軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第8話 変化

「パイセン、なんか変わったっすねー」

「ん?」

コンビニで荷下ろしをしている時。

バイトの後輩であるシャナに話しかけられた。

「そうか? 特に何か意識してるわけじゃないけど」

「そういうんじゃなくて……動きがキビキビしてるんすよねー」

「キビキビ?」

そういえば最近、身体が軽い気がする。

めんどくさい力仕事が前より楽にこなせる。

筋トレを始めたわけでもないが……

「ダンジョンに潜ってるから?」

「えっ」

最近の中で一番大きな変化。

ダンジョンに潜って、モンスターを倒して、レベルも上がった。これ以外の原因は思いつかない。

「パイセン、スキルに目覚めたんすか? すごーい」

「そんな大したスキルはないぞ。まだまだ始めたばかりだし」

「えー? 目覚めることが凄いんすよー」

スキルが目覚めるかは完全にランダム。

スキルを持ってない人からすれば、羨ましがられるのも当然か。

「ダンジョンでレベルアップすると身体能力が上がるらしいっすからね。最近ではトレーニング目的でダンジョンに通う人も増えてるらしいっす」

「はえー」

やっぱレベルアップで身体能力が上がったんだ。

というかトレーニングでダンジョンに潜るって、なかなかリスキーなこと考えるな。公園みたくダンジョン内を走り回ったりするのか?

「相変わらずシャナは詳しいなぁ」

「えへへ。日本のダンジョン文化は独特で面白いんすよ」

シャナはダンジョンに関する話題が大好きな留学生。

日本に来たのもアジア圏のアニメとダンジョン文化が気になったからだとか。

好奇心で留学してくるとは、若い子のバイタリティは凄まじい。

別に俺が老けてるって言いたいわけじゃないが。

(楽になるのは嬉しいな)

お金だけでなく日常生活でも動きやすくなる。

流石にムキムキマッチョマンにまではなりたくないが……いつか空まで飛べたりして。

それはそれで楽しそうだ。

ガタッ

「?」

物音。振り返ると、シャナがいる近くの棚の上でフィギュアの箱がぐらぐらと揺れていた。

「あぶなっ!!」

「わっ」

上からフィギュアの箱が落ちてくる。

咄嗟に足を踏み出し、シャナの頭上へ手を伸ばした。

「ふぅ……」

「お、お見事……ありがとうございます」

シャナの小さな頭に落ちる前に見事キャッチ。

当の本人はその場で呆然と立ち尽くしていたが。

危なかった……フィギュアみたいな重い物はちゃんと奥まで入れろって言ったのに。多分、最近入ったばかりの新人がやらかしたのだろう。

面倒だが、全体ミーティングの時に共有しておかないと。

「やっぱ探索者は違いますねー」

「そういうものか?」

確かに俺とシャナの距離は少し離れていて、二、三歩踏み込んだだけでは届かない場所にいた。

以前の俺だったら間違いなく間に合わなかっただろう。

ダンジョンで得た力が発揮できて何より。

ありがとう神様。

◇◇◇

「ワープっと……」

バイト終わりの午後。

俺は再びダンジョンに足を踏み入れていた。

今日は二階層をメインに探索する予定だ。

流石にボスまで行くつもりはない。ちょっと見るだけなら……ワンチャンあるかも。

(副業とはいいつつ、ずっと潜ってるわけじゃないんだよな)

大体三~四時間くらいか?

ダンジョンって意外と広いから、何もない場所を歩く時間が長い。

これだけ歩けば足が死ぬと思うけど、意外と疲れないのだから不思議だ。

これもレベルアップのボーナスか?

知らんけど。

まぁ普段のバイトも三~四時間あることを考えると、少し楽している。

肉体労働だから時間ごとの負担は増してるけど。

シュンッ

「おおー……」

ワープを終え、目の前の階段を降りて二階層に。

外観は一階層とほぼ変わらない。けどここにはボスがいる。

強くなったからといって油断せず、慎重に立ち回ろう。

「「「ギキィ!!」」」

「っ!!」

と、早速モンスターが。

現れたのは三体のゴブリン。

いきなり団体戦か……難易度が上がってるなぁ。

「ギキィーー!!」

俺を見るや否や一斉に襲い掛かってくるゴブリンたち。数ではこちらが劣っている。故に素早く対処するのがポイント。

ならば、こちらも仕掛けさせてもらおう。

俺はナイフを……“二本”取り出す。

「よっと」

「ギキィ!?」

一本目に“武器強化”をかけてゴブリンへ投げる。

ナイフは見事、ゴブリンの頭へと突き刺さり、動きを止めた。

「二体目……」

「ギィイイイイイ!!」

後方に回ろうとしたゴブリンには“ファイアボール”を。

全身が燃えていくのを確認した後、俺は残りのゴブリンへと視線を移す。

「ギキィ!!」

「ぐっ……!!」

素直な縦斬り。

俺はナイフで受け止めた後、ゴブリンの腹を蹴り飛ばす。

ゴブリンが宙を舞い、俺から離れる。

その隙に俺は最初に投げたナイフの元へ近づき、回収した。

ナイフは光ったまま。

まだ使えるな。

「ギキ……」

「とどめ」

そして最後の一体へ向けて飛び込んだ後、グッと力を込めたナイフで心臓部を貫いた。

「……ふぅ」

意外と何とかなるな。

スキルが二個に対して、ゴブリンは三体。

少し苦戦するかと思ったが、準備を整えたおかげで難なく倒すことができた。

(ナイフ、買い足して正解だったな)

武器強化でナイフを投げることを考えた時、何本かあった方が便利では? と思った。

なのでダンジョンへ入る前に協会内の売店でナイフを三本購入した。

合計三千円。

少し値の張る買い物だったが命には代えられない。

早速、役に立って何よりだ。

「やっと光が消えた」

光っている間が武器強化が発動中。

消えたら効果終了。凄くわかりやすい。

やはり“武器強化”の汎用性は高い。

八秒という強化時間のおかげで、幅広い戦術に使える。

個人的にはクールダウン減少よりも効果時間が伸びてほしい。レベルが上がれば変化するか?

(いきなり三体、か)

素材を回収しながら考える。

俺はMPではない分、一度の戦闘で使えるスキルが限られている。だからスキル回しの部分を他の探索者以上に求められている。

時間を稼げるスキルでも習得できたらなー。

「あー……暇」

もう一つマイナスポイントが。

クールダウンが終わるまでスキルが使えない。だから岩陰などモンスターに襲われなさそうな場所でじっとするしかないのだ。

十数秒とはいえ、暇なものは暇だ。

スマホもダンジョン内だと使えないからなー。暇つぶし用のアイテムでも持ち込むべきか?

ま、ゆっくりやっていきましょう。