軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11話「脱獄できなくってもいいやって考えましたわ」

ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

なんだか知りませんけれど、私の処刑が思いのほか早かったですわ!ヤバいですわ!流石に今日の明日で脱獄は難しくってよ!

これは……大ピンチですわ!

「えっ?明日の朝?」

「そうだ」

「ちょっと早すぎやしませんこと?」

「貴様の刑は既に死刑の域を超えている。躊躇う必要もあるまい!」

一応念のため確認してみましたけれど、やっぱり明日のようですわね?このアホンダラ王のことですから何か間違えてるじゃないかとも思ったのですけれど、やっぱり明日なんですのね?

流石にこれは予想外でしてよ?公開処刑するにも、準備とかもう少しありませんの?流石にこれはあんまりでしてよ?

「今更許しを乞うても遅いぞ、ヴァイオリア・ニコ・フォルテシア!貴様の罪は重い!」

「その台詞そっくりそのままお返ししてやりますわよ。あなたこそ許されるとは思わないことですわね!」

ホント許しませんわよ!?これ、もしドラン達が間に合わなかったらどうしてくれるんですのッ!?一応予定では『ギルドの処遇のこともあるのでできるだけ粘る』って予定でしたのに!何なら、公開処刑の発表があってから動いても間に合う、くらいのつもりでしたのにーッ!

「精々震えて明日の朝を待つことだな!」

……国王はそう言い捨てて去っていきましたわ。

ホントに!マジで!許しませんわよーッ!?

こういう時こそ冷静にならなければいけませんわ。大丈夫ですわ。私は聡明で冷静な令嬢ですわ。慌ててなんていませんわわわわわ。

……ええ。深呼吸して、もう一度、考えてみましょう。ここの脱出方法を。

まず、自力で牢を破る、というのは少々難しそうね。長い時間と道具があれば床か壁を破って出られるでしょうけれど、明朝までに何とかしろってそんなの流石に無理ですわ。

となると、やはり正規の出入り口……牢の扉から出るのが一番いいのでしょうけれど、相手が警戒してこないとは思えませんわ。

だって私、前回ここのムショにぶち込まれた時は、食事を運びに来た兵士から鍵を奪って脱獄してますもの。となると、今回、兵士達は見回りに来る時には鍵なんて持ってこないか、或いはそもそも近づいてこない、という可能性もありますわね。

となると、扉を開けるための鍵は期待できませんから、こじ開けるくらいしかありませんわ。けれど、牢に入れられた時にチラッと見たかんじですと、ヤワそうな鍵じゃあありませんでしたの。ええ、連中も精密で複雑な鍵だって言ってましたわね。

大体この牢、前面が鉄格子ですのよ?見張られっぱなしですのよ?そんな中で不意を突いて動けるとしたら、ほんの数秒ですわ!その間に鍵をこじ開けるなんて、無理がありましてよ!

……これ、詰んでますわね?

……ドラン達の状況が知りたいですわ。或いは、こちらの状況を伝えたいですわ。

もし、万一間に合わなかったら……私、本当に死にますのね?

あ。

か、考えていませんでしたけれど……もし、もしドラン達が私を裏切っていたら、私、マジに死にますのね!?

あああああああ!これヤバい奴ですわ!ヤバい奴ですわああああああ!

私を殺したら麻薬の原料が手に入らなくなりますけれど、逆に言えばそれだけですわねえ!?裏切られる可能性、全く以てバッサリ考えていませんでしたけれど!これってものすごく危ない橋なんじゃなくってええええ!?

……いえ。駄目ね。冷静になりましょう。

まず、裏切られる可能性は……やっぱり、バッサリ切って捨てますわ。ええ。

それは『信頼しているから』なんて、そんな甘ったれた理由じゃなくってよ。単に、『そう考えないと完璧に詰みだから』ですわ。私が生き残れる道はもう、ドラン達に裏切られていないことが前提のものしか残っていないのですもの。ですから、裏切られた場合なんて考えるだけ無駄でしてよ。

……まあ、それとは別に、裏切られていない、と、思いたい、ですわね。

さて。なら私ができることといったら何かしら?

