軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

稼ぎ

ごめんなさい、志崎さんまで巻き込んじゃった。

「きゃぁー、シーザー様よ!」

「え?嘘、どこ、本当だ、シーザー様だわ!」

「うわぁ、本物だ。年収何億も稼いでるんだろう?」

「いや、何十億だろ?ダンカリで物が売れるようになったんだから、これからもっと稼ぐだろ」

「それは言える。深層の物なんてめったに出ないし取り合いあろうなぁ」

志崎さんに気が付いた人たちが足を止めて次第に人だかりが増えていく。

「なっ、何十億も、稼いでる?」

淳史が驚いて志崎さんを見た。

「そういえば……会社に買い取ってもらう品だけで、1日に何百万も……32階層だから一つ32万で10個で320万だったけれど、会社以外でも同じ価格で買い取られるとしたら、1日10個、ひと月300個、それだけで1億……す、すごい……」

改めて志崎さんのすごさにため息が出ると、志崎さんはふっと自嘲気味の笑顔を見せた。

それから淳史にめちゃくちゃいい笑顔を向けた。

「さぁ、これから何十億になるか、何百億になるかは分からないけど、ゴミ捨て場って、お金になるよ」

淳史が悔しそうに顔をゆがませると、私を指さした。

「お前、俺と別れたばかりなのに、もう次の男か!」

二股して私をだましていたのは淳史の方なのに、何を言うのか。

「俺より稼ぎがあるからって乗り換えたのか?ひどい女だ!」

志崎さんが戸惑い顔を見せ、私に尋ねた。

「この男、もしかして、例の?」

例のというのは……元婚約者かってことだよね。志崎さんは私がサレ女って知ってるし。

「残念ながら、俺は次の男じゃないけど」

淳史がバカにしたように私を見る。

「はっ、そうだよな、お前みたいな女に簡単に男ができるわけないもんな、男ができてたら、ダンジョンに行かなくて済んだのになぁ!」

何を言っているんだろう、その男が淳史のはずだったのに。淳史が私をだましていたのに。

わざとダンジョンに行くように仕向け、35歳の誕生日のその日に婚約破棄したくせに。

「有希、この男にお礼言ったら?」

志崎さんに背中をぽんっとたたかれてうつむきそうになっていた顔を上げる。

「お礼?」

「この男のおかげで、有希はダンジョンに行くようになったんだろ?あっという間に稼げるようになるよ」

「ははは、この女が?」

淳史が私を笑う。

「レベル8で4階層。レベル10で5階層、レベル12で6階層。6階層でとれたものは今ダンカリで1000円から取引されている。1日20品で2万。独身者動員法の日当が2万、合計で月に4回ダンジョンに行くだけで16万の月収アップだ。もっと7階層まで進めば1品2000~1万で取引されている。週に何度も潜って出品すればいくら稼げるだろうなぁ」

淳史が私をにらんだ。

志崎さんが私の背中をぽんともう一度軽くたたいた。

背中を押されるというのはきっと、こういうことだ。

温かくて、優しい思いが背中にある。大丈夫だよと手から伝わってくる。

正直、私がそんなにレベルを上げられるとも稼げるようになるとも思ってはいないけれど。

「淳史のおかげで生活が豊かになりそう。きっとあのまま結婚していても、生活費は折版だっただろうし、誕生日には中高生が買うような安いネックレスしかもらえなかっただろうし……」

淳史は決して給料が低いわけじゃない。私にお金を使いたくなかっただけだ。将来のために節約しているというのも嘘だろう。自分のためにしかお金を使いたくない、そういう人だ。

「婚約破棄してくれて、ありがとう」

にこりと、最高の笑顔を見せた。