軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

パンジャン

「おーい、叔父さん。いるかー」

「おう、幸助。……随分な別嬪さん連れてきたな。コンペ関係か?」

「学友だよ。同級生のクリス・L・メイラードさんと言えばどういう人物かわかるか?」

その瞬間叔父さんの目つきが変わった。

「リッパーの家系か! という事はあのワイバーンをばっさばっさ切ってた!」

「たぶんそれ。ついでにベヒモスの眼球に胴体埋めて自爆した命知らず」

「あの機体か! いやぁ、面白いもの作ったなとは思ったが……想像以上に実用的だな」

「実用的過ぎて叔父さんの好みじゃないだろうな」

「まぁな。ただ実物を拝んでみたいというのは変わらんぞ。お前の、あのイカレタ機動力の機体も」

イカレタ……まぁ否定はしない。

そういうコンセプトだからな。

「で、コンペの話をしに来たのはわかる。対価はなんだ」

「流石商売人、話が早くて助かるよ。具体的に言うとシミュレーターが欲しい。あと自家用ギアの新調」

「なるほどな。つまり機体とコックピットか……高くつくぞ?」

「それに見合うだけの情報は持ってるし、最悪の場合金はどうにかなる。今はローンか後払いのどっちかしか無理だが」

軍からシミュレーションのプログラム代が入るのもうちょい先なんよ。

大将が鶴の一声でバシッと決めてくれたら早いんだが、流石に防衛省とかも一枚かんでくるから。

「なるほど、いいパトロンでも見つけたか」

「そんなところ。それで、お勧めのギアは?」

「用途にもよるが……通勤や買い物程度なら重道重工の機体が一番無難だな。値段もそこまでじゃない。安全性も保障されているしな。その名もRB-476ミササギだ」

重道重工……コンペにいたな、確かミササギは重装甲機体がメインだけど可変機構をオミットしなかった第六世代機で、一般家庭でも人気だ。

自衛はもちろん避難もできる。

二人乗りにした事でパイロットの負担を減らしつつ、コックピットを広げて一般家庭の家族が避難するにも使えるようになっている。

軍人向けじゃないが一般で広く知られてる機体。

少し癖があるが、父さん母さんなら問題なく乗れるだろう。

「じゃあそれで」

「おいおい、他に聞かねえのか」

「だって一番のお勧めだろ。俺はピーキーな機体の方が好きだけど、家庭用となればメインで乗るの俺じゃねえし」

「まぁそうだな。ならあとで家に持って行ってやる」

「あぁ、いや、俺が乗って帰ってもいいけど」

「そういやお前高校生になったしギア免許あるんだったな。なら少し割引してやるよ」

「もう一つおまけしてもらえそうな情報があるんだが」

「へぇ?」

「凜も特例でギア免許取得した」

「そいつはめでたいな。なら安くしておいてやる。出世払いでいいぞ」

「ありがと。んで、本題だが」

「おう、コンペの事聞かせてくれ!」

叔父さんの熱量にあてられそうだが、いったん落ち着こう。

ギアが並んでるエリアの端でジュースを飲みながら語る事にした。

ベンチが置いてあって、買いに来た人たちが休憩したりするんだよ。

クリスもコーラを飲みながら感じたことを語ってくれたので、俺も適当に話を合わせる。

ぶっちゃけ他の機体を見る暇なかったのであまり覚えてないのもあるけど。

「なるほど……どの社も安定志向なのは変わらないか。だが新技術のお披露目はしている。ワイバーン戦で活躍の場が少なかった機体も光る所はあるか……となると何処が正式な機体として選ばれるかはわからないな」

「俺の予想だと美味しいとこどりで新技術を随所にちりばめた第七世代機の互換が作られるんじゃねえかなと思う。今回の一件で株価上昇した会社も他社の技術を侮ってる様子は無かったし、協力する方針になるんじゃないかな。うち以外」

