軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第38話 ULTの力

「はぁあああああ!!」

戦闘が始まって二~三十分が経過した。

前線が手薄になり、ダイヤランク以上の探索者も次々と奥のレイドボスを討伐しに向かっていく。

もちろん、シロナもだ。ウォーミングアップが終わったからと切り上げていたけど……

(知らないモンスターが増えてきたな……)

ゴブリンやシルバーウルフに混じって、見たこともないモンスターが姿を現す。

魚人のようなもの、鳥型の怪物、そしてアルマジロのような個体。

まるでB級映画のようなラインナップだ……ゴールド以上はこんな連中がいるのか。

実力は未知数だが、あっさり倒されている。

やはり数が正義。いくら強くても一匹では勝てない。

「-----!!」

「足キノコ!? こんなにたくさん……うぉおおおおっ!!」

「文也様!! “ヒール”!!」

高速で走ってくる足キノコ軍団の爆発に巻き込まれた。

「助かった……集団だとかなり厄介だな……」

「爆発しますからね……数は減っているのでもう少しです」

「“武身強化”と“ファイアボール”のクールダウンがもうすぐ上がる。完了次第、突っ込むわ」

「了解ですっ。静も可能な限り援護します」

倒しても倒してもわらわら湧いてくる。

無限にいるのか? 奥にいるレイドボスを倒さない限り、このモンスターラッシュが終わることはなさそうだ。

「いてて……」

「あー、魔力切れがー……」

後ろを見れば、負傷や魔力切れによってダウンしている探索者がちらほら現れ始めた。入口の外には医療関係者が待機しているとはいえ、復帰は難しいだろう。

俺たちの仕事はあくまで時間稼ぎ。どれだけ倒すかというより、どれだけ長く戦えるかが重要だ。

「“ウィンドアロー”!!」

「キョオオオオオオッ!?」

じりじりと追い詰められる探索者たちの中で、いまだ前線で戦い続ける美人のお姉さんが一人。紗理奈だ。

「おおっ、さすが如月さんだ!!」

「やっぱダイヤランクはちげぇなぁ」

周りの探索者たちから賞賛の嵐。やはり慕われているんだな。

後衛がメインと言っていたのに、前線でも滅茶苦茶強いじゃないか。

「さて、もう一度行くか……」

俺も負けていられない。スキルのクールダウンが上がったのを確認し、再び立ち上がって前線へ戻る。

「あの探索者何者だ?」

「あんだけスキル使ってもピンピンしてるぜ……」

「おいおい、MPいくつあんだよ……しかも強ぇし」

俺に対する声が増えてきた。

尊敬というより、怖がられている? 周りからすればMPが多すぎる謎のルーキーというところか……そりゃ警戒もされるか。

ズゥン!! ズゥン!!

