作品タイトル不明
第13話 気まずい朝と依頼
「……本当に申し訳ございませんでした」
「いや……その……」
翌朝。カーテンの隙間から差し込む光と共に目を覚ました俺を待っていたのは、床に土下座する如月さんの姿だった。
「ご飯もホテル代も全部藤崎くんが払ってくれたのよね? 奢られるどころか余計な出費を……しかも酔っ払いの介抱まで……」
「そ、そんなに気にしなくても……俺は楽しかったですし」
「なんて気の使える子なの……ううっ……」
また泣いちゃった。
意外とメンタルが不安定なのかな?
それはそれで心配になる。
慰めようと如月さんの元へ近づいた、その時。
「っ!!」
俺は反射的に顔を逸らした。
見てしまったのだ。だらしなく開かれた太ももの先の、目に入ってはいけないピンク色を。
「? どうしたの?」
「足を閉じていただけると……」
「足? あっ……」
言うべきか迷ったけど、正直に伝えたほうが後の関係に響かない……気がする。
如月さんは少し黙り込み、ゴソゴソと布の擦れる音を立てた後、「もういいわよ」と声をかけてくれた。
「よかった、可愛い下着で……」
「心配するのそこ?」
「下着は大事なのよっ」
安心してください。素晴らしいものでした。
……絶対に口には出さないけど。
「ほら、これ」
「えっ、全額はさすがに……割り勘にしません?」
「ダメよ。散々迷惑かけたんだから」
「……俺だって下着見ちゃいましたし」
「なるほど?」
一応、俺にも非があるとアピールしておく。
「……もしかして脱いだ方がよかった?」
「危ない発言はやめてください……心臓に悪いです……」
「ふふっ」
如月さんは悪戯っぽく笑う。
そのまま立ち上がると、俺にいくらか現金を渡してきた。
「じゃ、お言葉に甘えるわ♪」
「ありがとうございます……」
「ついでにLIMEも交換しましょ。連絡先知りたい」
「はいはい……えーと」
微笑む姿に心が奪われる。
やっぱり美人は最強だ。ちょっとした仕草でさえ絵になるのだから。
ホテルを出て何時間か経てば、俺は今までの出来事を夢だと勘違いするだろう。
それくらい、如月さんに懐かれている現状が信じられなかった。
◇◇◇
「……なんだこれ」
翌日。
スマホに通知が来たので開いてみると、以前働いていたカラオケ店の店長からメッセージが届いていた。
内容は、新店舗の人手が足りないから来てほしいとのこと。
即日採用、即戦力希望。
文章の中には、以前クビにしたことへの謝罪まで書かれており、相当追い込まれていることが伝わってきた。
「申し訳ないですが、忙しいので……」
条件は悪くないが、店長は一足遅かった。
断りのメッセージを送った後、俺は店長をフレンドから削除する。
今はダンジョンがある。カラオケのバイトと掛け持ちするより、こっちの方が充実していて楽しい。
それに新店舗は距離も遠い。
自転車で三十分はさすがに面倒だ。
ピロン!
「おお……」
少しだけ憂鬱になったところに、如月さんからのメッセージが届いた。
“昨日は本当にありがとうね〜” って、律儀な人だなぁ。
こちらも丁寧に返信すると、可愛らしいマスコットのスタンプが送られてきた。凄く癒やされる。
「依頼窓口は……あった」
俺は今日、ダンジョン協会へ依頼を受注しに来ていた。昨日は酒を飲んでいたからな。
アルコールも抜けて元気いっぱい。新しいことにも挑戦してみようと思ったのだ。
「すみませーん、依頼窓口ってここで合ってますか?」
「あ、はーい。少々お待ちくださーい」
窓口に行くと、お姉さんが親切に対応してくれた。
ライセンス発行の時と同じように、書類を書いたり質問に答えたりする。
「こちらのQRコードからアプリをインストールしてください」
アプリ? 依頼はアプリで管理してるのか?
言われるがままQRコードを読み取り、アプリをインストールして起動する。
「おおー」
依頼管理アプリ……ド直球な名前だな。
メールアドレスとパスワード、そしてライセンスカードのIDを入力するとトップページに移動した。
「こちらのアプリで依頼を受注することで取引が開始されます。必要素材が集まったら、ここに直接持ち込んでください〜」
いつもの買取とは流れが違うらしい。
間違えないよう気をつけないと。
「最初なら……こちらとかどうでしょう?」
「ほほぉ」
お姉さんが提示してくれた依頼は、ゴールドスライムの魔石を一つ。
出現階層は三〜五階層。こんな情報まで載っているのか。
「ゴールドスライム自体は出現率が低いですが、期限が長いのでおすすめですね。ペナルティもありませんし」
「ペナルティ?」
「失敗が続くと依頼を受注できなくなります。ご自身の実力に合わせて利用してください」
それは困るな。
依頼でどれだけ稼げるかはまだ分からないが、聞いた感じ条件は悪くない。
とはいえ、俺の実力ってどれくらいなんだ?
ファイアリザードマンにもなんとか勝てたし、強さの基準がまだよく分かっていない。
「とりあえず探してみます。ありがとうございました〜」
「お気をつけて〜」
まあ、とりあえずやってみよう。
三階層にも行く予定だったし、ゴールドスライムもついでに探してみよう。
受付のお姉さんにお礼を言い、俺はダンジョンの入口へ向かった。
「……あ」
新しく覚えたスキル《気配察知》。
これを使えば、ゴールドスライムも見つけられるのでは?
早速試してみよう。