軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

墓穴

一攫千金の夢があると言っていたけれど、値が崩れると誰かが言っていた通り、今日見たらバケツ1杯の雑草、100円。

8階層で5000円だったものも、500円。

皆が同じように出品し始めたからあっという間に値段が下がってしまっていた。

さすがに20階層以上の物で、他の階層では手に入らない物は大きく値が下がってはいないけれど。

20階層なんてレベルがどれだけあればいけるようになるんだろう?

山本さんはレベル10あれば3階層で安全に活動できるって言ってた。

雷電さんはレベル10になったらそれ以上レベル上げるのは大変になるって言ってた。

けど20階層以上の品でも、研究が進んで価値がないってわかれば値崩れしそうだし、もし価値があるなら国指定品に追加されてそれ以降自由に売買できなくなる気もするし……。

結局、もっと深層に行ける上位探索者しか一攫千金なんて無理ってことかなー。

「おい、お前、探索者登録したのか?」

「知らないのか?ダンジョンに入って草むしってくるだけで金になるんだぞ?」

「魔物とか危ないだろ?」

「ははは、1階層なんて寝てたって死なないっていうぜ?ほら、この画像見てみろよ、まるでキャンプ場だろ?」

「うわー、マジじゃん。え?で、草むしっていくらになんの?」

「んー、一山100円ってとこか」

「金になんないじゃん100円なんてさ」

「馬鹿だな、10山で1000円だぞ?ゴミ袋3つも草取ってくりゃ5000円くらいになるんじゃないか?」

「まじかー!」

「いいっすね、先輩。俺まだ28歳だしなぁ……」

「おふくろがさ、危険がないなら自分も草むしりしてこようかとか言い出して。買い物帰りにダンジョンがあるからとか言い出して」

話し声が聞こえてきた。

桜も聞いていたようで。

「なんか、探索者めちゃくちゃ増えそうだね。なら、独身動員法とかもういらないんじゃない?」

そうだよね。探索者が増えるなら強制する必要なんてなくなる……。

私が40歳になるまでに動員法なくるといいな。さすがに魔石納入義務まで課せられると厳しい。

水曜日。

始業前のおしゃべりが耳に届いた。

「どうだ?探索者になって、もうかったか?」

「いや、もうやめるわ~」

「は?」

「俺みたいなさ、草むしるだけでってやつらが多かったみたいでさ、1山100円が、今じゃ1山10円。ゴミ袋3つ分の草をむしっても500円とか、それを出品して落札者と連絡とって送ってなんて作業まで考えたらさ、時給100円とか200円にしかならないからばかばかしくて」

桜が聞き耳を立て、小さくため息をついた。

「歴史を学ばないやつが世の中には多いってことだよね」

「歴史?」

桜が手を前に出して指を折る。

「ユーチューバーに、Vチューバー、アフィリエイト目的のブログに……いくらでも、飛びついたけど儲からないその他大勢なんてあったじゃない?」

「でも、ダンジョンでは努力は裏切らないって。頑張れば稼げるようになるって」

雷電さんが言ってたけどな。

桜が顔色を変えて私の両肩をつかんだ。

「ちょっ誰に言われたの?ダメだよ、稼ごうとして無理して命を落とすとか、冗談じゃなくよくある話なんだから。怪我だって、年金が少し上乗せされるらだけで、痛みや後遺症による苦労と引き換えにするようなものじゃないんだから。絶対ダメだよ!」

桜に笑って答える。

「うん、わかってるよ。上位探索者って、もともと身体能力に長けてた人か、使える魔法スキルを手にした人かだもん」

「あ、そういえば、有希は魔法使えるようになったの?」

うんとうなづく。

「え?嘘!結構少数の選ばれた人なんだよね?すごいじゃん!どんな魔法?」

「それがすごくもなくてさー。役立つ魔法は、火、水、風、雷の4つ。で、残りの1つ、役立たないハズレ魔法って言われる土属性だったの……」

えへへと笑う。

「うん?なんでハズレなの?」

「ゲームとか小説とか、みたいに戦いに使えないから。石を弾丸みたいに飛ばして魔物をやっつけたりでききないの」

「何ができるの?」

「穴を掘るとか、穴を埋めるとか」

桜がうんとうなづいた。

「死体処理に役立ちそうね」

「死体は残らないんだよ。魔物は光になって消えちゃうから」

「いや、人間の死体。浮気男とかの埋葬に使えるじゃん」

桜が真顔でつぶやいた。

「ふっ、確かに、墓穴掘るの一瞬だよ~。埋めるのもね!って、人は埋めないからっ!」

桜が笑ってからすぐに真顔になった。

「よかった。冗談でも、話題に出して、ちゃんと笑えるなら……」

え?

あ、そうか。浮気男って、確かに淳史の話だ。

まだ、裏切られて1週間だっていうのに、悲しいとか辛いとか、思い出してぎゅっと心が締め付けられるような感情がわかない。

もやもやはするけれど……。

「ありがと、桜」