「ォオオオオオ……」

「……まじか」

奥の陰からぬるりと姿を現す、腐肉をまとうドラゴン。

同時に地面や壁など至る所に灯籠が出現する。

「ドラゴンゾンビだ!!」

「バリア固すぎだろ!! どうやって倒せばいい!?」

「確か灯籠を破壊し……」

まさかこいつが出てくるとは。

だがギミックはもう知っている。行動パターンも把握しているし、今回は楽に……

「……多くね?」

灯籠の数が異常に多い。

設置できる場所に隙間なく配置されている。

ざっと見ただけで三~四十個はある。

「これ全部破壊するのか……」

「壊すだけなら楽よっ!!」

紗理奈が意気揚々と弓を放ち、壁に配置された灯籠の一つを破壊する。

確かに弓なら遠い場所の灯籠も破壊しやすい。

それに今回は他の探索者も大勢いる。意外と何とかなりそうだ。

「ォオオオオオオオオ!!」

「そういえばゾンビを召喚するんだったな」

通常湧きに加えて召喚まで。この状況で数を増やされるのは……正直きつい。

「文也くん、まさか昇格前に倒したボスって?」

「ああ、こいつです」

「……よく一人で倒せたわね。ドラゴンゾンビはパーティ前提のボスなのに」

「さすがは文也様です♪」

ギリギリだったけどな。スキルをフル活用して、なんとか隙を突いて撃破したという感じだったし。

というか、パーティ前提のモンスターだったのか。灯籠ギミックがどう考えても一人で対処できる量じゃない。

「クソッ!! ゾンビが多すぎる!!」

「灯籠にゾンビどもがまとわりついて攻められねぇ!!」

だが、今回のドラゴンゾンビは違う。

早い段階でゾンビを召喚した上に、灯籠にまとわりつかせて守りを固めている。

「ォオオオオオオオ!!」

「「「うわあああああああああああ!!」」」

そしてバリアに守られながら、捨て身の突進を仕掛けてくる。

巨体によって探索者たちがボウリングのピンのように弾き飛ばされ、次々と地面へ転がった。

「ヤバいわね……探索者たちがどんどん倒されてる」

「回復が追いつきません!! モンスターが多すぎます!!」

「奥の討伐隊がレイドボスを倒すまで……持つかしらね」

灯籠を破壊するより先に、こちらのメンバーが全滅しかねない。

ただでさえ他のモンスターを相手にしなければならない状況だ。そこへ自由に暴れ回るドラゴンゾンビの対処。

あのバリアさえなければ……

(そういえばULTの効果って……)

防御貫通。

そのスキル効果に一筋の希望を見出す。

「合図をしたらドラゴンゾンビのヘイトを買ってほしい。ULTを使う」

「ULT? そういえば新しく覚えたって……」

「試してみる価値はありそうですっ」

「OK、やってみましょう!!」

すでに説明している二人には俺の意図が伝わっている。

二人が後方で身構えたのを確認すると、俺は“ファイアボール”とともに前方へ飛び出した。

「“武身強化”……」

“ファイアボール”の爆発と同時に身体能力を強化する。

周囲に群がるモンスターたちを斬り裂き、ULTゲージを溜めていく。

(98……99……)

ウィンドウ画面に表示されたゲージ。

スキルを当て、モンスターを倒すたびにカウントが進む。

そしてゲージが100%になり、ULTアイコンが光り輝いた瞬間、後ろへ合図を送った。

「今だっ!!」

「“ホーリーショット”!!」

「“ウィンドショット”!!」

「コォオオオオオ!!」

二人のスキルがドラゴンゾンビへとまっすぐ放たれる。

強力な二発がバリアへ命中し、ドラゴンゾンビの意識が逸れた。

「“龍撃斬”」

瞬間、ULTスキルを発動する。

“武身強化”に似た身体能力の向上。そしてワープナイフに龍のようなオーラがまとわりつく。

そのオーラは刃へと集束し、青白く輝く剣へと変化した。

武器に関しては“武身強化”以上の力を感じる。

「「「Fuuuuuuuu!!」」」

未知の力に一瞬意識を奪われた隙に、騎士型モンスターたちが一斉に襲いかかってくる。

振り下ろされる剣を前に、俺はワープナイフを一閃――円を描くように振り抜いた。

ズバァアアアアアアアアアッ!!

「っ!?」

一撃……だと?

あの硬い騎士が、ワープナイフの一振りで砂のように砕け散った。

斬った感覚すらほとんどない。力もそれほど込めていない。

なのに、この斬れ味は異常だ。

「ォオオオオオオオオ!!」

「文也様っ!!」

「文也くん!!」

正気に戻ったドラゴンゾンビが、光り輝く刃を持つ俺へ勢いよく突進してくる。

避ける時間はない。

ならば……

俺は刃を思いきり前へ突き出した。

「……まじか」

刃はバリアを貫通し、そのままドラゴンゾンビの肉体へ届く。

触れた血肉は粒子となって消え、巨体が前進するたびに傷口は深く広がる。

そしてドラゴンゾンビの全身が、真っ二つに裂けた。

やがて力を失い、その場に崩れ落ちる。

「「「「ォオオオオオ……」」」」

「……ついでにやるか」

まだ“龍撃斬”の効果時間は残っている。

探索者たちも追い込まれている今、俺が暴れ回って時間を稼ぐのが最善だろう。

「凄いわね……これがULT……」

「使用条件が厳しいだけの威力はありますね」

はっきり言って強すぎる。

だからこそ、ULTという切り札として制限されているのだろう。

自分の力にいまいち実感が湧かないまま、俺は周囲のモンスターを次々と討伐していくのだった。