ドランが来てくれるのを待つ、というのが唯一の解なのでしょうけれど……このままいくと、制限時間は残り半日。

ドラン達が動けるのはどう考えても夜中ですし……でも夜中こそ、兵士達の警戒は厳しくなるでしょうし……。

……あ。

分かりましたわ。

私がすべきことは、時間稼ぎ。そして、兵士達にとっての『予期せぬ出来事』を引き起こして、混乱させること。そこに生じたほころびを、ドラン達がこじ開けてくれることに期待すること。

……つまり!

やらかし方によってはほぼ永久に時間稼ぎが可能になる技!ここの兵士達が絶対に予想していない行動!これですわ!

むしろ自分から閉じ込められてやることですわ!

チャンスは一度。それも、運が味方して初めて成り立つもの。……私は慎重に、その時を待ちますわ。

そして……来ましたわ!

「食事だ。最後の晩餐だな」

兵士が存分に警戒しながら、鉄格子の隙間から食事を差し入れてきましてよ。

私はすぐ、食事の内容を確認しますわ。

水、野菜と豆のスープ、そして……パン!

来ましたわッ!これで勝てますわッ!最高ですわ!

私は兵士が滅茶苦茶に警戒しながら去っていったのを見届けてから、食事に近づいて、そこで食事を摂り始めましたわ。

パンを千切って、小麦色に焼けたクラストの部分をスープに浸して食べて……そしてパンの内側、白く柔らかな部分を小さく千切って、またスープに浸して食べて……。

……そして、パンをもう一度、今度は大きく千切って……はい!今ですわ!

私は火の魔法と幻覚魔法を応用して……兵士達の持つランプの光を、消しましたわ。

兵士達が慌てながらランプに再着火しようとしたり、そのせいで幻覚でもなく本当に火を消してしまったり、そもそもこれが幻覚魔法だと気づかず慌てたりし始めたりするのを尻目に、私、動きましたわ。

そして見事、小細工を施すことに成功しましたの。

「な、何をした、ヴァイオリア・ニコ・フォルテシア!」

「何って、食事をしていただけですわよ?」

やがて、兵士達がようやくランプに火を灯し直した時には、もう私、優雅に食事に戻っておりましたの。

「……ただし、少々、あなた方に呪いを掛けさせていただきましたけど」

「えっ」

兵士達が青ざめながら互いを確認し始めるのを楽しく眺めながら、私は只々優雅に微笑んで、食事を続けましたわ。

……ということで、私の小細工はこの場ではバレずに見過ごされましたの。

夜中の間にドラン達が動くかとも思ったのですけれど、やっぱり厳しかったようですわね。

普通に朝が来ましたわ。

……でも、良くってよ。連中の鼻を明かすのにぴったりな仕掛けがもう完成していますもの。

「いよいよだな」

兵士の1人がにやりと笑って、私の前にやってきましたわ。

「これより、ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアの処刑を始める。……さあ、出ろ」

「ええ、良くってよ」

兵士が別の兵士に何か言って鍵を持ってこさせましたわ。そして、槍を構えた兵士達が牢の周囲を囲む中、牢の鍵が開けられ……ませんわ!

「あ、あれ?」

「おい、どうした」

「か、鍵が。鍵が入らず……」

「どういうことだ!?」

ざわつく兵士達を悠々と勝利の笑みで眺めながら、私は事態を見守り……そして、兵士が声を上げましたわ。

「鍵穴に何かが……ああ!パンが!パンが詰まっていますっ!」

ええ。やってやりましたわ。

牢の扉の鍵穴、パンで埋まりましたわ。

これでもう、鍵があってもこの扉、開かなくってよ!

そうですわ!逆に考えるのですわ!牢から出られないなら!逆に!でなくったっていいやと考えればいいのですわァーッ!おーほほほほほほ!

「さあさあさあ!私を公開処刑するんじゃあありませんでしたのぉ!?さっさと公開処刑でもなんでもすればいいですわ!勿論!私をここから出してから、の話ですけれど!おーほほほほほほほ!」

「く、くそ!すぐに鍵穴を直せ!」

「わ、分かりました!おい!何か細いものを!詰まったパンを取り出すぞ!」

兵士達が間抜けな事情でバタバタと動き始めたのを尻目に、私は牢屋の奥で堂々と待つことにしましたわ。

……ドラン達、さっさと来ないかしら……。