作品タイトル不明
第28話 固いモンスターとボーナス
「えっっっっぐ……」
穴から這い出た俺の目に映った光景。
真っ黒に焼け焦げた地面。ビームが通り過ぎた後には十センチくらいの深い溝ができていた。
壁は跡形もなく消し飛んでおり、ちょっと狭い小部屋がかなり開放的になってしまった。
いや、火力ヤバすぎだろ。
こんなの食らったら一瞬で消し炭になるじゃん。
「文也様!! 回復は必要ですか!?」
「まだ大丈夫だ!! ありがとう!!」
あのタメの長さから察するに連発はできないはず。
次のビームが発射される前に、ジュエルゴーレムの弱点を見つけなければ。
「コォオオオオオ!!」
「くっ……」
振り下ろされる拳。
加えて蹴り、さらには巨体を生かした体当たりまで。
全ての攻撃が触れるものを粉々にしていく。
ジュエルゴーレムの身体能力が高いのもあるが、何より全身にまとっている鉱石が固すぎて、物理攻撃として破格の威力が出ている。
攻防一体とはまさにこのこと。
動かなければ、ただの鉱石まみれのお宝モンスターに見えるな……
(鉱石?)
ジュエルゴーレムの全身を覆う鉱石。
あれってダンジョン内に生えている物とほぼ同じ……だよな?
「なぁ静。ダンジョンで取れる鉱石って何が弱点なんだ?」
「弱点? 確か高熱に弱い……まさか?」
「そのまさかだ」
閃いた。
ジュエルゴーレムが固いのなら、ジュエルゴーレムの鉱石を狙えばいい。
何もいきなり本体を狙わなくたっていいんだ。
「ですが“ファイアボール”の熱だけで、鉱石を溶かせますか?」
「光って熱を持ってなかったか?」
「あぁ!! その手がありましたね!!」
俺の“ファイアボール”と静の“ホーリーショット”。
合わせればかなりの熱量になるはずだ。
さて、作戦は決まったので狙う鉱石を……
(濡れてる?)
右肩の鉱石の表面が少し湿っている?
この辺には水辺なんて存在しないのに。
あ、そういえば“酸液”を当てていた。
鉱石の耐久力が高すぎて効果を発揮せず、水みたいに濡らしただけ。
まてよ? 石に水が入り込むと爆発しやすいって、ネットニュースで見たぞ。
これは使えるんじゃないか?
「右肩に攻撃を集中させよう。濡れているから爆発しやすいはずだ」
「確かに石の内部へ水分が入り込んでいれば……やりましょう」
二人で手を前に掲げ、向き合うようにジュエルゴーレムのサイドへ回り込んでいく。
ジュエルゴーレムが俺たちの動きに反応して再びビームの充填を開始した。あまり時間は残されていないな……早いとこケリをつけないと。
「“ファイアボール”!!」
「“ホーリーショット”!!」
二人の両手から一発ずつ、それも同時に。
合計四つの弾がジュエルゴーレムの肩部へと一直線に向かっていく。
ドォオオオオオオオン!!
「コォオオオオオオ!?」
着弾すると同時に爆風が部屋内を揺らす。
ジュエルゴーレムはビームの集束を停止し、右肩を抑えながらその場に膝をつく。そして肩は……見事粉々に破壊されていた。
作戦は成功。これで右肩の装甲が薄くなった。
「これならっ……!!」
「静も援護します!!」
ビュビュビュンッ!!
静の光弾が足元に炸裂。ダメージを与えるというよりはヘイトを買うために発射したのだろう。
「ォオオオオオ……」
ジュエルゴーレムが混乱している最中、俺は“武身強化”で一気に間合いを詰め、ワープナイフを天へと振りかざす。
「コォオオオ!!」
だがジュエルゴーレムも簡単にはやられない。
残った左腕を俺の元まで突き出してきたのだ。
突き出された拳に対して、俺は急いでスタンシールドを構えた。
スタンは狙わない。
打撃を一瞬だけ防げばいい。
ガァン!!
「っ……!!」
拳と盾が激突する。一瞬だけ受け止めた後、俺の身体が後方へとじわじわ押し込まれていく。
“武身強化”を入れているとはいえ、正面での押し合いではジュエルゴーレムの方が上らしい。流石はモンスターといったところか。
が、これで左腕は封じた。
後は顔が隠れるように盾を前に出して、タイミングを見計らえば……
パァアアアアアアッ!!
「コォオオオオッ!!」
「今です!!」
ジュエルゴーレムの顔面付近に閃光が広がる。
それを合図に俺は盾を滑らせるように動かし、そのままジャンプする。
「はぁっ!!」
ボロボロのジュエルゴーレムの右肩へワープナイフを突き刺す。
装甲が一気に崩れ落ちていくのを確認した後、俺は再びスキルを発動した。
「“武身強化”」
これで終わりだ。
ワープナイフへと“武身強化”を付与した後、俺は突き刺したワープナイフをより深く押し込んでいく。
「コォオオオオオオオオ!!」
甲高い悲鳴と共に全身をジタバタともがき続けるジュエルゴーレム。
しかし、その動きも徐々に鈍くなっていき、数十秒が経過した頃にはピタリと止まってしまった。
「……終わった」
ジュエルゴーレムが粒子となって消えていくのを確認して、俺はその場に座り込んだ。
二人がかりでもかなり苦戦したな。
今回は“武身強化”に助けられたなぁ。
ありがとう、進化してくれて。
「やりましたねっ!! 流石、文也様です♪」
「静の援護があってこそだ。俺だけじゃヤツに勝てなかった」
さて、ジュエルゴーレムは倒したぞ。
これで報酬が貰えたら……
ピコン!
『レベルアップしました。“ファイアボール”のクールダウンが【16秒】になりました』
お、レベルが上がった。
“ファイアボール”のクールダウン短縮か……前が十八秒だったから二秒短縮。
二スタック分を含めたら合計四秒だ。これは大きいな。
「わわ、レベルアップですか……」
「静も?」
「その反応だと文也様も? おめでとうございますっ」
どうやら静もレベルアップしたらしい。
ジュエルゴーレムはかなり強かったし、レベルが上がるのも当然……
ピコン!
『ボーナス報酬がドロップします』
「「ん?」」
ボーナス報酬? こんなアナウンスもあったのか?
静が首を傾げている辺り、彼女にも同じ音声が流れているみたいだが。
カーン……
「えっ」
固いものが落ちたような音。
振り向くと、何もない空中から鉱石が降り注いでいた。
「わわっ、どんどん落ちてきます!!」
「これがボーナスか……?」
メダルゲームのボーナスみたく、空からどんどん鉱石が降ってくる。危ないので俺たちはいったん離れて、その様子を見守った。
一個一個は小さい。だが塵も積もれば山となる。
その言葉を体現するかのように、鉱石はどんどん積み上がっていった。
「「……」」
そして鉱石の雨が収まった頃、そこには腰元まで高く盛り上がった鉱石の山が出来上がった。
何ともまあ豪華な報酬を。
これ、全部売ったらいくらになるんだ……?