作品タイトル不明
第4話 スライム、そして初収入
「なるほどなぁ」
あれからゴブリンと三回戦ってみて気づいた。
まず、スキルによる攻撃は想像以上に強いということだ。
最初の戦闘ではゴブリンの肩を突き刺した時、ギリギリ生き残ってしまった。
しかし、二回目の戦闘で“武器強化”を付与したナイフで同じ場所を攻撃した結果、なんと一撃で倒せたのだ。
この差はかなり大きい。
そして、同じゴブリンでもドロップする素材に差があった。
ゴブリンを倒すと謎の鉱石がドロップすることが多かったが、三回目に遭遇したゴブリンを倒した時、コインのような素材がドロップした。
低確率でドロップするのか?
この辺も後で調べてみよう。
「お」
奥へと進んでいると、新しいモンスターに遭遇した。
水球のような身体でぴょんぴょんと跳ねながら移動しているその姿。
スライムだ。ゲームではゴブリンと並ぶ定番のモンスター。
今日はスライムと戦って終わりにしよう。
若干緩んでいた心に気合を入れ、俺はスライムにナイフを向ける。
そして“武器強化”を発動し、スライムとの距離を詰めて一気に斬りかかったのだが。
「あれ?」
刃が貫通しない?
クッションのような身体に斬撃が吸収され、そのままはじき返されてしまった。
同時にスライムが敵意を向け、俺に謎の液体を吐き出してくる。
俺は後方にバックステップして、その場から回避したのだが……
ジュッ
「やっば……」
スライム液が落ちた地面がドロドロに溶けていく。
少し触れただけで手足が一瞬で溶け落ちそうだ。
けど、初日で手足が消えるのは嫌だ。
慎重に。だけどスライムを確実に倒せる方法を考える。
刃は通らない。打撃も多分通じないと思う。
スライムの物理耐性は高い?
でも一番最初の階層。
つまり弱いモンスターしかいないはずだ。
ダンジョンが現れて何十年も経っているし、俺よりも強そうな人間がスライムに苦戦するとは思えない。
ということは何かしらの弱点がある。
スライムの身体で目立っている部分はないか……?
俺は距離を取りながら、スライムをじっと見つめて弱点を探し始める。
すると、違和感に気が付いた。
「……中心か?」
スライムの身体の中心部。
何か黒い球体のようなものが浮かんでいる。
あれを突けば倒せるんじゃないか?
根拠はないけど、試してみる価値はある。
俺は再びナイフを握りしめ、スライムと向き直った。
ちょうど“武器強化”のクールダウンも回復した。
やるなら今しかない。
「はぁっ!!」
強く踏み込み、スライムへと再び接近。
そのままスライムの中心部を刺すようにナイフを突き立てる。
幸いにもスライム自体はそこまで速くない。
ゴブリンの方がすばしっこいと感じるくらいだ。
ナイフは見事にスライムの身体に触れ、奥へと刺し込まれた瞬間。
パァン!!
「おおっ」
スライムの身体が弾け飛び、光の粒子となって消えていく。
地面にはゴブリンとは違う形の魔石が落ちていた。
やっぱりあの黒い球体が弱点だったのか。
あれって心臓? それとも鉱石?
もしかしたら安全に取り出せる方法があったり……いや、今は倒せたことを喜ぼう。
初日なんだ、色々求めても仕方ない。
ピコン!
『レベルアップしました。アクティブスキル:ファイアボールを獲得しました』
レベルアップ? モンスターを倒すと経験値が手に入るのか?
とりあえず強くなったらしい……試しにグッと全身の力を入れてみたけど、特に変わった感じはない。
レベルが一つ上がっただけだ。いきなりスーパーマンになるわけでもない。
けどスキルはわかりやすい変化だ。
嬉しい。
(新しいスキルか……)
“ファイアボール”ってことは火の玉を出せる?
色々試したいけど、今日はもう疲れた。
夢中になってモンスターの大群に囲まれたら終わりだ。
スキルの詳細は帰ってから、ゆっくり見るとしよう。
「あー、疲れたー」
身体を軽く伸ばしながら来た道を戻っていく。
ゴブリン、そしてスライムとの戦闘。
初日にしてはだいぶ冒険したと思う。
バイトをクビになったとはいえ、貯金に余裕がないわけではない。
ゆっくり、慎重に、
自分のペースで進めていけばいい。
俺の副業は始まったばかりなのだから。
◇◇◇
「お願いしまーす」
地上に戻り、俺は素材の買取窓口に来ていた。
窓口は十個もあるのにどこも列を作っていて、俺の番が来るまで十分もかかってしまった。
素材買取がメインなだけあって、利用者が多いのだろう。
「はーい、確認しますねー」
お盆のようなものを差し出されたので、今日獲得した素材をそこにのせる。
いくらになるのだろうか?
万はいかないと思うけど、数百円とかだったら流石に悲しい。
職員が慣れた手つきで素材を見ていく姿を、俺はスマホもいじらずにじっと見守っていた。
「こちらが査定結果と報酬となります」
そして運命の瞬間。
受け皿にのせられた金額は……
「えっ」
一万円札……? 加えて千円札と百円玉が少々。
ゴブリン四体とスライム一体だぞ?
初級モンスターの素材にしては高すぎないか?
一体何故……と考え始めた時、後ろが混んでいる事に気づく。
やば、迷惑になってる。
急いでお金を財布の中に入れ、査定結果が書かれた紙を持ってその場を離れた。
「詳細は……」
改めて査定結果を見てみる。
★★★★
ゴブリンの魔石×3 1500円
ゴブリンジュエル×1 9000円
スライムの魔石×1 1200円
合計:11700円
★★★★
ゴブリンジュエル?
そういえば変わった素材がドロップした。
あれ、そんなに貴重だったのか。
ネットで軽く調べてみた所、ゴブリンジュエルは中級探索者向けの武具に使われることがあり、需要が高まっているらしい。
しかし、
・ゴブリンからしかドロップしない
・そもそもドロップ率が低すぎる
・ゴブリンを狩り続けるくらいなら、上のランクのモンスターを倒した方が安定して稼げる
といった理由で、市場に出回っている数が少ないらしい。
なるほどなぁ。
俺はものすごくラッキーだったわけだ。
毎日これくらい稼げたら楽しいだろうなぁ、なんて妄想していた時。
「あら? もしかして研修に来ていた子?」
「え? 如月さん?」
振り返ると、如月さんが笑顔と共に手を振っていた。
服は汚れ、長い髪が汗ばんでいる。ダンジョン帰りなのだろう。
「もしかしてもうダンジョンに? 元気ね~」
「暇な時に色々試したかったんですよ。何ができるかわからないので」
「なるほどね~、けどあんまり無茶しちゃだめよ?」
「自分のペースで頑張るつもりです。ダンジョンはわからないことが多いので」
「その考えは大事よ。無理して大怪我をする子が多いんだから」
「あぁ……やっぱり」
如月さんの研修を受けてよかった。
ちゃんとお礼を言おう。
「研修、すごくためになりました。ありがとうございます」
「えっ? あぁ、いいのよ……全然大丈夫……」
あれ? ポカンとしている?
俺としては素直に感謝を伝えただけだが……まぁいい。
ダンジョンは無理せず攻略する。
これ、凄く大事。
「初日……よね? そんなに長くダンジョンに潜れるの……?」