軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

人質に取られました

「神父様……? それにシルファさんたちまで……一体何が……?」

突然の事態に固まるイーシャ。

それは俺たちもだ。空白の一瞬、その隙を突いたのは神父に取り憑いた 神父(レイス) だった。

神父の身体が跳躍し、イーシャを羽交い絞めにする。

「くはははははっ! 形勢逆転だな人間ども! 俺の正体を見破り、しかも闇の外套まで打ち破るとは驚いたがそれもここまでだ! 俺に近づくなよ!? この女がどうなっても構わないというなら話は別だがなっ!」

「し、神父様っ!? 一体何をなさるのですっ!?」

「うるさい! 貴様も静かにしろ!」

悶えるイーシャに 神父(レイス) が怒鳴り声を上げる。

「イーシャ! 神父は魔物に取り憑かれてます!」

「暴れたら危ないよ! 大人しくしてて!」

「ッ!?」

ビクン、と肩を震わせるイーシャ。

顔は青ざめ、目には涙がじわりとにじんでいる。

「ああっ! イーシャたんがあんなに涙を流して……ロイド様! 早く助けましょう! 今すぐ! さぁすぐ!」

「待て待て、いくらなんでもこの距離だと敵の方が速ぇ。攻撃の拍子にうっかり女を刺しちまうかもしれねぇからな。この状況で動くのはリスクが高いぜ」

「くっ……た、確かに……!」

慌てるジリアンをグリモが制する。

確かにこの状況で動くのは危険だ。

とはいえこのまま睨み合っていても埒が明かない。

……だったらアレを使うか。

俺が指先をぴくんと動かすと、 神父(レイス) が声を荒らげる。

「おい! そこのガキ! 動くのはもちろんだが、術式の起動も許さねぇ! 妙な事をしたと感じた時点で女は殺すぞ!」

「しないよ。何もしない」

――だってもう、終わったからな。

途端、地面から勢いよく石がせり上がり、二人の身体が宙に浮かせる。

土系統魔術『震牙』。 神父(レイス) は何をされたかもわからず、イーシャを手放した。

「な、なにぃーーーっ!?」

「きゃあああああっ!?」

飛んできたイーシャを受け止める。

よし、何とか助けられたな。

「大丈夫だった? イーシャ」

「は、はい……ありがとう、ございます……!」

ギュッと俺にしがみつくイーシャ。

流石にちょっと重い。

「なるほどな。魔術師というのは基本的に手で魔術を放つ。普通の相手はどうしてもそこに注目してしまうだろう。だから指先を動かし、注意を引いた瞬間に足のつま先から術式を起動したんだな。手元から最も離れたつま先から一瞬、しかも極小の術式展開で放たれた魔術。慌てていた奴が気づかなかったのも無理はねぇぜ」

「うおおおおお! イーシャたんがこんな近くに! 柔らかな感触とぬくもり! 生きててよかった! ハァ! ハァ!」

グリモとジリエルがブツブツ言っている。

それよりまた人質を取られないようにしないとな。

「お、おのれ……だがまた他の人間に乗り移れば……ぐはっ!? なんだこれは!?」

「結界だよ。逃げられたら面倒だしね」

イーシャから離した瞬間、俺は既に結界で神父の身体を封じている。

「馬鹿な……馬鹿なぁぁぁぁっ!」

神父(レイス) は結界を何度も叩くが、破壊する程の力はないようだ。

さて、ようやく尋問の時間である。

神聖魔術だけでなく、他の魔術の効き具合も見てみたいよな。

結局あまり試せなかったし。

「く……」

ふと、 神父(レイス) が不敵な笑みを浮かべる。

「くはははははっ! 参ったよ。大した強さだ。……だがいいのか? 憑依した俺への攻撃は神父へのダメージにもなる! 俺が死ねばこいつも死ぬ。お前が殺したことになるのだ! それでも俺を攻撃出来るか!?」

むっ、言われてみれば確かにだ。

神聖魔術は人体には影響がないはずなのに、神父の身体からはダメージを受けた証――すなわち白い煙が立ち上っている。

「くっ、なんと卑劣な……!」

「これじゃ手が出せない……!」

歯噛みするシルファとレンを見て、 神父(レイス) は勝ち誇ったように高笑いをする。

「ふははははは! さぁどうするよ!? 俺を殺すかぁ!? 構わないぜ? こいつの身体がどうなってもいいなら話は別だがな! はーっはっはっは!」

が、俺にとっては関係ない話だ。

殺さない程度に痛めつける手段はいくらでもあるからな。

治癒魔術もあるし、全く問題にはならない。

俺が全く動じずに歩み寄るのを見て、 神父(レイス) は顔色を変えた。

「お、おい近づくな。こいつがどうなってもいいのか!?」

「ふっ、神父さんの身体を傷つけず魔物を倒す方法はあるよ。それに気付くとはやるね、ロイド」

いつの間にか俺の横にいたタオが、ぱちんとウインクをする。

「陰と陽、二つの反発し合う『気』を挟み込むようにして流せば、体内で中和され人体への影響は最小限にしつつ中の魔物を倒せる……ロイドはそれをやろうとしたあるな。アタシが陽の『気』を流すから、ロイドは反対側から陰の『気』を流すね。アタシが合わせるから、思いっきりやっていいよ」

なるほど、そんな方法もあるのか。

そんなつもりはなかったのだが、それはそれで面白そうだ。

よし、やってみよう。

「お、おいやめろ馬鹿! 手を離せ!」

「観念するよ悪霊。……ロイド!」

「うん、わかったよ」

俺とタオが神父の右手と左手をそれぞれ取り、『気』を練り込んでいく。

下水道で一度試したしな。たぶんこんな感じだろう。

「ふっ!」

練り込んだ陰の『気』を手のひらに集め、流し込む。

同時にタオも陽の『気』を流し込んだ。

「っぐ!? ぎゃああああああっ!?」

神父の口から何か、白いモヤのようなものが出てくる。

あれがレイスの本体のようだな。

すかさずその箇所だけ結界を展開する。

「よし、捕獲完了」

暴れるレイスだが、無駄な足掻きだ。

普通の魔物に破られる程、俺の結界は甘くない。

「神父さんは……ん、問題なさそうね!」

神父の首元に手を当て、脈を確認するタオ。

どうやら成功したようだ。見様見真似だが、とりあえず上手くいってよかったといったところか。

「ふむ、やるねロイド、以前教えた『気』の使い方、順調に覚えていってるみたいある。この成長速度、毎日功夫を積んでる証よ……ん? でも陰と陽の『気』についてはまだ教えてない気がするんだけど……まぁ教えずに出来るはずもないし、多分アタシが忘れてるだけね」

タオがブツブツ言ってるが、それより神父は目を覚まさないのだろうか。

魔物に憑依された感じってどんなのか聞いてみたいよな。

俺はワクワクしながら神父に気つけを施すのだった。