作品タイトル不明
エマージェンシー
そして帰宅となった俺達は、機体を止めていた駐車場ならぬ駐機所で互いの機体を見比べる事に。
こちらは使い古しの旧式、一方でクリスは当然のように新型のカスタム、そして意外な事……でもないかもしれんが良平も新型のカスタム機だった。
クリスは言わずもがな近接用に特化させた構成で、良平はスナイパーカスタムとも言うべきデカデカとしたライフルが目立つ。
どちらもパーソナルカラーか赤と緑に塗られていた。
……俺の乗ってるのは天然のウェザリング塗装だよ。
「意外ね。そんな旧式なんて」
「家族共用だ。そして俺専用機は無い。一般家庭じゃこれが普通だ」
「いや、そこまで使い古すのは普通じゃないと思うけど?」
良平、野暮な突っ込みはやめろ。
いいんだよ、ギアなんて戦闘用の機体なんだし多少見栄えが悪くたって使えれば。
それを通勤通学買い物に利用しているだけだ。
「そんなんでインベーダーに襲われたらどうするつもり?」
「そりゃ状況によるが、逃げ切れないとなったら死なないように応戦して、そんで軍が来るまで持ちこたえる」
「……できるの? って聞くだけ無駄ね」
なんか諦めてるけど、流石に俺もこのおんぼろで100体以上相手に持ちこたえろって言われたら時間制限付いてくるぞ。
2桁ならエネルギーが枯渇するまでどうにかできるし、周囲の被害考えなければ戦えるけどさ。
後は誰かの助けがあればもっと時間稼げるかな。
「まぁ今日はグリーンだ、そんなことあるわけ……」
突如鳴り響く警報、続けざまにスピーカーから「インベーダー警報発令。閣員直ちに機体か避難区域にて待機せよ」との放送があった。
……あったわ畜生。
「くそっ、凛! 乗れ!」
「え、乗れって言っても……」
「俺が操縦する! サブシートで身体を固定! エチケット袋は常に口元! ヘルメット着用を忘れるな! 急げ!」
「わ、わかった!」
「クリスは俺と前線に! 良平は狙撃可能な場所を発見次第周辺確認! 出来る限り逃げ場がある所をポイントにしろ! こっちは気にせず撃てるだけ撃て!」
「了解!」
俺の指示に2人は機体に乗り込んでいく。
俺もワイヤーで登っていく凜を追いかけるように、機体をよじ登る。
いざという時は生身で機体に乗り込めるようにしておくのが鉄則だからな。
うつぶせになってたらどうにもならんけど。
「システム立ち上げ……くそっ、このポンコツどんだけ時間かけるんだ!」
モニターを殴りたくなる衝動を抑えてデバイスをセット、そしてサブシートで身体を固定した凛に視線を向けると青い顔で小刻みに震えていた。
「凛……凛!」
「ひゃ、ひゃい!」
「ナビゲーションを頼む。それと今のインベーダー警報についての情報収取」
「ひゃい! え、えと……学園周辺に、うそ……」
「信じられないような情報でも随時くれ!」
「う、うん! えと、学園北東に1000体を超えるインベーダー出現、学園が迎撃態勢取っているけど軍の到着まで10分はかかるって……」
まじかよ、カップラーメン作って食って片付けるだけの余裕あるじゃねえか……。
「警報カラーは……レッドに格上げ!? グリーンからレッドとか聞いたことないよ!」
「俺もだよ、他には」
「あ、えっと……学園側が教官とSクラス全員、それから常駐兵が出撃するって。ギア持ちは各自応戦、あるいは避難せよって書かれてる……どうしよう」
「応戦一択! こいつの脚じゃ逃げるに逃げられねえ!」
ようやく動いたシステムからセンサーを起動、インベーダーを小型突撃種と認定。
あいつらは群れを成して突撃するタイプの、ようするに小魚の大群みたいなもんだ。
スピード特化だが一撃は弱く、古いギアの装甲でも受け止められる。
ただしそれは1体のみの場合で、実際1000体も襲ってきたらその突撃だけで機体が木端微塵になるわ。
あとは残った残骸くわれて増えるだろうなというのがありありとわかる。
「どうするの? 常駐兵の指揮下に入る?」
「いや、それは平均した機体があってこそできるものだ。各自応戦か避難ってのは兵の混乱を避けるための措置だから共闘は無理だ。だからクリス達と協力して応戦だ!」
「わ、私は何かできる事あるかな」
「ひとつ、落ち着いてナビゲーション。ふたつ、どんな時も慌てず。みっつ、一番重要な事だが……」
「う、うん!」
「舌噛むなよ!」
オートバランサー、オートジャイロ全カット、出力リミッター解除、エネルギーは優先的にスラスターへ。
システム設定完了、出撃する!