軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再出撃

「くっそ、でかい癖に上手くさばきやがる」

何度か剣を蹴り飛ばそうと突撃した俺だったが、躱された。

いや、暴れて狙いが定まらないというのが正確なんだが、近づくと必ず顔を振りやがる。

こっちが何をしようとしているのか理解しているようだ。

だったら作戦を巻き戻すだけだ!

「だらっしゃあ!」

「うっぷ……」

「吐くなよ!」

「無理……」

後部座席で口元を抑えているのか、くぐもった声で返事をしてくるクリスを無視してベヒモスの首を切りつける。

さっきよりも大きく鱗に傷がつき、衝撃で破片が飛び散る。

手傷を負わせるには足りないが、まだ最後の手段であるおやっさんのバックパックが……来た!

「クリス! あとは自分で操縦してくれ!」

「わ、わかった……助かった……」

そう言ってベイルアウトしていったクリスを見送り。

「ドッキングシークエンススタンバイ! リンケージ!」

おやっさんの乗ってきたバックパックと合体した。

「くっそ、とんだじゃじゃ馬だなこいつは!」

「おやっさんナイス! 助かった! そんでごめん、無茶する!」

「は? ほわああああああああああああああああああ」

盛大な悲鳴を無視してバックパックのリミッターも解除する。

今、この機体は音速すら追い越して弾丸よりも早く飛べる。

その速度を維持しながら剣のケツを蹴り飛ばし、離れては蹴り飛ばしを繰り返す。

速度特化型特殊バックパック、スピーダー。

本当に速度の事しか考えてないもので、普通に使えば直進しかできない。

だがスラスターをふかしたり逆噴射をしたりと小細工混ぜて鋭角でのカーブを決める。

当然負荷は激しく、機体が軋むし俺達もGで身体と意識が持って行かれそうになる。

というかおやっさんは既に気絶しているのか静かになっている。

死んでないな、バイタルは大丈夫だ、ならよし。

クリスから借りっぱなしのデカい剣を両手に、その重量も加算して最終速度まで一気に加速して剣を踏みつけた。

鋼の折れる感触を感じながら、そのままベヒモスの眼球の中に機体を沈めていく。

「追加だオラァ!」

更にアクセルを踏み込み、レバーを押し出す。

残っていた機体崩壊を防ぐためのリミッターも、生命維持システムの電力もカットしたうえで最後の加速を咥えると機体全体が、ベヒモスがビクンと大きく震えた。

一瞬の浮遊感、咄嗟にスラスターをふかして脱出すれば巨体が倒れ込むのがカメラに映る。

とはいえ、血濡れで視界不良もいいとこだけどな。

「凛! 放水!」

『放水ポイントα、すぐ動かせるよ!』

「よっしゃ!」

指定されたポイントに立った瞬間スプリンクラーが動き、血と脳髄で汚れた機体を洗い流してくれる。

まだワイバーンの群が残っているが、おやっさん連れたままじゃどうにもならん。

「一度下がっておやっさんを降ろす。クリスはどうした」

『クリスさんは予備のスサノオパーツとドッキング中だよ! というかおやっさんの声しないけど生きてるよね!』

「バイタルは安定しているから多分大丈夫」

『救急班をドックに向かわせたから15番ドックで降ろしてあげて! ついでに補給も済ませて!』

「了解した。15番……あそこか、切り込むから救急班にシャッターから離れろと伝えてくれ」

『無茶しないでよ!』

「極力気を付ける方向で前向きに検討する!」

叫んで、ワイバーンの群に隠れたドックへ突撃する。

さすがスピーダー、加速も一級品だ。

その分燃費が糞だけど、炉をバックパックに2個、本体に1個と合計3個積んで普通の機体と同等の運用ができるようにしただけある。

まだ半分というべきか、もう半分というべきか、残りのエネルギーを見るとビーム兵装の仕様は無理だと断念。

よって切り込むのだ。

進路上にいたワイバーンを切り倒しながら、そのままドックのシャッターも斬り捨てて内部に突入。

その場でしゃがみ込むと整備班と救急班が駆け寄ってきた。

「おやっさんを頼む」

ハッチを開けておやっさんのベルトをほどき、押し付ける。

補給は主にエネルギーだが、追加で用意した推進器の推進剤なんかも補給される。

ギアは推進剤無くても飛べるんだが、スピーダーには積むことで速度を特化させたものになっている。

他のバックパックだともうちょい時間かかってただろうし、そうなったらベヒモスが暴れ倒して被害も拡大してただろうから結果オーライだ。

「よし、もう十分だ。ツクヨミ改、再度出撃する。全員離れてくれ」

ケーブルを切断してもらい、外に飛び出す。

まだ見渡す限りのワイバーン、これは何匹狩れるか……データ取りにちょうどいい!