軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

下水道へもぐります

痕跡を辿り下水道を進むことしばし、突然巨大な広場に出た。

恐らく街の中心部の地下なのだろう。

あちこちに巨大な穴が開いており、水路の合流地点になっているようだ。

「ここなら隠れる場所が沢山ありそうだね」

「あぁ、何か潜んでいる気配がする」

何かが通った痕跡が沢山残っている。

恐らくここを根城としているのだろう。

「炙り出してみるか」

浄化系統神聖魔術『陽光』。

光を放つ魔力球が頭上へとゆっくり登っていく。

これは頭上に巨大な光源を浮かべる神聖魔術だ。

暗闇で灯りをつけると敵から攻撃の対象を受けやすいのだが、『陽光』は攻撃も兼ねているのでそれをある程度避けやすい。

まるで真昼の太陽に照らされたかのように、暗闇が晴れていく。

「チューーーッ!?」

辺りに隠れていたネズミたちが逃げていくが、逃げ切れずパタパタと倒れては蒸発していく。

「この光、神聖魔術でしょうか。そういえば先日教会へ行っていましたね。もう教えてもらったとは、流石ですロイド様」

「すごいよロイド! 下水道の汚れまで消えていってる!」

固まってこびりついた泥や汚れも砂のように崩れていく。

神聖魔術ってもしかしてお掃除に便利なんじゃないだろうか。

「なぁジルエル、ネズミや汚泥は魔物じゃないだろ? 何であんなふうに消滅したんだ?」

「『陽光』は聖なる光にて不浄を清める効果があります。不浄のイメージであるネズミや汚泥を清める効果が出たのでしょう。……とはいえこの効果範囲と威力は規格外と言わざるを得ませんが。流石はロイド様、圧巻の魔力量でございます」

「ですがこれだけ広範囲を常時攻撃してたら、魔物どもも近寄って来れないですぜ」

確かにグリモの言う通りだよな。

どうしたものかと考えていると、シロが俺の前に飛び出してきた。

「オンッ!」

「ふむふむ、ほうほう……ロイド様、シロの奴が魔物を見つけてくるって言ってやすぜ」

「へぇ、じゃあシロ、頼んでもいいか?」

「オンオンッ!」

シロは誇らしげに鳴くと、すごい勢いで走り始めた。

トンネルに飛び込むシロを待つことしばし、遠くから何か音が聞こえてくる。

シロの入ったトンネルから出てきたのは大量のネズミだった。

「オンッ! オンオンオンッ!」

どうやらシロが追いかけ回してきたようだ。

飛び出してきた大量のネズミに次々と『陽光』の光が浴びせられる。

「チューーーッ!?」

即座に蒸発していくネズミたち。

効果は抜群だ。雪崩のように飛び出してきたネズミたちはあっという間に消滅しいなくなってしまった。

「キャウン!?」

せっかく集めたネズミがあっという間に消滅し、シロはショックを受けているようだ。

「気にするな、シロ。次はもっと大物を頼むぞ」

「オンッ!」

だが、俺が慰めるとすぐに気を取り直し、またトンネルの中へ飛び込んでいく。

うーむ、『陽光』は攻撃範囲が広すぎるのが玉に瑕だな。まぁ下水掃除だとでも割り切っておくか。

「ロイド様、また来ましたぜ!」

今度はネズミの群れに交じり、粘体型の魔物であるスライムが何匹もいる。

シロの奴、ちゃんと今度は魔物を連れてきたようだな。

グールはいないようだが、とりあえず実験はできそうだ。

まずは光を浴びたネズミの群れが消滅、次にスライムは動きを止めた。

「ぴぎっ!?」

どうやら光を嫌って近づけないらしい。

俺に背を向け、シロの方へと向かっていく。

「オンッ!」

シロが鋭い爪でひっかくが、スライムは引き裂かれながらも構わず逃げていく。

スライムは魔物の中でもかなりの再生力を持っており、少々の攻撃ではあっという間に再生してしまうのだ。

「ロイド、スライムが逃げていくよ」

「……仕方ない、逃げ道を塞ぐとするか」

火系統魔術『炎獄結界』。

スライムを囲むように炎の壁が生まれた。

「ぴぎー! ぴぎー!」

叫び声を上げるスライムたち。

逃げることも叶わず、炎は徐々に狭まっていく。

よし、『陽光』を当てるチャンスだ。

浮かべた魔力球を近づけていくと、光に照らされたスライムたちは力尽きたようにぐったりし始めた。

再生しているようだがそのたびに光はその身を焼いていく。

スライムはすぐに動かなくなり、そのまま煙を上げて消滅していった。

「なるほど、『陽光』は魔物を近づけない神聖魔術らしいが、それでも問題なく魔物は倒せるようだな。これだけ広範囲に、しかも味方に当てずに攻撃できる魔術は貴重だぞ」

広範囲魔術はどうしても味方を巻き込んでしまうからな。

だが『陽光』なら味方にはダメージがないし、広範囲を常時攻撃してくれているので不意打ちにも強い。

少し目立つのが玉に瑕だが、かなり便利な魔術なのは間違いないだろう。

「『陽光』は本来攻撃力は殆どないはず。それを逆に利用して、まるで弱火でじっくり炙るようにして使うとは……何という悪魔じみた使い方! ロイド様、やはり恐ろしい方だ……!」

「へっ、ぞっとしねぇ殺し方だぜ。スライム共には同情すらぁ」

ジリエルとグリモがブツブツ言っている。

何かおかしな使い方をしているのだろうか。

「ロイド様」

ふと、シルファが真剣な面持ちでまっすぐ前を見る。

視線の先はトンネルの奥、漆黒の闇の中。

だがそこから漂ってくる気配は今まで俺たちが追ってきたものだ。

コツン、と高い音がして人影が出てくる。

死人のような青い顔、ただれた皮膚、真っ赤な目、鋭い牙。

――すなわち、グールである。

「ウ、ウウ……」

唸り声を上げながら鋭い牙を剥くと、グールは俺たちを睨みつけてきた。

どうやら本命の登場のようだな。