軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

つなぎ

「ちょうどよかったのかもしれないです」

私には、ちょうどいい。

最低な男がちょうどいいなんていうと、私も最低ってことになっちゃうけど……。そうじゃなくて、本気で好きだとか一緒にいたいとかいう気持ちがなくて。

ダンジョンにこれで行かなくて済むという……ある意味どこかに利用しようって気持ちがあったのだとすれば、やっぱりお互い様だ。

「有希にちょうどいい?」

志崎さんが首をかしげる。

「あんな男も、昔はいいところがあったってことか?」

「んー、就職した会社が、実はブラック企業だった感じ?」

志崎さんが私の頭にぽんっと手を乗せた。

「ブラック企業だって気が付いたなら、転職するだけだ」

そりゃそうだ。

志崎さんが私の顔を見た。

「で、今は就職活動中?」

新しい彼氏か。いらない。

首を横に振る。

「独立して自営業者になりました。志崎さんは?」

志崎さんがんーと考える。

「その表現で言えば……。従業員にしてくれって人間は多いが、俺が求めているのは共同経営者ってとこかな」

「へー」

ふと、雷電さんの顔が浮かんだ。ダンジョンで一緒に戦える、彼女みたいな人ってことかな?

「お客さん付きましたよ」

タクシーの運転手に声をかけられて会話が打ち切られた。

「えっと、ここはどこ、ですか?」

タクシーに乗り込んだ時に志崎さんが運転手さんに行先を伝えたのを聞いてはいなかった。乗っていたのはどれくらいだろう。

「あ、勝手に連れてきてごめん。えーっと、今更だけど時間、ある?」

「はい、時間ならありますけど……。特に予定もなかったですし、明日は土曜で会社は休みですし」

志崎さんがにこりと笑った。

目の前にそびえたつのはかなり立派なホテル。

「部屋に連れ込むわけじゃないから、とりあえずこっちきて」

ホテルの入り口に立った志崎さんが手招きをしている。

まぁ、そうよね?志崎さんなら女の人に困っているわけないし。連れ込まれるなんて想像して騒ぐ方がみっともないよね。

ホテルにはベルボーイもコンシェルジュもいるようなホテルで有名人がやらかすわけないし。

連れていかれたのはホテルの地下にあるレストラン。

え?地下?レストランって最上階とかでなく?

「まずは、服か。夕食の前に、服を贈らせてくれ」

は?

これって、もしかして、ドレスコードがあって、それに合った服を一式プレゼントされるみたいな……。スパダリが出てくる物語の……。

高いドレスをプレゼントされ、化粧と髪を整えられて、仕上げにとネックレスを……っていう、あれ?

と、思ったら。

「えーっと……」

蛍光イエローのド派手なツナギ姿の私が鏡に映っている。

「アラミド繊維の服は初めてですか?」

「あ、アラミド繊維?」

店員さんが早口で説明してくれた。長い、長い。漂白剤を使った洗濯はだめで、日光にも当ててはだめなので陰干しに、できればアラミド繊維を扱っているクリーニング店に出したほうがよい、湿度に弱いため……云々。

なんか、すごくめんどくさ……げほんこほん。見た目に反して繊細な扱いが必要な服のようだ。

あまりの注意事項の多さに、思わずげんなりした顔をしてしまったからだろう。志崎さんがくくくと笑っている。

「ははは、まぁ今日だけ着てくれればいいから」

と言いながらカードを定員さんに渡している。

「あの、いただけませんっ」

志崎さんがんーと眉根を寄せる。

「ゴミ捨て場で稼いでいるから気にするなって言っても、受け取れないんだろうね」

うんとうなづく。

「じゃあこういうのはどう?」