作品タイトル不明
第22話 二人に招待される
「篠宮さんとは昨日、ダンジョンで助けた縁で話していました。如月さんとは講習の教官として縁があって……」
何やらまずい予感がしたので、二人と出会った経緯をできるだけ詳しく話す。
さすがに如月さんと飲みに行った話は、だいぶ端折ったが。
俺は悪くない。ただ流されるまま行動していたら、こうなっただけだ。
……はたから見れば、女性をたぶらかす男に思われているのかな。
「「なるほど?」」
どうやら俺の説明で納得してくれたらしい。
少し首を傾げているのが気になるが……
「如月さん、ちょっとよろしいですか?」
「えぇ……どうしたの?」
そう言って、如月さんと篠宮さんは二人で隅の方へ行ってしまった。
あれ? 俺は放置?
二人だけで大事な話があるということか?
「ーーー♪」
「ーーー!? ーーー……」
え、すごく楽しそう。時々笑ったり、納得したように頷いたり。
何を話しているのかさっぱりわからないが……キャッキャウフフな女子トークが繰り広げられていると、俺は勝手に解釈した。
「お待たせしました」
「私も誤解してたわ。迷惑かけてごめんなさいね?」
「あぁ、うん……わかっていただけて何より……」
ほっと一安心したのも束の間。
突如、二人に両腕をガシッと掴まれ、そのままどこかへ連れていかれそうになる。
「あの……どこへ?」
「静のお家です」
「はい?」
「私もお誘いされたの!! 楽しみ~♪」
「えっ、なんでそうなった……?」
なぜか三人で食事会をすることになった。
二人とも妙にニヤニヤしていて、何か企んでいるようにしか見えない。
……いや、素直に受け止めるなら、賑やかでいいのかもしれないが。
……というか、篠宮さんの家に行くの?
女性の家なんて行ったことないぞ。
(ふ、二人の身体が……)
左腕には如月さんの豊満な感触。
右腕には篠宮さんのスレンダーな身体。
まったく違う感触が左右それぞれダイレクトに伝わってきて、よからぬ感情が沸き上がる。
「あの野郎……美少女に囲まれて……」
「羨ましい、すごく羨ましい……」
「今日、店行こうかな……ははは」
後方から聞こえる男たちの悲痛な声に、俺の欲はスンッと落ち着いた。
ありがとう。だが喧嘩を売っているつもりはないんだ。
ただの偶然だ。こんなラッキーイベント、何度も起きるはずがない。
……多分。
◇◇◇
「さぁさぁ、あがってください♪」
「おお……」
電車で移動し、なんやかんや話しているうちに篠宮さんの家へ到着した。
大きな一軒家だ。装飾も妙に凝っているし、横目に映った庭もかなり広い。
金持ちの家……俺とは次元の違う世界で暮らしている。
(匂いも内装も小物も、全部女の子だ……)
足を踏み入れた瞬間、微かに甘い香りが漂う。
目に入るものはすべておしゃれで、小物に至るまで可愛らしい物で統一されている。
男性の部屋とは明らかに違う別世界。
自分という存在が明らかに異物すぎる。入ってよかったのだろうか。
「女子力たっかい。それに比べて私の部屋ってシンプルね、ははは……」
「小物が多いだけですよ。今度は如月さんの家にも行ってみたいですっ」
「えー? こんな可愛い子がぁ? もぉ、たくさんもてなしちゃうわよー♪」
「きゃー♪」
情けない一人の男などお構いなしに、美少女たちが抱き合ってスキンシップを始める。
二人とも、すっかり仲良くなったようだ。いいことだ。
「お二人とも、明日のご予定は?」
「今日と変わらず探索ね」
「俺は早朝からバイトで、午後は調子が良ければ探索かな?」
「あまり無理しないでくださいね? 治したばかりなんですから」
「無理はしないよ。ありがとう」
篠宮さん曰く、回復魔法は自然治癒力を極限まで高めているだけらしい。
つまり無理やり治しているようなもので、無理をするとまた傷が開く可能性があるという。
明日はバイトだし、ダンジョンも深く潜る予定はない。
依頼も受けず、最低限素材を集めたら帰るつもりだ。
ちなみに今日の素材は売却済み。
合計なんと七万円ほど。潜るたびに金額が増えていくのは気分がいい。
そのうち落ちるだろうな、と覚悟はしているが。
「うーん……」
隣を見ると、口を尖らせて唸っている如月さんの姿。
「……タメ口」
「え?」
「藤崎くん、私には敬語なのに、シズちゃんにはタメ口なの~?」
「いやっ、その……如月さんはお姉さんみたいに思ってて……」
「如月さん……」
あぁ、更に拗ねてしまった。
どうやら篠宮さんより距離があることを気にしているらしい。俺に差をつけるつもりはないが、本人の感じ方は別だ。
というか、シズちゃんって……ずいぶん仲良くなったな。
「如月?」
「もっと」
「紗理奈?」
「ふふん、よろしい♪」
紗理奈は振り返りつつも、頬が緩んでいるのが見えた。
どうやら許してくれたらしい。
……年上のお姉さんを名前で呼ぶことになるとは。なんだかムズムズする。
「静もお願いしますっ」
「ええと……静?」
「はーい、文也様♪」
静もすかさず割り込んできた。
わざと頭を下げ、上目遣いであざとく微笑む。
一瞬ドキッとする。
この子、気づかないうちに人を沼に引き込むタイプだ。恐ろしい。
「これで仲良しですっ」
「そうねぇ。距離がグッと縮まった感じ♪」
「ふふっ、ご飯の準備をしてきますね~」
今日一番のご機嫌ぶりで、二人は室内へ入っていった。
一方俺は、怒涛のイベントラッシュに精神エネルギーを持っていかれ、その場で立ち尽くす。
(女性って凄いなぁ……)
距離の詰め方や甘え方。
何より、男性とは違う独特のノリ。
知らないことばかりで、俺はただひたすらドギマギしていた。