作品タイトル不明
第35話 一夜明けて
「……」
目を覚まし、身体を横に倒せば、気持ちよさそうに眠る紗理奈の姿があった。
胸元や足のほとんどがあらわになったネグリジェ姿。
朝にしては刺激が強すぎる光景だ。
(すごかったな……)
一線は超えていない。
ただマッサージを受けて、膝枕をしてもらっただけだ。
そういえば最後、口元に何かが触れたような……
「あら、おはよう♪」
「おはよう……」
色気のこもった微笑み。挨拶をかわすと同時に、紗理奈は布団の中で俺を優しく抱きしめる。
(俺は幸せ者だな……)
頭の中がふわふわした感情に包まれ、紗理奈という存在が脳内を支配していく。
本能が、彼女ともっと触れ合いたいと強く訴えてくる。
これ以上は……いろいろまずい。
「すっごく可愛かった……」
「俺もすごく気持ちよかったです……ありがとうございます」
「あら? そこまで深いことをしたかしら?」
「何を勘違いしてるんですか……」
相変わらずのセクシージョーク。
一瞬で顔を熱くする俺に、紗理奈はペロッと舌を出し、にやけ顔で返してくる。
っと、もう時間か。
そろそろ起きないとバイトに遅刻する。
……本当は行きたくないけど。
「今日もバイトよね?」
「あ、はい。朝からだから……終わったらダンジョンに潜るよ」
「ふむふむ……ちょっと待って」
ガシッと肩を掴まれる。
「文也くん、ちゃんと休んでる?」
「え? そういえば最近、バイトとダンジョンを行ったり来たり……」
「休みなさい」
見守るような優しい視線から一転、鋭くこちらへ訴えかける目に切り替わった。
「働きすぎは身体によくないわ。せめてダンジョンだけでも休みなさい」
「えぇ……でも元気で……」
「や・す・ん・で」
「……はい」
楽しいからこれくらい平気だろう、と思っていたのだが、紗理奈は許さないらしい。
結局、彼女の気迫と圧に押され、午後は休むことが決まってしまった。
六階層がどんな場所か気になっていたのに……まあゴールドに上がったばかりだしいいか。
「まったく、若い時に無理したら後々ガタがくるんだから」
「むぐっ……」
「本当はバイトも休んでほしいけど難しいでしょ……だから見送るわ」
「……いってきます」
「ふふっ、いってらっしゃい」
胸元に顔を埋められ、全身に絡みつくように抱きしめられる。
なかなか抜け出せない。というか、現にバイトへ行く気力が失せてしまった。
ただ、せっかく見送ってもらったのと、これ以上爆発するとヤバいという二つの理由に挟まれた結果、なんとか抜け出すことに成功。
朝から壮絶な戦いを繰り広げたのだった。
◇◇◇
「……暇だ」
バイトも終わり、ダンジョンへ……は行かずに自宅でゴロゴロ。
休むと言ってもやることがない。だから休みなのだろうけど。
前はこの時間帯にカラオケでバイトしてたからな~。
朝からならまだしも、昼から休むという感覚に違和感がある。
とりあえずゲームでもするか……
(てかパッシブスキルについて何も見てなかったな……)
ボス戦後、新たに獲得したパッシブスキル。
今までとは違う雰囲気を感じたが……暇つぶしに見てみるか。
ピコン!
★★★
【ULT】
分類:パッシブスキル
~効果~
・ULTゲージを追加する
・スキルを発動、または命中させた際にULTゲージが溜まる
・また、モンスターを【5体】倒すことでボーナスとしてULTゲージを溜めることができる
・ULTゲージが100%に到達した際、全ゲージを消費して以下のULTが使用可能になる
【龍撃斬】
分類:ULT
~効果~
・身体能力を強化し、防御を貫通する超強力な斬撃を放つ
・効果時間【10秒】
★★★
ULTというかアルティメットか?
ゲームだと切り札として使える必殺技みたいなやつだ。
スキルを使用するたびにゲージが溜まっていくのか……そして、ゲージが溜まると“龍撃斬”という技が使用できる。
俺のウィンドウ画面の真下部分に“0%”と書かれた大きめのアイコンが表示されている。
ここが“100%”になることでULT発動の条件が満たせる……手間はかかるが、その分ものすごく強いスキルが使えるのか?
まあ、仮に強くなくても通常行動のオマケでついてくるだけで強い。
スキルはダンジョンに潜れば必ず使う。
(いずれにせよボス戦はかなり戦いやすくなる……か?)
今までにないタイプのスキルだから未知数な部分が多い。
役に立ってくれることを期待しよう。
ピロン!
「ん?」
通知音? 画面を見るとダンジョン協会のアプリからだった。
「レイドボス……?」
レイドボスのお知らせと書かれた通知だった。
開くと、そこにはレイドボスに関する説明がいろいろと載っていた。
どうやらダンジョンでは一時的に構造が変わることがあり、その現象によって超強力なボスが出現するらしい。
そのボスをダンジョン協会ではレイドボスと呼んでいる。
レイドボスの出現とともにダンジョン内では大量のモンスターが出現する。
モンスターを放置すると地上にまで溢れ出てしまうため、よほどの事情がない限り、探索者は強制参加が義務付けられている……とのこと。
はえー、そんなことが。
レイドボスって、多分俺が戦ったドラゴンゾンビなんかよりずっと強いよな。そいつと戦うのか?
参加するのはいいけど、無茶だけはしたくないなぁ。
あっ、レイドボス出現の時期も書いてある。
どれどれ……金曜日の午後? バイト終わりに参加できそうだ。
(大変だなぁ)
一通り情報を確認し終えたところで、起動し終わったゲームへ向き直る。
ま、なんとかなるだろう。
俺は新人だし無茶ぶりを強要されることも……あ、俺最近ゴールドランクになったばかりだ。
変なことを任されそうで不安だなぁ。