軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

9話「3回目のムショでしてよ」

ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ。

私、人生3度目のムショ入りを覚悟したところですの。

でも、私が身柄を差し出せばギルドを救えますし、その見返りにギルドをこちら側につけてしまえば、この町はもう私のものですわ!そのためならムショ入りなんて2度も3度も同じでしてよ!さあ!張り切ってムショに入りますわ!

ということでギルドにやって参りましたわ。ギルドの周りに居た兵士達は、『魔法学院の方で突如大量発生したスライムの駆除』に駆り出されていますわね。表に残っていた見張りは不意打ちできる位置に居ましたから、適当に気絶させて放り捨てておきましたわ。

カラン、とベルを鳴らしてドアを開ければ、懐かしい光景。

冒険者達が居て、受付があって。……あのピンハネ嬢は居ませんし、何より、皆が暗い面持ちで居ますけれど。でも、懐かしの光景、でしてよ。

私がギルドで暴れまわっていたのはほんの2、3か月前のことですのに、随分と昔のことのように思えますわね。

「ごきげんよう!」

私がギルドの中へ踏み入ると、周囲の者達は皆、私を見て……けれど少し不思議そうな顔をするばかりですわね。

そういえば私、このギルドでは常にフルフェイスの兜を身に着けていましたものね。私の顔が分からないのも当然ですわね。

私は颯爽とギルドの依頼掲示板まで歩み寄って、そこの隅の方に申し訳程度に貼ってある依頼をもぎ取ると、それを手に受付へと向かいましたわ。

「これについて、お話がございますの」

知らない男性職員の受付にそう言ってやりつつ、私は……受付の奥の方でぽかんとしているギルド所長を見つけて、にっこり微笑みました。

「所長さんとお話しさせていただいてもよろしいかしら?」

私はギルドの裏手にある所長宅へ、秘密裏に案内されて、そこでギルド所長とお話しすることになりましたわ。

……ギルドの受付に到着した瞬間にとっ捕まって、そこらへんの兵士に突き出される可能性も考えていましたから、これはちょっと拍子抜けですわね。ええ。

「お久しぶりですわね」

「ええ……いや、一体なんとご挨拶すればよいのか……」

ま、この困惑ぶりは分かりますわ。むしろ全く困惑されなかったら罠かと思って疑うところでしたわ。

「時間があまりありませんの。本題に入らせて頂きますわね」

けれどまあ、もだもだしている時間は無くってよ。スライム騒ぎの兵士達がいつこちらへ戻ってくるかも分かりませんもの。

「今、このギルドが大変なことになっていると聞きましたわ。私を庇った罪を今更挙げられて、罰金で黒金貨、ですって?」

「……ええ。その通りです」

ギルド所長はそう言って項垂れると、事情を話してくれましたわ。

「覚えてらっしゃいますかな、あの若い女性受付なのですが……」

「ああ、褒賞金をしょっちゅうピンハネしていた悪徳ギルド職員ですわね。確か、私を通報してくれたのも彼女だったはずですけれど。彼女が何か?」

案の定と言うべきか、ピンハネ嬢の話になってきましたわね。それほど大事をやらかしてくれた、ということかしら。

「実は、彼女は先月……貴族街の大量殺人があった直後に、辞職していまして」

「あ、クビじゃなかったんですのね」

「ええ、まあ、そうしたかったくらいなのですが……彼女の方から辞めると言い出したので、ならこれでいいか、と。ことを荒立てたくはなかったので」

まあ、妥当な判断ですわね。クビじゃないのは少し癪ですけれど、まあ、仕方ありませんわ。

「その彼女に一応、聞いたのです。辞職した後はどうするつもりか、と。……すると彼女は、言ったのです。『王城からお呼びがかかった』と」

「……王城?」

それは……随分と、不可解ですわね。

たかがギルドの受付嬢如きが王城に呼ばれる意味が分かりませんわ。特別な功績を挙げた英雄であるとか、何ならギルド所長本人であるとか、そういうことなら分かりますけれど……。

……あ。もしかしてこれって、私関係の事情聴取、ってことですの?

「彼女が何故王城に呼ばれたのかは分かりません。しかし……その結果がこれです。きっと彼女が、このギルドを売ったのです!」

ピンハネ嬢がギルドを売った、というよりは、とりあえず私と関わりがあって言いがかりをつけやすくて、ついでに貴族街が全滅した町のギルドだからこのギルドが狙われた、と考えられますけれどそこは黙っておきますわ。ピンハネ嬢が無駄に恨まれる分にはむしろ万々歳ですわ。

「兵士から出された令状がこれです」

ギルド所長はそう言って、机の上に紙を一枚、出しましたわ。

……まあ、予想していた内容ですわね。

まず、『ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアを組織全体で庇っていた罪に問う』ということ。

次に、『罰金として黒金貨1枚を納めよ』ということ。

そして、『もし罰金を納められない場合はエルゼマリンのギルドを解体する』ということ。

そんな内容が書いてありましたわ。期日は……3日後まで、ですわね。これ、黒金貨を用意させる気はない、ということですわね。全く、王家の奴らというものは、性根の腐った連中ですわ!

