軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鬼! 悪魔! 暴食!

「もう……無理……」

一人、また一人と勇敢なメカニックが倒れていく。

進級が既に決まっている者や、俺達の学校にエスカレーター式に登ってくる奴らが実戦を経験できると手を上げた。

だが所詮は中学生、その多くは実際の現場に放り出され、厳しい言葉を投げかけられながらの作業に精神も肉体もついてくることができないでいた。

「やっぱりこうなると思ってた……」

様子を見に来た凜、その手にはシュークリームが大量に詰まったコンビニの袋。

いわゆる差し入れた。

「おっす、一個貰うぞ」

「はいはい、それで先輩たちは?」

「見ての通り1日働かせただけでダウンした。こりゃまだまだ使い物にならねえよ。こいつら基礎トレーニングちゃんとやってるのか?」

「メカニック科もパイロット科も基礎トレーニング量は同じだよ。ただ中学生だからまだ本格的じゃないってだけで」

あぁ、成長期だもんな。

余計な筋肉つけると成長に影響するからか。

それにしたって体力なさすぎる。

「そのトレーニングを毎日したうえで今これならもう少し増やしていいだろ。流石にこの程度じゃ役に立たない」

「がふっ……」

誰か被弾したな。

だがこの程度の言葉で倒れるのは軟弱だ。

戦場だと倒れてる暇ないからな。

水だって貴重だから機体戦場に使った処理水ぶっかけられて叩き起こされるぞ。

「おやっさん、凜が差し入れ持ってきてくれた。そこら辺で伸びてる奴らに食わせて多少でも動けるようにしてやってくれ」

「おう、おら雑魚共、さっさと差し入れ食って仕事に戻りやがれ。道端で寝るんじゃねえよ邪魔だな」

「女神と悪魔……」

「教官が優しく思える……」

「これが現場……」

口々に感想を漏らしながら死体のように這って凜に近づいてくる奴ら、その先頭にいた男の頭を踏みつける。

「おい、凜はスカートだぞ? 覗き込むつもりならこのまま首へし折る。さっさと立て」

「……お兄ちゃん、鬼も逃げるような形相でそういうのはどうかと思うの。特に疲れ切った人相手に」

「相手は選ぶ。まだ動けるようだからやってるだけだ。と言うか凜は無防備にこんな所に制服で来るなよ」

「大丈夫、ちゃんと下に短パン履いてるから」

そう言ってスカートをたくし上げる。

デニム生地の短パンがその裾を見せるが……。

「それだって完璧にガードできるわけじゃないだろ。と言うかはしたないからやめなさい」

「はーい、なんかお父さんみたいな口振り……」

「そもそも野獣しかいない場所にのこのこやって来るんじゃありません」

「本格的にお父さん化してる……」

「まったく、俺が銃持ってたらこいつら撃ってたかもしれねえんだからな。不用意な行動で死者が出るかもしれないから気をつけろよ」

「お兄ちゃんは絶対に武器持っちゃダメな人だと思うの」

凜の視線がどんどん冷たくなっていくが、それでもちゃんと応対してくれるところ好きだよ。

というか妹として愛しているぞ、マイシスター!

妹を愛さない兄などいない!

「で、そっちの進捗は」

「あぁ、設計図は完成したが……こりゃだいぶ大掛かりな作業になる。模型を作って、今は先にできる作業だけ進めているが交流祭に間に合うかどうか微妙なところだな」

「間に合わせるための応援がこれだからなぁ……」

「それに加えて俺達もギアの方が専門ってのも強いな。戦艦も修理程度なら何度も経験しているが作るってのは流石に無かった。軍に応援を頼もうにも理由が薄い。どうにかしたいところだが……」

「大将か准将に話してみようか」

一応連絡先は知っている。

個人用の番号じゃなくて、軍内部で使うための回線でしかないけど。

「それは最後の手段だな。今はこの屍を如何に使えるようにするかが先だ」

「……一朝一夕とはいかないよなぁ。今回はパイロット科から引っ張ってこられる人員もいないし」

クリスも良平も真面目に授業を受けている。

出席日数の問題は特務隊になったことで解消されたのだが、成績という面ではクリスが一番怪しい。

俺は俺で睡眠時間削って通信教育で学習内容を抑えるようにしたからな。

試験だけならそれなりの点数はとれそうだ。

ただなぁ……流石に教師からの評価には響くだろうな。

「タスクの方は?」

「そっちは少しは進んでいる。スピーダーを基にしたブースターだ。ついでにギアの耐G緩衝材も改良しているからもう少し動きやすくなるだろうさ」

「ってことはツクヨミ改の方でもっと暴れてもいいのか」

「……お前さん、まだ無茶するつもりか?」

「え、だって今までフルスペック出してないし」

ワイバーンとかベヒモス、サモナーミストの時は基本スピーダーでも直線移動しかしなかった。

本質はその状態での之の字運動、レレレ撃ちとかジグザグとか言われる動きができて当たり前。

それを三次元でやるというのがメインで、なおかつ急加速急停止も当然織り込んでいくという複数の択を相手にぶつけるのが本質だ。

だというのに耐G性能が云々と言われ、おやっさんはもちろんクリスも気を失いそうだからできないと太鼓判を押されて封印した戦法である。

ついでに言うとリミッターも全部解除したわけじゃなく、半分くらいしか解除できてない。

それができるようになれば理論上は最強のギアになるんだよな、ツクヨミ改。

パイロットキラーになるだけで。

「ま、何はともあれその差し入れ食わせてエナドリ流し込んでやれ。最悪の場合パワーアーマーに繋いで無理矢理動かしてもいいから」

「そのつもりだ。頭数があるなら単純作業だけでもやらせるさ」

「鬼だ……」

「悪魔だ……」

「なんだこいつら……」

「俺が知ってるメカニックじゃねえ……」

「魔王より魔王だ……」

失礼な奴らだな、先輩相手に。

と言うかこの程度でへばるのが悪い。