軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

後奏6「音楽って、悪くなくってよ!」

「ところであなた方って、楽器はできませんの?」

……ということで、ごきげんよう!ヴァイオリア・ニコ・フォルテシアよ!

私は今、ちょいと一曲、楽しんでたところですの!

事の始まりは差し押さえでしたわ。ええ。差し押さえですの。

依然として旧体制時の貴族連中はチラホラ残っていて、そいつらには『大人しく新体制に従うなら見逃してやる。目に余る行動があれば即座に解体する』と通告してありますの。

ほら、貴族の中にはマトモなのも居ない訳じゃありませんでしょ?それに、『即座に潰すわけにはいかない』貴族も大勢おりましたの。

例えば、ワイナリーを経営している貴族を潰してしまえば、そのワイナリーで働いていた貧民の労働の場が消えることになりますわ。

或いは、エルゼマリンの港を使って運送業をやっていた貴族を潰してしまうと、この国の流通が滞りますわね。

……こんな具合に、貴族全てを潰すのはまあ、現実的じゃありませんでしたの。

まあ、いいんですのよ?能力ある者が上に立つ、というのは必要なことですもの。ちゃんとその能力が発揮されていて、『目に余る』ことをしないのであれば……ま、『多少なら』お目こぼししますわよ。それは上に立つ者の特権ですもの。

けれど、『目に余る』奴については当然、潰しますわ。当然ですわ。ちゃんとこの国の法律に従って、過重な罰金刑を科してやりますわ。おほほほほ。

そして、今回の差し押さえはちょいと厄介な……『差し押さえられるもんならやってみろ!』と豪語する連中のところへの差し押さえでしたわ。

貴族って、大体は魔法を使いますでしょう?ついでに、金があった分、装備も上々。となると、そんなのがゴロゴロ集まってるところっていうのは、かなりの激戦が予想される場所になりますの。

……私はこの国の女王で、同時にこの国最強の戦力の1つ。ついでにこの国一番の戦闘狂の1人でもありますわ。おほほほほ。

ですから、見せしめも兼ねて、私直々に、『差し押さえ』に出向いたのですわ!

で、差し押さえましたわ。お屋敷一軒分、まるごと差し押さえしましたわ。楽しかったですわ!やっぱり、戦うのって楽しくってよ!

連中、『お前達が暴れたら差し押さえるものが無くなるぞ!』って、自分達のお屋敷を盾にするつもりだったらしいのですけれど、その余裕すら無く蹂躙されてましたわねえ。

まあ、当然でしてよ。向こうが魔法を使うと分かっているのならば、こっちだって対魔法装備を準備していけますし、純粋な武力だってこっちの方がよっぽど上ですもの。

……ああ、当然、ドランとチェスタとキーブも連れて行きましたわ。ですから当然、圧勝できますわよ。ついでにリタルも着いてきましたから、余計に圧勝できましたわね。

ちなみにジョヴァンは『差し押さえする物品にその場で値を付けて勘定する係』として連れて行っちゃったのですけれど……打ち漏らしを1人2人ヤッてたみたいですわ。上出来ですわね!

……ということで、私達は『国家反逆罪』の余罪がくっついた貴族連中を片付けた後で、お屋敷の物品の差し押さえをしていたわけなんですけれど……。

「あら、いい楽器」

その中に、いい楽器がありましたの。

飴色の木材の艶。滑らかな曲線。そう。ヴァイオリンですわね。

単なる飾り物にされていたようですけれど、弓も揃っていて弾けそうでしたから、戯れにちょいと弾いてみましたわ。

弾いてみて、ちょいと調律し直して……ええ、ええ!十分に音が出せますわね!これ、中々いい楽器ですわ!

ということでそのまま一曲、楽しませてもらいましたわ。折角ですものね。こういう時には存分に普段やらないことを楽しまなくては損でしてよ!

……で、弾き終わってみたら拍手が聞こえてくるもんですから、振り返ってみたら案の定、いつの間にやら面々が揃っていましてよ。

「いやあ、お嬢さん、流石だね。お上手だ。『弓の名手』はこっちでも、とはね!」

「素晴らしい演奏です、ヴァイオリア様!」

ジョヴァンがにこやかに拍手している横で、ぱちぱち一生懸命に拍手してるのがリタルですわ。ちなみに、『ヴァイオリアが休憩中ならいいと思った』とばかりにワイナリーから盗ってきたらしいワインを空けているのがドランとチェスタでしてよ。あらあら、仕事は済んだのかしら。

……まあ、私も仕事は済んでませんわ!じゃあもう気にしませんわ!休憩!休憩としますわよッ!

