作品タイトル不明
第6話 新たなモンスター
「ほいほいっと」
襲いかかってくるスライムの核を突き刺す。油断さえしなければ、ゴブリンもスライムも一撃だな。
今のところゴブリンが四体、スライムが二体。
スライムの方が数は少ないのか?
そういえば、ゴブリンよりスライムの方が素材の値段が高かった。個体数も値段に影響しているのか?
「……この輝きは」
一筋の光が見えた。
近づくと、ダンジョンの地面から山のように重なった鋭く尖った石が生えていた。
確か魔力結晶って名前だったはず。
電力エネルギーの源として重宝されていると、wikiに書いてあった。
「試しに掘ってみるか」
「よっ……ほっ……」
事前に準備していたツルハシで、鉱石が突き出している地面を掘り返す。
掘るのが大変かと思いきや、二、三回ツルハシで突くだけで簡単に取れてしまった。
もしかしてツルハシはいらなかった?
そう思い、試しに他の鉱石を手で引っ張ったがビクともしない。筋力が上がったこととは関係ないか……ダンジョンって不思議だな。
(静かだなぁ)
昨日もそうだったが、今のところダンジョン内で他の探索者と遭遇していない。
平日だから? それとも下の方に潜っている?
ま、一人なのは気楽でいい。
誰の目も気にせずマイペースに探索を進められるのだから。
ガタッ……
「っ!!」
人間はいなくてもモンスターはいる。
物音と共に岩陰から狼のようなモンスターが出現した。
確かシルバーウルフって名前だ。
ゴブリン、スライムと並んで初級階層に出現するとwikiに書いてあった。
そして鋭い牙と素早い動きで相手を翻弄する、厄介なモンスターだと。
「「グルルル……」」
「おいおい……」
しかも二体ときた。
モンスターでも群れは作るよな。
一対二……これは逃げるべきか?
そう思い、ナイフを前に突き出しながらゆっくり後ろへ下がり始めた時。
「グルゥ!!」
一体のシルバーウルフが牙を剥き出しにして、俺の元へ勢いよく飛び掛かってきた。
すかさず前転して攻撃を回避する。
だけど、少しでも遅れたら噛みつかれていた。
(なんて速さだ……)
あのスピードを前に逃げ切れるか?
無理だ、すぐに追いつかれる。
今の俺には素早さを上げるスキルだってない。
戦った方がマシだな……倒せるかわからないけど。
「ふっ!!」
「グルゥ!!」
シルバーウルフに向けて蹴りを放つも、素早く後方へバックステップされる。
まずは攻撃を当てなきゃ始まらないか。耐久力はそこまで高くないだろうし、スキルを当てれば一撃で倒せると思う。
だけど、あのスピードが厄介だ。
俺を上回る速度。ゴリ押しは通じない。
追いつくのは無理だ。どうやって攻撃を当てるかを考えた方がいい。
「「グルゥ!!」」
襲い掛かる二体の突進を、岩を遮蔽にしてなんとか防ぐ。
かなり距離があったはずなのに、一瞬で詰められた。
凄い跳躍力だ。あの身軽さは、さすが狼といったところ。
「ん?」
ふと頭に浮かぶ、根拠のないひらめき。
飛ぶ? シルバーウルフの跳躍力を利用すれば一体くらい倒せるか?
安全策はない。なら賭けるしかない。
(まずは後ろに……)
ナイフを前に突き出したまま、シルバーウルフと向き合った状態で座り込むように後ろへ飛び込んだ。
「いてっ」
地面に尻もちをつく。
目線の高さはシルバーウルフと同じくらい。
俺の動きは止まる。隙もできる。
ヤツらにとっては、獲物を仕留める絶好のチャンスだ。
「グルゥウウウウウウ!!」
一体のシルバーウルフが唸り声を上げ、足を踏み込んできた。
俺が突き出したナイフを避けるよう、空中から押し込む軌道で。
(今……!)
鋭い牙がギラリと光る。
宙を舞うシルバーウルフに、俺は空いた左手を向けた。
「“ファイアボール”!!」
火の玉がシルバーウルフの身体に直撃する。
「グゥルウウウウウウウ!!」
シルバーウルフは勢いを失い、燃え上がる身体を地面にこすりつけてもがく。
しかし、そのあがきも虚しく、光の粒子となって消えた。
ほっと一息をつく。
が、残り一体はまだ健在だ。
「グルゥ!!」
仲間を失ったシルバーウルフは、むしろ敵意を増している。
尻もちをついたままの俺へ、一直線に突進してきた。
グサァッ!!
「グルゥ!?」
だが、その牙が俺に届くことはなかった。
大きく開かれた口に、俺が投げたナイフが深く突き刺さっていたからだ。
「あぶねー……」
咄嗟の思いつきだ。
“武器強化”したナイフを投げれば、遠距離攻撃ができる。
このスキル、意外と応用が利くな……
ピコン!
『レベルが上がりました。“武器強化”のクールダウンが【17秒】に減少しました』
お、レベルアップした。
新しいスキルは手に入らなかったけど、クールダウンが減ったらしい。
前は【18秒】だったはず。
レベルが上がるとクールダウンにも変化が起きるのか。
ということは、レベルを上げることでどんどん短くなる?
あまりクールダウンの長さで悩まなくてよくなりそうだな。
「ん?」
シルバーウルフの素材を拾い終えた後、チラッと奥の方に階段が見えた。
「二階層……」
ここから下へ降りていくわけか。
常連の探索者は、ここから下の階層へ進んでいくんだろう。
次は二階層を覗くのもありか……今日は疲れたからもう帰るけど。
あれ? なんか置いてある。
石でできた端末? 何か書いてあるのか……
パァアアア
『ワープ登録完了。ダンジョン入口と二階層へ続く階段をチェックポイントとして登録しました』
ワープ? ワープできるってことか?
試しにダンジョン入口へ……念じればいいのか?
シュンッ
「お」
身体がふわりと浮いたかと思えば、いつの間にかダンジョン入口にいた。
「すごいな……」
他の探索者はこれを使って奥まで進んでいたのか。
どうりで一階層に人がいないわけだ。
「てかサクッと帰れるのいいな」
来た道を戻らなくていいのは本当に楽だ。
ちょうど帰ろうとしていたところだし。
さて、買取の時間だ。今日はどれくらい稼げたかな。