軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

022 平民、アレン

自然が豊かなカレル村、それが僕の故郷だ。

山奥で何もなかったが、逆に言えば何でもあった。

父と母、妹、僕の四人暮らし。

眠たい眼を擦って目を覚まし、夜は遅くまで畑で働く。それが僕の日常。

休みの日は、近くの川や山で遊び、特別な日には祭りがある。

そんなどこにでもあるような、だけど幸せな村。

大人になったら冒険に出よう、そんなことを考えている友達はいたけれど、僕は全くそんな気になれなかった。

外の世界には怖い魔物がいて、人と人との争いもあると聞いていたからだ。

平和しか知らない僕にとって、未知への恐怖は計り知れないものだった。

そんなある日、仕掛けた罠を一人で取りに行った時だ。

めずらしい兎を見つけ、山奥へ進んでいるうちに、道に迷ってしまった。

ようやく村に戻れたとき、そこは僕が知っていた村ではなくなっていた。

人の残骸のようなものが、至る所に 落ちている(・・・・・) 。

呼吸が出来なくなるほど衝撃の中、巨大で獰猛な魔物たちが襲ってきた。

そして僕はやられてしまい、もうダメかと思った時、とある王国の人に助けられた。

後から知ったのだが、近くのダンジョンが崩壊し、魔物が逃げてきたらしい。

その後、僕は孤児院で育てられることになった。

だけど、先生は優しかった。友達もいっぱい出来て、外の世界の事もわかった。

しかし心の傷だけは一向に癒えることはなかった。

可哀想なアレン、それが、僕の人生で一番聞いた言葉だ。

やがて憎しみの矛先は、自然と魔物に向けられた。

強くなって駆逐してやる、徐々にそう考えるようになった。

だけど僕は強くなかった。友達と喧嘩してもすぐにやられてしまう。

強くなる為には、今までの考えを改めるしかなかった。

何かを得る為には、何かを犠牲にしなければならない。

孤児院の先生がよく言っていた言葉だ。

正しさだけでは、人を救えないと。

そして世界にはダンジョンがいくつもあって、僕みたいに襲われた村が他にもある事を知った。

同じ過ちを繰り返さない為に強く、強くなりたい。

だが、その手段すらわからなかった。

武道を習おうとしても、平民で親もいない僕は腫れもの扱い。

『ダメだ』『あっちへいけ』『何をするかわからない』

だから、独学で学ぶしかなかった。

毎日棒を振り、闇雲に強くなろうとした。

小さな魔物をようやく倒せるようになった頃、たったそれだけで数年もかかってしまった。

……間に合わない。

いつまでたっても、こんなんじゃダメだ。

誰も救えない、何もできない。

そんな時、僕を助けてくれた人と偶然出会った。

彼は、王国の騎士団長だった。

「お願いします。僕は強くなりたいんです」

失礼を承知で、僕は何度も懇願した。

剣を、魔法を、戦い方を教えてほしいと。

初めは断られた、いや、何度も断られた。

でも、僕はすがるしかなかった。頼むしかなかった。

二十五回目、ようやく僕は師を得ることができた。

彼は騎士団長というにはあまりにもぶっきらぼうだったが、本当の 強さ(・・・) を教えてくれた。

戦いとはこうあるべきだというものを教えてくれた。

「アレン、この世界で正しいことをするのは簡単なことじゃねェ。強さを、正義を振りかざすには理不尽な事をぶっ壊すくらい強くならないとダメだ。お前はそれを望んでるんだろ? ダンジョン破壊、奴隷撤廃、魔物駆逐、どれも平民如きが口にできるわけがねェ望みだ」

「わかっています……だけど、僕は……妥協したくない」

「ははっ、魔法も満足に使えねェ癖に、志だけは一丁前だなァ。だったら、一日も無駄にするな。お前には時間がない。人の百倍努力して、ようやく人並だということを知れ」

数年間、師匠は僕を毎日見てくれた。

おかげで強くなれた。魔法の素質はなかったが、 能力(ギフト) というものが、僕に宿った。

しかしそれを報告することはできなかった。

なぜなら師匠は、騎士団を突然退団、僕の前から姿を消したからだ。

それから僕は、暴漢に襲われている女の子を助け、「シャリー」と出会った。

子爵令嬢である彼女は、初め平民の事を見下していたが、一緒に時間を過ごす事が増えて、爵位なんて無意味なんだねと言った。

優しくて、人の心を理解しようとする素敵な子だ。

そんな彼女から「ノブレス学園」の事を知る。

「そこに行けば……爵位がもらえるの?」

「卒業すればって話だけどね。世界中のダンジョンに入場可能になるし、国の行き来だって楽になる。あなたがしたいことでしょ? でも、試験の難易度が――」

「決めた。僕はノブレス学園の試験を受ける」

シャリーは猛反対したが、僕は受けると決めた。シャリーのおかげで第二の師である、ダリウス先生と出会えたことは幸運だった。

だけど残念なことに試験の成績はボロボロだった。

ヴァイス・ファンセント。

彼は、おそろしいほど強かった。

手も足もでなかった。何をしても返される、どんな攻撃も見透かされている。

これが天才なのだと、思い知らされた。

「どうして 能力(ギフト) を使わなかったの?」

「あれは……ズルみたいなものだから……学園では使いたくなかったんだ」

「ほんと、アレンは真面目よね」

絶対不合格だと思った、だけど、僕は合格した。

ポイントシステムには驚いたが、卒業を諦めるつもりはない。

『上級生15番、ギビット、行動不能、行動不能。下級生ヴァイス・ファンセント、カルタ・ウィオーレ両名、現在ポイントリーダー』

「流石ヴァイスだね……アレン、どうする? ここから先は、上級生たちが待ち構えてる」

「……下級生同士で争っても得られるポイントは少ない。僕たちも上を狙いにいこう。ヴァイスには……負けたくない。ここからは―― 能力(ギフト) ありで戦う。もう、ズルいだなんて言ってられない。僕は……勝ちたいんだ」

「そう……わかった。じゃあ、絶対に勝とう。――アレン、あなたは私が守る」

奪われる人生なんて、もうまっぴらだ。

僕は全てを取り返す。

正しくありたければ強くなれ、そうですよね――ゼビス師匠。