軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出港

そしてついに、ブラッディファングが完成となった。

長い長いブラッシュアップの末の完成、それに合わせてトイボックスも出来上がった。

なんかね、中等部に色々教えるついでに高等部が説明しながらあまりもののパーツで組み上げたらしい。

どうせぶっ壊すからいいだろという理由で強度は無視されたのだ。

当然安全性も皆無である。

良い子は真似するなよ!

「それにしたってよく間にあったなぁ……」

予定ではひと月と半分、だというのに実際は二カ月かかっている。

一応試運転もこれからしなきゃいけないのだが、予定にはぎりぎり間に合うかなという所だ。

要するに交流祭である。

「そりゃ期日は守るもんだ」

「半月遅れだけどな」

「それでも本当の最終ラインには間に合わせる」

あぁ、これ漫画家とかがよく言う「極道入稿」ってやつだ。

今回の場合は極道入港になるのかな?

「で、国家らの予定がぎちぎちなわけだが……試運転からの試しで簡単な作戦に参加、そんで最終的な所を見てから完了か」

「そうなるな。今日は試運転をするつもりだが、乗るだろ?」

「当然! クリス達も声かけてあるからすぐに来るだろうよ」

「なぁ、坊主……」

「ん? どした」

不意におやっさんが遠くを見るようにつぶやく。

「お前さんはどんな地獄を見た」

唐突だった。

あまりにも核心を突いており、そして有無を言わせない言葉。

「……ここはいい所だよな。メカニックもパイロットもみんな生き生きとしてる。明日死ぬかもという恐怖があるのに、それを感じさせない。それだけの技術があるんだ」

「そうだな。長くインベーダー共と戦ってて忘れちゃいけねえと思ってたもんだ」

「おかげでベヒモスだのサモナーミストだの、そんな化物連中相手にも臆することなく戦う事が出来た」

「ありゃ見事だった。映像で見返したが気絶してたのが勿体ないと思ったな」

少なくとも、初見のベヒモスなんて初心者は真っ先に死ぬ。

サモナーミストなんて隠し玉があれば磨り潰される。

そういう相手だ。

ボス格ではないが、中ボスとして立ちはだかり、難敵としてそこら辺を闊歩するようなレベルだ。

RPGで言うなら30レベル、序盤を終えた頃合いに出てくる勝てないレベルの相手と言った所か?

「あれに第二世代機で挑むってどんな気持ちだと思う」

「自殺、じゃねえか」

「そう、だけどそれでも超えなきゃならなかった。そういう戦場もあった。確実にあった事なんだ」

「………………」

「そんなベヒモスが米粒に見えるような巨大なインベーダーがいる」

「……そうか」

「代六世代機を中心とした軍列で、100人以上で挑んで10人も生き残れなかった」

「………………だろうな」

「あれにまともに対処するには代八……望むなら代九世代が欲しい所だ」

なんども、ゲームだった時から思っていたことがある。

俺達が早期リタイアしていなければ、もっとギアは発展して死者を減らす事が出来たんじゃないかと。

けれどそうはならなかった。

そのツケを払ったのは俺じゃない。

俺は自爆しただけで、いい所なんか見せられなかった。

死んでった奴らがいた。

なすすべもなく初見殺しにやられた奴らがいた。

疲労からのミスで死んだ奴もいた。

なんなら運が悪かっただけの奴もいた。

そいつらが、俺達がサボった分のツケを払った。

今でもそんな考えが頭から離れない。

「ツクヨミ改はいい機体だ。だけどまだ足りない。タスクを上乗せしても主力に据えるには足りない。少なくとも同等の性能を持ったギア、まだ見ぬそいつらが数百の戦列を作り的確な動きができて始めて倒せるような相手だろうな」

「そこまでか」

「あぁ、そんなのを相手に何度も何度も……と言うほどじゃないけど、死線はくぐってきたつもりだ」

「どこでとか、いつとかは聞かねえ。その上で一つだけ教えろ」

「なんだ」

「お前さんが本気を出したら、そんな世代を飛び越えるような機体を作れるか?」

「無理だ。俺一人じゃ絶対に手が届くことは無い。それこそブレイクスルーを起こすようなもんだからな」

「……そうか」

「だけど、俺一人で足りないならあいつらにも手を貸してもらう。クリスにも良平にも、正直巻き込みたくないけど凜にも。もちろんおやっさんにもな」

「はっ、この歳にして大仕事だ」

「後世に名を遺す仕事になるな」

「ならお前さんはその機体を使ってインベーダーの親玉をぶち殺してくれるか」

「用意出来たらな。そのためならできる事は何だってしてやるさ」

不意に思い返す。

夜な夜な、ゆっくりと自室で眠ると瞼の裏にこびりついた光景を。

凜と母さんが死んで、今俺が見ているのは都合のいい夢で、実際はまだあのクソゲーの中にいるんじゃないかと。

そして自爆する瞬間、それこそアニメで見たようなセリフしか出てこなかった自分の空虚さと、残されるであろう父さんの事を何も考えてなかったあの時の自分。

唾棄すべき記憶、そして想像。

だけど受け止めなきゃいけない物でもある。

だから、だからこそ俺はもう一度同じような場面になったとしても絶対に生きて帰る。

凛達を置いていけない。

それが今の俺の全てだ。

スサノオなんて機体を作ったのも、こうして戦艦を作るのに協力したのも全部だ。

出来る事をする、それが俺の全て……。

「ま、そう肩ひじ張らずにいこうや。互いにできる事をしようぜ、おやっさん」

「そうだな」

「まーた男同士でなんか話してんの?」

「システム不良でもあった?」

「私にも声かけてよお兄ちゃん! クリスさんから聞いたんだから!」

おっと、秘密の話をしていたらみんな集まってきたみたいだ。

「いやなに、これから戦艦の試運転だ。みんなも乗るだろ」

「「「もちろん!」」」

声を合わせた三人、だよなぁ。

俺だって楽しみで仕方ない。

「よし、全員乗りこめ! おらメカニック科も中等部も乗り込むんだよ! 全員で出港式だ! 試運転でも初めての飛行だからな! なんか会ったらメカニック科は走り回る事になるぞ! パイロット科も単純作業はやらせるし、コントロールはある程度覚えてもらうからな! 総員配置につけ!」

「「「「「おう!」」」」」

威勢のいい返事だ。

「よし、じゃあブラッディファング、出港準備だ!」

さてさて、まずは手始めにこいつがどこまで言う事聞いてくれるか。

しっかり体験させてもらうとしようか。