「……それ、何?」

「これ?ヴァイオリンですわ。キーブも弾いてみますこと?」

「うん」

楽器に興味が出てきたのか、キーブがとことこ寄ってきて覗き込んできましたわ。興味があるっていうのは良いことですわね。ということで、持っていたヴァイオリンを貸してあげて、『構え方はこうですわよ』と教えてあげて……。

「……音、出ないんだけど」

「ああ、結構強めに擦らないと駄目ですわよ。あっ、2本の弦に同時に触れていますわ。一番端っこの1本だけに当たるようにしてごらんなさいな」

……苦戦しながら、なんとか音が出せましたわ。まあそうですわよねえ。初めてのヴァイオリンはこんなかんじですわ。私も小さい頃、お母様に教えて頂きながら苦戦していましたもの。懐かしいですわぁ……。

と、思っていたら、ふと、低い音が、ぼーん、と響きましたわ。

あら、とそちらを見てみたら……コントラバスを持ってきているジョヴァンの姿がありましたわ。

「あら、ジョヴァン。あなたも楽器、できますのね?」

「まあね。一応、元貴族ですから。エルゼマリンに流れ着いた後、ドランと組む前は楽器で日銭を稼ごうとしてて……ま、それよりか、よっぽど効率のいいやり方がすぐ見つかっちまったし、その後はドランと組むことになったし……ってことで、久しぶりなんでね、期待はしないで頂戴」

期待はするな、とは言われても、中々物珍しいこともあって、ついつい聞いちゃいますわね。

……そしてそのまま一曲、ジョヴァンが演奏するのを聞いていましたけれど……彼、弓を使いませんのね!?弦を指でつまんで弾いて、それで曲にしてますわ!

風変わりですけど、ま、別に下手じゃなくってよ。特段上手、って訳でもありませんけど、酒場でちょいと演奏して稼ぐくらいはできるんじゃないかしら。

つまるところ、ちゃんと曲になってましたし、楽しめましたわ。おほほほ。

「……ってことで、ま、ご清聴ありがとうございました」

「ええ。楽しませていただきましたわ」

さっきの拍手のお返し、ってことで私からも拍手と賛美を送りますわ。偶にはこういうのも悪くなくってよ!

「ところであなた達って、楽器はできませんの?」

で、ここですわ。

ようやくここに来ましたわ。

私とジョヴァンがちょいと嗜む、っていうのが分かったところですけれど……他の面子はどうかしらね。まあ、あんまり期待はしていませんけど……。

「僕はからきし。やったことない」

「あら、そうなんですの?」

まずはキーブですわねえ。まあ、元が奴隷ですし、その前は村人だったみたいですから……楽器を学ぶ機会は無かったでしょうし。当然と言えば当然ですわ。

「……あ、でも、村のオルガンは弾いたことある」

「あらっ!そうなんですの!?」

「ちょっとだけ。本当にちょっとだから、もう忘れたけど!」

「そういうことならやってみましょうね!オルガンは分かりませんけれど、城には鍵盤楽器がいくつかございますわ!ね!ね!」

でも何かできそう、ということなら是非やってみてほしくってよ!音楽って1人でやっても楽しいのですけれど、合わせる仲間が居ると余計に楽しいんですの!

私、家族全員で弦楽4重奏をやっていた時、とっても楽しかったんですのよ!まあ、ここの連中だと弦楽4重奏って訳には行かないでしょうけど……でも、ちょっとばっかし合奏できたら、きっと楽しいですものね。

それに、この楽しみ、キーブにも一度味わってみてほしいんですのよ。可愛い子には色々とやらせたくなってしまいますわね。おほほほほ。

「僕は、一通りは学びましたので……一通りは、できる、と思います」

「まあ、名門クラリノ家の傍系ですものねえ。あなたはそうだと思ってましたわ」

次はリタルですわね。まあ……この子は元々が生粋の貴族ですから、当然、楽器は嗜んできてるでしょうねえ……。

「得意なのは何ですの?」

「笛です。横笛よりは、縦笛の方が得意です。それから、長いものよりは短いものの方が得意です。息があまり長く続かなかったので……」

リタルは元々は小柄でしたし、そうなると、肺活量が必要になる低音の笛は難しかったかもしれませんわね。そもそも、あんまりデカい笛だと、リタルの当時の身長じゃ、構えきれなかったでしょうし……。

「クリス兄様も笛が得意なんですよ」

「あら。でしたらここでの差し押さえの品を持って帰って与えてみようかしら」

ま、このお屋敷、楽器の類がそこそこちゃんとあるみたいですし、差し押さえついでにそういう楽しみがあってもいいかもしれませんわねえ。楽しみが増えましたわ!

