作品タイトル不明
154 変化
パートナーが決まった後は、誰もがやる気に満ち溢れていた。
訓練をしたり、雑談をしたり、食事も一緒に取る事が増えている。
その理由は、重要なポイントを掛けた試験が先にあるからだ。
ただ組むだけでは意味がない。しっかりとした目標を目指すことが、よりよい効果を生む。
原作では自分でパートナーを選ぶことができた。相性がいいのはシンティアだったが。
その時はただ面白いだけだったし、それ以外の感情はほとんどなかった。
まあ、二次創作では同性同士のカップリングも並べられていたりしたが。
確か、デュー×アレ アレ×デュー みたいなのがトレンドに入っていた。
うーん、想像したくない。
そして食堂では、新しい空気感が広がっていた。
まるで下級生で初めて食事を取るみたいな、様々な感情が入り乱っている。
こういうのは原作で味わえない大切な感情だ。
だがそれは、 俺たち(・・・) も同じだった。
シンティアではなく、シャリーが俺の前に座る
「ヴァイス、ずっとそれ食べてない?」
「ああ、お気に入りだからな」
「お前もそればっかだろ」
「だって美味しいだもんー」
俺はいつものフルーツが付いている小鉢定食で、シャリーはパスタ風の麺だ。
すると少し離れた場所で、シンティアとアレンが話していた。
集中したら聞こえるが、そんなことをするつもりはない。
だがそれを、シャリーが見ていた。
「そこまで気になるならあっちへ行ったらどうだ」
「え、ち、違うわよ!? 別に何も」
「……気持ちはわからんでもない。だがそんなことで試験に負けるようなら、俺は許さない」
「そんな私は――」
「お前は、何を目指してる?」
厳しいかもしれないが、俺は言うべきことをしっかりと口にするタイプだ。
それを聞いた後、シャリーは静かにパスタを、いや豪快に食べ始め、一度も視線を動かさなかった。
「はっ、それでいい」
「わ、わかってるもんっ!」
ったく、お前のその切り替えの早さは、嫌いじゃない。
「放課後、市街地で訓練だ。疲れているだろうが――」
「もちろん、すぐ行く!」
「……はっ」
それから放課後、クタクタになった身体のまま市街地Bへ向かうと、既にシャリーが魔法を操る訓練をしていた。
俺はそれを見て、思わず綺麗だなと眺める。
メリルは四大属性を器用に操るが、シャリーはそこに精霊の力が付与されているので、より輝いているように見える。
実際、効果としても凄まじい。
シャリーが魔力を1使えば、通常の10ぐらいの魔力があるだろう。
だからこそ罠を仕掛けた際にとんでもない効力を発揮する。
魔族の侵攻を経て更に強くなったシャリー、そしてこれからも強くなるだろう。
「遅いわよ」
その時、後ろからシャリーが声をかけてきた。
前を見てみたが、シャリーが立っている。それも、魔法を使っている。
「……擬態魔法、いや幻術魔法も複合してるのか」
「ただ突っ立てるだけじゃ、いい加減誰も引っかからないしね」
「はっ、お前、天才だな。――なんだ? 何を驚いてる?」
「いや……ヴァイスに褒められたの、何気に初めてかも」
「俺は誰よりもお前を認めてる。じゃないと、パートナーに誘ったりしない」
原作でシャリーは死ぬ。彼女がどれだけ成長するのか、俺ですらわからない。
だがこいつのやっている魔法は明らかに異質だ。原作を知っているからこそわかる。
シャリーは間違いなく魔族に風穴を開ける存在だろう。
「なんだ、熱いのか?」
だがシャリーは、顔を真っ赤にしていた。
俺は額に手を当てる。
「体調管理は大事だぞ。熱は……ないみたいだな」
「な、な、」
「な、な、な?」
「何でもない……」
そのまま俯くシャリー。ふむ、よくわからないが、魔力は精神を使う。
そのくらい集中力が必要なのだろう。
「シャリー、今日は精霊について色々と教えてくれ。理解を深めたい」
「わかった。それにちょっと試したいことあるんだけどいいかな?」
「ああ、なんだ?」
「あなたの魔法と私の罠を組み合わせたら、面白いことができるんじゃないかなって」
「はっ、いいだろう。さて、やるぞ」
それから俺たちは、何度も試行錯誤した。
もちろんそれだけじゃなく、術式について話し合ったり、お互いに考えていることも全て言語化した。
魔法はイメージ、術式は知識、だが実際に発動させるには理外の及ばない何かが働く。
説明のつかない力。それが、魔法。魔力が高いだけでは全てを習得できない。
だからこそ――奥深い。
「ねえヴァイスって私のこと好きだったの?」
「突然……何いってんだ?」
「だって、あんなに喧嘩してたのに、命をかけて助けてくれたし」
「勘違いするな。お前が使えるからだ」
「ふーん、なんか、時々未来のこと知ってる! みたいな感じだよね」
「さあな。ま、それなら最高だが」
「ねえヴァイス、お願いがあるんだけど、次の休みの日、出かけない?」
「? どこへだ?」
「ふふふ、秘密」
「遊んでる暇は――」
すると、シャリーは俺の口に人差し指を当てた。
「もちろんわかってる。遊びじゃないよ」
「ったく、ならそう言え」
「えへへ」