からない』という状態ですの。流石、山賊ですわ。おつむの方は期待できなくてよ。勿論、だからこそ使い勝手は良いのですけれど。

「要は、私についてくればもっと良い暮らしをさせてやると言っているのですわ。こんな山暮らしじゃなくって、ちゃんとした屋敷で生活させてやりますわよ。給金だって弾みますわよ?」

「そうか!なら俺はお頭についていくぜ!」

「決断が早すぎるだろ、お前……」

中には即決してくれそうな山賊も居ますけれど、やはりすぐに返事を聞くのは無理、ですわね。

……ええ。まあ、分かっていましたわ。元々こいつら山賊風情、決断力に優れていればこんな所で山賊なんざやってませんわ。

ということで。

「なら別の山賊に話をしに行きますわ。あなた達だけではどのみち人員が足りませんの。ここらにある他所の山賊のアジト、ありったけ教えなさい。教えないなら命は無いものと思いなさい?私の横に居る狂犬は簡単にあなた達を殺せますわよ?」

「わ、分かったよ!いいよ、あんたに逆らおうって気はねえよ!」

あら。チェスタをけしかけるまでも無く、他所の山賊の居場所も分かりそうですわね。これは良いことですわ。

……さて。

「ではあなた達はしっかり悩んで結論をお出しなさいな。私に協力するもしないも、あなた達の自由でしてよ」

私はそう言って……あらかじめ準備しておいた生物用空間鞄を振りかぶりましたわ。

「ただし身柄の自由は無くってよ!」

「ふぅ。全員収穫しましたわ」

「ははは。そっかー、全員拉致しちまうのな、お前」

これが一番早くってよ!どうせ私に協力した方が得なのですから、彼らをこのまま連れ帰ってしまってもどうせ問題なくってよ!おほほほほほ!