軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

1話「違法改造は楽しくってよ」

ごきげんよう。ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ。

私は今……。

「暇ですわーッ!」

暇ですわ!超!暇!ですわ!

何を隠そうこの私、つい1週間ほど前にここエルゼマリンの貴族街の貴族を見事、皆殺しにしたばかりですの。そのまま火事場泥棒までしっかりして……しかし、その後に待っていたのは、退屈な潜伏期間でしたのよ。

「あれだけ派手に暴れたんだ。しばらくは隠れていろ」

「そうは言ってもやることが無さすぎてよ!毎日毎日ミスティックルビーを作るだけの日々!こんなのってないですわー!」

今の私の仕事といえば、血を薄めては小瓶に詰めて、ミスティックルビーの生産を行うことだけですの……。

ちなみに作ったミスティックルビーはジョヴァンに預けておくとお金になって返ってきますわ。

ジョヴァンは元々表舞台で暴れているわけではありませんし、店は客も店主もお互い顔が見えない造りになっていますから、ある程度安全ですのよね。むしろ今は、急に営業しなくなった方が不自然、ということで、彼の素性を知らない人達向けに営業を続けていますわ。

……というか、彼の素性を知っていた奴らって、結構、貴族に雇われたゴロツキが多かったみたいですの。つまり、貴族を皆殺しにした今、ジョヴァンは割と自由なのですわね。

……そして。

「ただいまー」

「あら、お帰りなさい!」

もう1人、完璧に自由なのが居ますの。

「キーブ。今日はどんな楽しいことをしてきたのかしら?」

「どんな、って……飯買ってきただけだけど」

そう。新しく仲間になったキーブ・オルド。この、そこらの女の子より可愛い野郎は、兵士達からも特に注意されていませんわね。

それもそのはず。彼って元々、小さい頃から奴隷だったみたいですし……フルーティエ家の分家に買われてからは、暗殺業をやらせるためにずっと存在を隠されていたみたいですし。

『今まで碌に外に出たことが無い』なんて言う彼のため、とりあえず今は彼に町をぶらぶらさせてこの町のことを勉強させる期間、ということにしていますわ。

あ、それから食料調達係ですわね。私もドランもチェスタも、あまり外に出たくありませんもの。特に、私は。

「そういえばまたヴァイオリアの手配書、回ってたよ。はい」

「うわっ……私の手配書ですわぁ……」

キーブに渡された紙を見て、何とも言えない気持ちになりますわね。

自分が指名手配されて、このように手配書を回されるようになるとは思いませんでしたわ。

「兵士はどうだ」

「すごい数うろついてる。警備もすごいし、このアジトに帰ってくる時、ちょっと気を遣うくらい」

「……私、大人気ですのね」

そう!今、何故だか私ばかりが目立って探されていますのよ!

言ってしまえばドランとチェスタも同罪ですわね?でも、探されてるのは私だけなんですのよ!納得がいきませんわ!

「『悪魔に魂を売った女』、か。随分な言われようだな」

そうなんですの!しかもとんでもない異名をつけられていますのよ!?一体全体何なんですの、これ!あああああ、本当に失礼ですこと!ムキーッ!

「ということで暇ですわ」

「怒ったと思ったらそれ?単純」

「なんですって?このかわいこちゃん。また可愛い恰好をしたいならそう仰いな?」

煽ってきたキーブにそう言ってやったら黙りましたわ。この間体術だけで戦って打ち負かしましたので、その勢いのまま可愛らしいドレスを着せてみましたの。普通以上に可愛い女の子が出来上がりましたわ。

「……なんか室内でできること探せば?持ち帰ってきたもの、いくらでもあるんだろ?」

「そうですわねえ……でも持ち帰ってきた本棚、全部読んじゃいましたの」

「本棚単位で数えるのやめろ」

読書も飽きましたし、ワインを嗜むだけなのもあまりにも退廃的に過ぎますわ。今の楽しみと言ったら、外に出てきたキーブの話を聞くことと、ジョヴァンが仕入れてきてくれた毒を一気飲みするくらいかしら。

「……あのさ。暇なら教えてほしいんだけど」

と思っていたら、キーブが急にそんなことを上目遣いに言い出しましてよ。こいつ分かってやがりますわ。可愛いですわ。

「あの空間鞄の改造、どうやったの?」

「空間鞄の改造、ですの?」

あら。それならもう教えたと思ったのだけれど……。

「ここをこうして、こうですわ」

はい、改造終了。この世にまた1つ、違法改造された空間鞄が生まれましたわ。

「いやおかしいって、それ!なんでできるんだよ!」

「空間鞄って、古代魔法の『鍵付き』だろ!」

はい。

一応ざっと説明しますと、空間鞄をはじめとした『古代の魔法をそのまま使っている』道具のほとんどには、改変禁止の魔法もくっついてますの。

何故かというと、古代魔法の仕組みが未だに分かっていないからですわ。仕組みが分からないものですから、下手に改造したら取り返しのつかないことになる可能性も十分にあってよ。

