作品タイトル不明
第19話 新しいスキルと四階層
「うわ凄い、”ファイアボール”が二回撃てる」
右下に表示されている”ファイアボール”のアイコンの上に②と表示されている。
一回使うと①に減り、もう一回使うと0になる。
時間経過で再び①、②と回復していく。
これは便利だ。短時間で使えるスキルは限られていたから、二回撃てるだけでも十分強い。
牽制用と本番用で使い分けるとか、武器付与と遠距離攻撃で使い分けるとか、いろいろ使い道があるぞ。
あと、”武器強化”のクールダウンが下がった。
個人的にはこれも2スタックほしいのだが……あれこれ求めても仕方ない。
そしてメインとなる新しいスキル、”酸液”。
果たしてどんな効果なのか。
早速発動してみよう。
「ドロッとしてる?」
意識すると手元に球状の液体が出現した。
ここまでは”ファイアボール”と同じ要領だ。
だがヘドロスライムみたいに腐ったような色合いのうえ、手触りがなんだかドロッとしている。
匂いこそしないが……全体的に不快感が増した印象だ。
とりあえずスキル画面で効果を確認……
ピコン!
★★★
【酸液】
分類:アクティブスキル
〜効果〜
・手から強い酸性の液体を生成する。
・当てた相手や物の耐久力より酸の威力が上回っていた場合、命中した箇所を溶かす。
・酸は付着した箇所にしばらく留まり続け、効果時間は【4秒】
・クールダウン:20秒
★★★
「……こわ」
相手を溶かすって、なかなかえぐい。人間が持っていい能力なのか?
試しに撃ってみるか。
ジュッ
「地面が溶けた……」
”酸液”が当たった箇所がドロドロに溶けていく。
挙動はヘドロスライムの酸とほぼ同じ。
これがモンスター相手でも溶かせるって考えると……恐ろしい。
というか、これ俺が触っても大丈夫なのか?
試しに自分の髪の毛を一本抜き、酸液に触れさせてみたが何も反応はない。
俺の体は触れても問題ないってことか?
ピコン!
『機能開放:“酸液”に使用者が触れても効果が発生しないことを確認。スキル説明文を更新しました』
最初から書いておけよ……絶対あとから追加しただろ。
妙に不親切だな。
「階段? ということはゴールか?」
いろんなスキルを試しながら長い通路を歩いていると、階段と端末が視界に映った。ここからが四階層か。
三階層はダンジョンやモンスターの雰囲気がガラリと変わって新鮮だった。
四階層ではどんなモンスターがいるんだろう。
「今日は行ってみるか」
時間に余裕はある。端末への登録も終わった。
四階層の攻略まではいかないが、どんなダンジョンかは見ておきたい。
明日からまたバイトが始まって、がっつり潜れないからな。
構造や出現モンスターなど、ある程度把握しておこう。
(ネットの情報も曖昧なものが多くて参考にならないんだよな……)
愛読しているwikiですら曖昧な表現が多く、出現モンスターに関する記述も詳しい説明が少ない。
さすがに序盤のモンスターは詳細に記載されているが、三階層のモンスターに関してはざっくりとした情報しか載っていなかった。
ヘドロスライムが足キノコで爆発することに関してもだ。そんな記述はどこにも存在しない。
増え続けるダンジョンやモンスター。そもそもスキルを持っている人間も限られている。
その中でwikiなどに情報をまとめてくれているんだ……
限界あるな。全部網羅するなんて無理だ。
(対応力も含めて探索者は難しいってことか)
最終的には自分の目で見て対処するしかないのだろう。
深呼吸をした後、俺は四階層へと降りていく。
湿気の多い三階層と違って、涼しい風が吹いていて個人的にうれしかった。
◇◇◇
「これは随分と……ギラついてるな」
四階層はとにかく光にあふれていた。
宝箱、鉱石、あらゆる物が輝いており、目立つ場所に配置されている。
……宝箱も鉱石も貴重な素材だよな?
なのにシルバーランクでも来られる四階層に、こんなにあるのはなぜだ?
(偽物か?)
試しにナイフを鉱石に向けて投げてみる。
すると鉱石はあっさり折れてしまい、輝きが消えてただの石へと変貌した。
ついでに近くに転がっていた宝箱も開けたが……中身は空っぽ。
ここにある宝箱や鉱石のほとんどは偽物か。
ハリボテにもほどがある……タチが悪い。
「本物はないのかな……」
けど、本物も混じっている可能性はある。
正しい場所にお宝が眠っている、なんて話はゲームだとあるあるだ。
四階層における正解は?
普通に考えたら面倒な場所とか、穴場スポットとか?
「だとすれば……モンスターが大量にいたり?」
面倒な場所として真っ先に思い浮かんだ。
とりあえず”気配察知”で探してみるか……
「あれ? ここだけ配置がおかしいぞ」
バラバラに点在する赤いモヤモヤ。
その中に、円陣を組むように配置された集団を発見した。
ここだけ綺麗に並んでいる……何かあるのか?
(見てみよう)
例の集団へ向けて歩みを進める。もちろん、他の赤いモヤモヤは避けながら。
歩いても歩いても、周りには宝箱や鉱石であふれている。
全部偽物だとわかっているからか、道に転がる石ころみたいに見えてしまう。
正直、四階層にあるもの全部が偽物でもおかしくない。
あくまで仮説を検証したいだけ。
「えっ?」
目的地にあったのは小部屋。しかし中には誰もいない。
あるのは円状に並べられた宝箱のみ。
モンスターはどこにもいない。
”気配察知”が間違えた? いや場所は確かにここだ。
だとすれば……
「円状に?」
赤いモヤモヤの配置と宝箱の配置。
偶然にも一致しているが……まさか。
試しに一つの宝箱に小石を投げてみる。
カツンッ
「「「「クショオオオオオオオ!!」」」」
突如、すべての宝箱から牙と舌が生えて奇声を発し始めた。
これは宝箱じゃない。宝箱を模したモンスターだったんだ。
確か名前は……ミミック。
「ここは詐欺ばっかだな」
ため息を吐きながらナイフを構える。
さてと、新しいスキルを試しながら戦うか。