作品タイトル不明
第14話 三階層へ
「三階層は……なんかジメッとしてるな」
急に雰囲気が変わった。
湿気が多く、少し動いただけでも汗をかく。
地面は草が生い茂り、至る所に水たまりができている。
水は常に多めに持ってきているけど、今回は足りるかどうか。
(この環境だとモンスターもガラッと変わりそうだな)
二階層から変わったモンスターはボスのファイアリザードマンのみ。
ゴールドスライムもそうだが、この階層はどんなモンスターやギミックが現れるのやら。
ガサガサッ
(……キノコ?)
目の前を足の生えたキノコが通りすぎた。
なんとも珍妙な生物だ。湿気が多いからキノコにとっても生活しやすい環境なんだろう。
足キノコとでも名付けておこう。
そんな足キノコの実力を試すべく、俺は背後からファイアボールを投げ込んだ。
ボォオオオオオッ!!
「……よく燃えるな」
足の先から頭のてっぺんまで、あっという間に燃え広がっていく。やはり植物だけあって炎には弱いらしい。
足キノコにはあまり苦戦しないと思う。
「うおっ!?」
と、油断していたら燃えていた足キノコがボンッ!!という音とともに爆発した。大量の胞子と共に。
うわ、壁や地面に胞子がびっしりへばりついてる。
死に際に厄介なトラップを残しやがって。
急いで岩陰に隠れたから無事だったけど……倒しても油断できないな。
「足キノコは離れた位置から倒す……」
とは言ってもだ。先が見えないダンジョンではモンスターも突然出現する。
道の角で足キノコにバッタリ遭遇して爆発でもされたら、さすがの俺でも回避できないと思う。
あの胞子、吸い込んだらとんでもなく体に悪そうだしな……何か対策は。
(そうだ、気配察知があるじゃん)
見えなくてもモンスターの場所がわかるスキル。
これを使えばモンスターにバッタリ遭遇、なんてトラブルは回避しやすくなるはず。
どれどれ……早速使ってみよう。
「おおっ……」
壁越しに赤いモヤモヤが見えるようになった。
目に入る中でだいたい三つか四つくらい。
もっとモンスターがいると思うけど、スキルの効果範囲外にいるのか?
とりあえずモヤモヤがある所に向かってみる。
「……ほんとにいた」
少し歩いた先に全身を腐らせたモンスター、ゾンビが徘徊していた。
実物を見ると結構グロい。けど、迫力があって嫌いじゃない。
ホラー映画とかあんまり怖くないんだよなー。
”気配察知”の効果も確認できたので、俺はワープナイフを構えながら前へ踏み出す。
”ファイアボール”はクールダウン中。なので別のスキルで挑む。
「”武器強化”……あれ?」
確実に斬った、はずなのに手応えがない。
振り返ると、ゾンビの腹部には確かに斬り傷がついていた。
なのに倒れないってことは……相当タフだな。
「「「オォオオオ……」」」
しかも地面からボコボコと這い出るように増えていく。耐久力のあるモンスターが複数体いるとは、だいぶ厄介だ。
けど所詮はモンスター。どこかに弱点があるはず。
「とりあえず足を斬るか……」
傷はつくんだし肉の少ない足なら……と試しに斬ってみたらうまくいった。足を失い、バランスを崩してその場に倒れるゾンビ。これを他のゾンビにも喰らわせる。
ゾンビたちは足を失っても這いつくばって俺に近づこうとするが、明らかにスピードが落ちている。
これで落ち着ける時間が増えた。
”武器強化”のクールダウンが終わるまで、逃げながら対策を考えよう。
「……そういえば」
ゾンビ作品でのお決まり。頭を潰せばゾンビは止まる。
あれはダンジョンでも同じなのだろうか?
クールダウンが終わったら試してみよう。
全てのスキルのクールダウンが終わった後、俺はシャベルを取り出して”武器強化”を付与する。
ナイフだと短くて絡みつかれる危険があるからね。
「えいっ」
試しに一体のゾンビの首をズバッ!!と切断。
……動きが止まった?
加えて足を斬られた時より苦しんでる。
他のゾンビから逃げながら観察していると、頭をなくしたゾンビが光の粒子へと変わり、消滅するのを確認した。
やっぱり弱点は首か。
この調子で他のゾンビも首を狩っていく。
「首を置いてけー」
殺人鬼みたいなセリフとともにゾンビたちを一掃する。最後のゾンビを斬ると、ちょうど”武器強化”の効果が切れた。
よしよし、知らないモンスターも順調に倒せているな。
ピコン!!
『レベルアップしました。”武器強化”のクールダウンが【15秒】、効果時間が【11秒】になりました。”ファイアボール”のクールダウンが【18秒】になり、着弾時の爆破範囲が広がりました。”気配察知”の効果範囲が広がりました』
……ちょっと強化されすぎじゃないか?
今までの変化よりも明らかに大きいぞ。
もしかして一定レベルに達するとボーナスが発生するとか?
とりあえず情報を整理しよう。
★★★
【武器強化】
クールダウン:17秒→15秒
効果時間:10秒→11秒
【ファイアボール】
クールダウン:22秒→18秒
着弾時の爆破範囲が増加
【気配察知】
効果範囲が広がった
★★★
改めて見ても凄い。
対戦ゲームの弱キャラがやけくそ強化をもらったみたいな内容だ。
攻撃スキルは使い勝手がさらに良くなって、会得したばかりの”気配察知”は効果範囲が広がったのか。
攻撃系はなんとなく効果がわかるとして、”気配察知”はどうなんだろう?
範囲が広がったと言ってるけど、果たしてどれくらい……
「おおっ」
凄い。赤いモヤモヤが二倍くらい増えた。
さっきより奥まで見える。
強化前と違って地面の下にいるモンスターも見える……というかこれがゾンビか?
感心しながらダンジョン内を”気配察知”で探っていた所、
「……色が違う?」
赤いモヤモヤの中に一つ、金色のモヤモヤが紛れている。
これはなんだ? じっと金色の方を見ていると、普通のモンスターとは明らかに違う気配を感じる。
「そういえば依頼内容のモンスターって……」
”ゴールド”スライム。
金色のモヤモヤはゴールドスライムか?
いやいや、そんな単純なわけがない。出現自体が珍しいって受付のお姉さんも言ってたし。
けど、本当なら……
「……見てみるか」
”気配察知”の詳細な効果も知りたい。
レアなモンスターか、はたまた別の存在か。