ですから、『ものすごく有用であるが仕組みは分からず、ただ転写した魔法を仕組みも分からないまま使うことにした』道具には改変禁止の魔法が掛かっているのですわ。あ、ちなみに当然、この改変禁止の魔法を破ったら違法でしてよ。おほほほほ。

「フォルテシア家が手に入れた古代の書物の中にいくつか、古代の魔法に関するものがありましたの」

「禁書じゃん」

はい。所有がバレたら下手すりゃ死罪モノですわね。

「それを読むうちに、まあ、この程度のことはできるようになりましたのよ」

それに私、元々勤勉な性質ですの。知らないことがあるのならば知りたいと思いますし、できそうなことがあるのならばやってみたいと思うのですわ。

……ただ。

「惜しむらくは、私に魔力が足りないせいで、他の改造ができないことですわね。もっと面白いのも、できそうですのよ?私に魔力さえあれば!」

「……例えば、どんな?」

「そうですわねえ……例えば、この空間鞄って、『生き物』は中に入れられないですわね?」

「うん」

「でも改造すれば多分入れられるようになりますわ」

……空間鞄にはいくつかの制約がありますの。

1つ、有名なところでは、『生き物を入れられない』ということですわね。なので、生きたままのドラゴンとかを入れようとすると、鞄が吐き出してしまったりするのですわ。

ただ、そのおかげか『入れた食べ物が腐らない』というような特徴もありますわね。……というか多分、そのためにこの鞄、生き物が入らないようになってるんだと思いますわ。

他にも、『空間鞄の中に空間鞄は入れられない』とか、そういう制約もありますわね。

「……それ、ヤバいやつじゃん」

「でしょう?ドラゴンもユニコーンも生け捕りし放題ですわ。特にユニコーンの生け捕りなんて需要が高そうですものねえ……やってみたいところですわ」

ユニコーンって、その毛が耐毒薬になったり、角が解毒剤になったり、本当に素晴らしい生き物ですの。私の逆みたいな生き物ですわね。

ですから需要も高いのですけれど……ほら、ユニコーンって『穢れ無き美しい乙女』にしか寄ってきませんもの。それでいて深い森の奥だの秘境だのにしかいませんから、毛を採るのも一苦労、というわけですわね。

……もし、そんなユニコーンを生け捕りにして交配して養殖できたら、素晴らしいことになりますわねえ、多分。

「他にも、空間鞄の中でワインの醸造をしたり……あ、もしかしたら畑とか、作れるようになるかもしれませんわね」

「へえ、面白そ」

「でしょう?……ああ、私に魔力さえ足りていれば……」

「じゃあ僕がやるからやり方教えてよ」

……。

名案ですわ!

ということで。

その日から、私による魔法講座が始まりましたわ。

私の記憶にある限りの古代魔法の弄り方……つまり、禁書の内容を、キーブに伝えていきますわ。

彼、やっぱり優秀ですのね。不安の無い環境で沢山ご飯を食べて、のびのび好きなことやって生活するようになってから、随分魔力が安定したように見えますわ。

そして地頭も良いみたいですわね。今まで『感覚だけで魔法を使っていた』というのだから驚きですわ。これは磨けば光る原石、という奴でしてよ!私、こういうのを育てるの、大好きですわ!

キーブを育てようと思い立ってから、暇が無くなりましたし、丁度良かったですわね!

そして1週間。

「……多分、できた」

緊張した面持ちで、キーブが空間鞄を持ってきましたわ。

すると、その中から……。

ぴょこん、と、ハツカネズミが飛び出してきましたわ!

「素晴らしいですわ!成功しましたのね!」

「うん。多分ね」

キーブはちょっとはにかむように笑いながら、違法改造仕上げになった空間鞄を見て……それから、ふと、こんなことを言いましたわ。

「この鞄に魔物集めてさあ。それ一気に解放したら、結構な規模の災害だよね」

「そうですわねえ」

ドラゴン10匹くらい鞄に詰め込んでおいて、それを街中で放ったりしたら……大災害待ったなしですわね。

「じゃあさ。それ、ちょっと遠めの町でやればいいんじゃない?そうしたらここら辺の兵士全員、そっちに行かざるを得ないじゃん。ヴァイオリア、自由に歩きやすくなるでしょ」

……。

名案ですわッ!