「そう……でしたの。ごめんなさいね、私がこのギルドを利用したばっかりに」

私がしおらしくしてみせると、ギルド所長は俯きながらも首を横に振りましたわ。

「正直に申し上げて……あなたを恨む気持ちが、無いわけではないのです。しかし、それ以上に……身勝手な王の命令と、あの受付が、憎いのです」

……ほーん。

これは中々、私を喜ばせるのがお上手ですこと。

「ところでアイル・カノーネ殿……いえ、ヴァイオリア・ニコ・フォルテシア嬢は、今までどのようにして……?」

「王都へ連行される途中、とある方々に助けて頂きましたの。今はその組織に居ますわ」

私はしれっとそう言って……さて。ではここで1つ、大きく出てみますわ。

「私が今居る組織は、今の王家を解体することを目的とした革命軍ですのよ」

「か、革命……!?」

「しっ。声が大きいですわ!」

「し、失礼しました。しかし、革命、とは……」

すっかりビビった様子のギルド所長を前に、私はいよいよ、本題を出しますわ。

「私、このギルドを救いたいんですの」

「救う……?あなたが?我らを?」

「ええ。私……このギルドにお世話になっていましたもの。このギルドが、私のせいで解体の危機に直面するなんて、あんまりにも……その、やるせないですわ」

これは一応、本心でしてよ。裏に他にも色々と思惑があることは否定しませんけれど、でもこれは一応本心でしてよ!

「ですから、あなた達にも協力して頂きたいの。このギルドを……この国を、救うために!」

はい。

そこからは怒涛の作戦会議ですわ。というか、作戦の通達ですわね。

内容は簡単ですわ。

まず、エルゼマリンのギルドから、『ヴァイオリア・ニコ・フォルテシア』を兵士に売って頂きますわ。要は、黒金貨1枚のお値段を私の身柄で賄えないか、交渉させますの。

……まあ、多分、兵士はすぐにそこで結論を出すことなんてできないでしょうね。でもよくってよ。そこで私は無事にムショにぶち込まれ、ギルドの処遇は一旦保留となるはずですわ。

そして私は王都へと護送されるはずでしてよ。恐らくは……まあ、以前よりもずっと厳重な警備の下、ですわね。ええ。

なので私はそこを華麗に回避しなければならなくってよ。そこはドラン次第、ですわね。正直私から動けるとは思えませんもの。

さて。そうして私が捕まっている間に、ギルドへ王都からの連絡があるはずですわ。

……そこでどういう判断が下されるかは、分かりませんわ。

無罪放免ということにされるのか、はたまた、『それはそれ、これはこれ』とばかりにギルド解体になるのか。

ここで作戦は、2つの道に分かれますの。

1つ目。もし、ギルドが許された場合。

エルゼマリンのギルドは、表面上は王都と仲良くやりつつ、その実態としては私と裏でつながった闇ギルドになりますわ。要は、スパイですわね。

こうすると当然ですけれど、王都の情報がずっと簡単に手に入るようになりますの。これは喜ばしいですわね。

そして2つ目。もし、ギルドが私を引き渡したにもかかわらず『それはそれ、これはこれ』でギルドも処分されることになった場合。

その時は……残念ながら、徹底抗戦、ですわ。ええ。

ギルドは『寝返った』ことを大々的に表明して、その勢いのままに兵士達を蹴散らしていくことになりますわね。

これは不安が残りますわ。エルゼマリンには海路がありますから、兵糧攻めにはしにくいでしょうし、学院と大聖堂を人質にとればそれなりに戦えると思いますけれど……うーん、まあ、考えても仕方ないですわね。こっちにならないことを祈りますわ。

……と、まあ、こういう作戦ですの。

この作戦成功の秘訣はまず第一に、私が脱獄できること。そして第二に……王が民衆の恨みを買いまくってくれること、ですわ。

これは『革命』ですの。

そんな大それた名前を付ける意味なんて、1つしかありませんわ。そう。民意を集めて束にして、王に楯突く強さと成すのですわ!

……王への不満が高まれば、町1つ丸ごと革命軍、とすることも可能だと思いますの。理想は『表面上は良い子ちゃん、裏では闇の世界とお友達の革命軍』ってところですけれど、まあ、それは今考えても仕方ありませんわね。

ということで。

私は王や王都の兵士への怒りを存分に煽って……ギルド所長に、言ってやりましたわ。

「あなたももう分かっているでしょう?愚かな国王は私達によい思いなんて何もさせちゃあくれませんことよ。あなたが今後も惨めに国王の言いなりになっていくのは勝手ですけれど……もし、それが嫌なら、私の手をお取りなさいな」

……こうして。

私は無事、エルゼマリンのギルド所長と手と手を取り合うことに成功しましたわ。

やっぱりアレですのね。敵の敵は味方、という奴ですわ。国王が敵を作りまくってくれているおかげですわね!

「では所長さん。私を通報してくださいな」

「ほ、本当に良いのですか……?」

「よくってよ」

ギルド所長は意を決して、通報しましたわ。勿論、私がただ捕まっていたらおかしいですから、ギルドに居た冒険者達の中でも信頼のおける奴(つまり金と自由が大好きな反骨精神溢れる、ほぼほぼ悪党みたいな連中でしてよ)数人が私を捕縛した、という設定でいきますわ。

さて。私、これでまたムショに入りますのね!

3回目のムショですわ!まあ、2回も3回ももう変わりませんわね!おほほほほほ!