「俺はなんもできねー」

「でしょうね」

次はチェスタですわ。まあ知ってますわ。こいつが楽器できたらビックリですわ。

「あ、でもラッパは吹けるぜ!」

こいつ楽器できるらしいのでビックリですわ。有言実ビックリでしてよ!

「……なんでですの?」

「ん?リューゲルに習ったから。『義手だとお城の騎士になるのは難しいかもしれないけれど、ラッパ手にはなれるかもしれないよ』ってさ。ま、俺は薬中になっちまったから結局放り出したけど」

ああ……そういう事情でしたのね。

そういうことでしたら、ええ……リューゲル様のお心遣いも含めて、当時のチェスタの状況が痛ましく思えますわね……。

「ラッパならあったぞ。吹くか?」

「え、マジ?じゃあ吹くかー」

そこへ、ドランがケースごとラッパを持ってきましたわ。よく見つけてきましたわねえ……。

……私達が『どんなものかしら』とチェスタを見守っていると、チェスタはひょいとラッパを構えて……。

「……案外上手ですのねえ」

「まあ……俺よりはチェスタの方が器用だからな」

……な、なんか、意外でしたわァ……。一番、楽器とか音楽とかを学ぶ機会が無さそうだった奴がそこそこ器用にやってのけるのを見てると、こう、意外ですわァ……。

「へへ、どーよ」

「ええ……大したものですわね。胸を張ってよくってよ」

もうこれは素直に賞賛するしかなくってよ。なんか、微妙に『でもチェスタですのよねえ……』っていう、釈然としない思いはあるのですけど……なんか複雑ですわァーッ!

「で、俺はいよいよ本当に何もできないぞ」

「でしょうね!」

そして最後はドランですけど、まあ、これは予想通りですわ!こいつこそ、楽器を学ぶような機会は無かったでしょうから当然ですわ!

「あ、でもお前、あれできるじゃない。遠吠え」

「……アレは楽器か?」

「まあ違うわな」

ジョヴァンがけらけら笑って揶揄って、まあなんとも楽しそうなこと。

……ドランの遠吠え、私、あんまり聞いたことないんですのよねえ……。特に最近は、狼に近づく満月の頃に私と一緒に居ることが少ないんですもの。はあー、遠吠えはともかく、あのフサフサの尻尾、また触りたいですわぁー……。

「でもお前さんも歌は歌うでしょ」

なんて考えていたら、ジョヴァンがまた楽し気に、にやにやとそう続けましたわ。……歌、ですの!?ドランが!?

「歌……ああ、人狼に伝わる歌か。それなら確かに、お前の前で歌ったことがあったか」

ドランは『アレのことか……』とばかり、ちょいと苦い顔をしてますけど、これは気になりますわねえ!

「私は聞いたことありませんわよ!?是非、今度聞かせてくださいまし!」

「……大したものじゃないぞ」

気になりますわ!気になりますわ!特に、現在のこの国は『人狼保護国家』として名乗りを上げていますもの。ちゃんと知っておけるなら知っておきたくってよ!

「俺はどちらかというと、歌に合わせて太鼓を叩く方が得意だった。アレも、楽器と言っていいようなものじゃなかったが」

「へえ……人狼の文化って、私、碌に知りませんのよ」

「だろうな。この世界から消された文化だ。……まあ、だからこそ、残す意味はあるか」

「ですわね。譜起こししますこと?楽譜にすれば残せますわよ?」

……ドランは『そうだな』なんて言いながら、ちょっとばかし楽しそうに見えますわねえ。ま、彼も彼で、色々と過去について思うところがあるでしょうけど……美しいものは是非、後世に残るようにしておかなければなりませんわ。それが、今を生きる私達の使命ですものね。

と、いうことでちょっと楽しんだ私達は、また働いて……無事、お屋敷1つ分の財産の押収を終えましたわ。後はジョヴァンの作業ですわ。よろしくですわ。

「たまには音楽を楽しむのも悪くありませんわねえ」

城への帰り道、ドラゴンに乗りながらちょっとばっかし、歌なんか口ずさんでみたりして……ふふふ、悪くありませんわ。そうね。人は、音楽で心動かし、音楽に心動かされる生き物ですものね。

「そう思うならね、お嬢さん。そろそろ国歌くらい正式に用意していただけませんかね。恰好が付かないでしょうが」

「あら。そうねえ……確かに、国民全員で揃って歌える歌があれば、それも娯楽になるかしら。ええ。悪くなくってよ!」

……ま、偶には音楽に親しむのも悪くありませんわね。だって、ちょっぴり楽しかったんですもの!

これは城に帰ったらまた一仕事ですわねえ。国歌の制定……大仕事ですわ。でも、楽しみでしてよ!

そういうわけで、ごきげんよう!皆様にも、素敵な音楽との出会いがありますように!