軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ひと時の休暇

そして三日間、まさに寝食を忘れる勢いで仕事をこなした。

もちろん安全には最大限気を配りながら、同級生たちと初めてと言ってもいいレベルで深い交流をした。

言うまでもなくデスマーチを超えた何かになったが、タスクの牙は形になったのである。

「で、できた……」

「もう、むり……」

「死ぬ……」

地面で背中合わせになり、男女問わずへたり込んでいる同級生を前に俺はシステムチェックをする。

一応問題なく動いているが、どこかぎこちないから後で直しておこう。

「さて、あと3機か」

その言葉に泣き言を吐いていたメカニック科の視線が集まり、無言の圧を感じる。

「そんなに見つめても何も出ないぞ。マジでこれあと3機作らないと戦艦もタスクも完成しないんだから」

「だ、だけどそんなに急ぐ必要あるか……?」

「交流祭が夏だからあと2カ月くらいだろ。で、単純計算今の速度でやったとして残り3機のプロトタイプを作るのに9日かかる。そこからブラッシュアップや仕様変更を考えると最低でも一カ月半かかるな。伸ばせば伸ばすほど時間は超過していくから本番に間に合わせて恥ずかしくない程度の物作るとなると時間がない」

「……ツクヨミ改とスサノオの時もだけどスケジュールに余裕を持たせるとかは」

「スケジュールの方が突撃してくるんだ。インベーダーと同じでいつ何時発生するかわからん事案だからな。いや、むしろインベーダーの方が予想しやすい分楽か?」

突発的なスケジュール問題なんていつ起こるかわかったもんじゃねえからな。

実際結構な強行軍しているわけだし。

「とはいえ今日はこれで解散だ。プロトタイプを量産しても意味がない」

「マジでか!?」

「マジもマジ、とりあえずこれをブースターと繋げる作業は俺とおやっさん、あとプロ達がいれば十分だ。帰ってラーメンでも食って寝ろ。明日からまたデスマーチだから」

「……登校拒否したくなってきた」

「その場合はツクヨミ改で見舞いに行くぞ。元気そうならコックピットに押し込んで音速超えた空の旅を楽しませてやる。ちなみにあのクリスがギブ出してゲロも出しかけて、おやっさんが気絶して、凜は無き語と言いながらオペレートしてた」

「……中等部の天使、強いな」

「悪魔の兄を持っているからだろ……」

「天使と悪魔……」

「どうして兄妹でこんなに……」

「いや、あの子は笑顔で圧かけてくるから……」

お前ら人の妹を何だと……。

「というか天使ってなんだ」

「知らねえのか。お前の妹可愛いだろ、それに気が利くしここぞという時に差し入れ持ってきてくれてる。誰か死ぬかもと思ったタイミングで欲しいもの持ってきてくれて休憩もぎ取ってくれるからな。そりゃ天使くらい呼ばれるさ」

「天使ねぇ……スケジュールの大半を俺が教えてるのは知ってるか?」

「知らないが、家族ならそのくらい共有はするんじゃないか?」

「たぶんそこから逆算してるな。俺の感覚に合わせてたらここで泣き言はいるってタイミングで来てる。最近理解したが俺とおやっさんのまだ行けるは他の人にとってもう無理ラインらしいから」

現場の長と同じ感覚っていうのは、褒め言葉として受け取っているけどな。

いやぁ、いいもんだな。

「だからどっちかと言うとあいつが元凶だぞ。今のお前たちのその姿」

「……だが可愛いから許される!」

「その心意気は買うけどさ。俺がその喧嘩買うと思わなかったか? 人の妹に色目使ってんじゃねえぞこの野郎」

「お前みたいな悪魔に負けるか! 誰か銀のスパナ持ってこい!」

「大体銀色じゃねえか!」

「お前を倒すために用意した特注品だ! ありがたくその顔面で受け取れ!」

「上等だ! ツクヨミ改で空の旅手の上コースやってやるよ!」

喧嘩が本格的な物になりかけた時だった。

俺達の間を縫って飛来した鈍色の物体が壁に突き刺さり、そして互いにそれを確認するべく視線を向ける。

派手な音を立てて金属製の壁に突き刺さったのはモンキーレンチだった。

飛来した方を見る。

おやっさんがこちらに視線を向けることなく手を伸ばしていた。

「……現場ででかい声を出すのは他の人の迷惑になるな」

「そうだな、俺達は大人しく帰るよ。せっかくだし飯でも食って交流を深めながらな」

「そうした方がいい。俺もあっちの作業に混ざるからさ……」

「お前さんも帰るんだよ」

いつの間に!

背後に回っていたおやっさんに肩を叩かれた。

「これを繋げるくらい俺達でもできる。それを済ませたら今日は一度休むつもりだ。だってのにガキがいたら締まらねえだろ?」

「あだだだだだ! 肩が外れる!」

「わかったら……な?」

「うす! 帰りますから!」

「おう、てめえらよく頑張ったな。飯行くならこれで食ってこい。准将から差し入れだ」

封筒をメカニック科に手渡したおやっさん。

恐る恐る中をあらためようとしているのを横で見守ると万札が数枚出てきた。

「マジで准将から?」

「おう、大将からも預かってるがそっちは完成したら使えだとよ。つーわけで行ってこい、ガキども」

「「「ありがとうございます!」」」

「あとこいつも連れて行ってやれ。友達すくねえから」

「おやっさん、それはないぜ……俺達友達だろ?」

「師弟関係くらいには考えてるが……」

そこで微妙な表情しないでくれないかなぁ……。