「ってことはなにか。あのスサノオって機体はここで打ち止めか?」

「ツクヨミ改もそうだけど、技術ツリー的に行き止まりなんだ。まだ伸びしろのある第七世代機に比べて装甲とかの細かい調整しかできない、なんなら単独でその辺換装できてしまうからこそこれ以上を求めるならパーツ単位の進化を待つしかない。気密性の問題もあるしスサノオは第八世代にはなれないよ」

「ちょっと、あんたが設計したんじゃない」

クリスが少し怒ったような声を出す。

「乗ってみてわかってたんじゃないか。所詮第七世代に毛の生えた程度の性能しかない。その癖いざという時に使えるのは脱出機構だけ。ならバックパックシステムと脱出機構を第七世代機に積み込むだけでいい。今上が恐れてるのはパワーバランスだ。裏社会にギアが流れる可能性が増えるってのはそれだけでリスクが高い。そういう意味じゃスサノオは最悪。逆に流れても使えるパイロットがいないツクヨミ改は、軍でも持て余す。性能だけを伸ばしたツクヨミ改も第八世代機と呼ぶにはお粗末なんだ」

「じゃあどんな機体が第八世代機になれるのよ」

「いい質問だお嬢さん。そうだな、ディーラーとして言うなら運動性能と装甲は大前提。それでいてリアクターや素材の一新も当然だ。この辺は総合技術だな」

「つまり……機体の性能を根本からあげる必要がある?」

「そう、それでいて耐G性能が高く操縦しやすい事。これが必須だ。ツクヨミ改だっけ、あれみたいにパワーだけでぶん回して乗り手を選ぶのは論外。誰でも使える強い機体であるのが最低ラインだな」

「付け加えるならその強さがどの方面に向くかだ。第三世代機は可変機構を持ちながら装甲も厚かった。一方で第七世代機は装甲こそ削ったが新素材を用いて第三世代機並みの防御力を得つつ、機動力を上げた。第五世代は変形機構をオミットする事で防御力と隊列編成を用意にしたし、第四世代は戦闘機形態での戦闘を主軸にした。ある意味ではリアクターとかその辺が改良されて初めて次の世代を名乗れるようになる。そして何を強みにするかでスタンダードを作るんだ」

「むぅ……あんたはそういうの設計できないの?」

「流石に門外漢。というかリアクター周りは下手にいじると大惨事になりかねないから、学園で改造とか新造は無理だな。素材とかに関しても俺は一般の学生と同じくらいしか知らんよ」

まぁ、インベーダー素材を用いるという発想だけは異端かもしれんけど。

ゲームではあったんだよ、そういう機体が。

昔のアニメみたいに装甲に見えているのは拘束具で、それが外れると暴走するようなとんでも機体。

当然パイロットの事なんか一ミリも考えてないからデスゲームで乗ろうという奇特なやつはいなかった。

あぁ、でも特定のインベーダーの心臓をリアクターにするってのはあったな。

レアもの過ぎてマーケットには流通してなかったし、個体差が酷いから旧式以上のごみを引き当てる事もあった。

一部じゃリアクターガチャなんて言われてたっけ。

どのみち安定稼働や量産化には向いてないから意味ないか。

「叔父さんはなんかその辺情報無いの」

「んー、今中東が石油資源を利用したリアクターの開発に躍起になってるくらいか? あとはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ロシアがそれぞれ新型機をロールアウトしたくらいだが、リアクター周りはまるで聞かん。流石に国家レベルの機密だろうしな」

「だよなぁ」

そもそもの国家間バランスが崩れかねない話だしな。

それを公にすることは無いだろう。

というかどこの国が開発しても最終的に対インベーダー名目で情報開示させられるから秘匿するのも限度あるしな。

「イギリスが新型ロールアウトしたの? どんな機体?」

「たしか近接特化だけどハリネズミみたいにビームライフルを背負って、四方八方を銃撃しながら突撃する機体だったか?」

「問題だらけに聞こえるんだが……」

「パンジャンギアって言われてる」

「ダメじゃねえか」

「銃口の向きのせいで味方にも被害が出るからな……敵のど真ん中で使うにはいいんだろうけど」

なんというか、イギリスは相も変わらずって感じだな。