軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

グール狩りに向かいます

冒険者ギルドを出た俺たちは、グールの出現場所で一番近いデーン大橋へ向かっていた。

「それにしてもこの街に魔物が紛れ込んでいるなんて、信じられないよ……」

「魔物というのは案外街の中に潜んでいるものです。レンも貧民街の生まれなら、ネズミなどの小動物系の魔物くらい見たことあるのではないですか? この辺りだとスライムやデカネズミなどがそうですが」

「そりゃあるけど……ってデカネズミって魔物だったの!? 嘘ぉ……ボクそれ食べてたんだけど……」

シルファの言葉にレンはへこんでいる。

そういえばレンは食料に困ってネズミとか捕まえて食べてたんだっけ。

魔物はダンジョンで生まれて成長につれて各地に散らばっていくのだが、小動物系の弱い魔物は街などへ入り込み生活しているものもいるらしい。

駆け出しの冒険者などは下水道のネズミやスライム退治から始まるものだ、と受付嬢が言っていた気がする。

「とはいえ、グールのような不死属性の魔物が街へ出没するというのは珍しい事です。奴らは下位の魔物と比べて戦闘力がかなり高い。速やかに倒さなければならないでしょう」

「デーン大橋の近くには沢山の人が住んでいる……みんなの安全のために頑張ろうね、ロイドっ!」

「オンッ!」

元気よく吠えるシロ。

貴重な実験材料だからな。言われるまでもなく一匹たりとも逃がすつもりはない。

それから歩くことしばし、目的地であるデーン大橋へと辿り着く。

街を縦断するように流れる大河、その中心に掛かったデーン大橋は物と人が行き交う交通の要である。

橋の上を馬車や人々がせわしなく行き交っている。

「うーん……何かが起きている感じはないね。普通の雑踏に見えるよ」

「ですが普段のこの時間からすると、かなり人通りが少なく感じられます。それにどこか空気が淀んでいるような……」

「ウウウ……」

シロも唸り声を上げて同意する。

ん、何か妙な気配を感じるな。

魔力集中にて辺りを注視してみると、人間とは違う何者かが通ったような痕跡を見つけた。

そしてそれは河川敷の方へ続いている。

「とりあえず降りてみるか」

土手から降りて痕跡を辿っていくと、橋の真下へたどり着いた。

「ロイド様、あれを」

「あぁ、下水道だな」

橋の下にポッカリと開いた巨大なトンネル。

ここは街に張り巡らされた水路の行きつく先、巨大な排水溝である。

中は街中の下水道から水が流れ込んでおり、魔物が存在できるほど広い空間もある。

実際痕跡も奥へと続いているし、ここがグールの住処に間違いなさそうだ。

「どうやらこの中にいそうだな」

「わかった、着替えるねっ!」

レンはそう言うと、瞬く間にメイド服を脱ぎ捨てて薄生地の黒装束になる。

暗殺者ギルドにいた際に着ていた動きやすそうな服だ。

シロもやる気満々といった顔で尻尾をぶんぶん振っている。

「ちょっと待てレン、その格好のまま下水道に入ると服が汚れてしまうだろう」

「汚れてもいいような服を着てきたんだけど」

「それでも出来るだけ汚れない方がいい。シルファとシロもこっちに来て」

俺が念じると、レンとシルファ、シロの身体を淡い光が包み込む。

風系統魔術『微風結界』。

身体の周囲1センチほどを風の結界で覆う魔術で、これを張っていれば衣服や素肌を汚さずに作業できるのだ。

こんな汚いところに入ったら病気になるかもしれないからな。予防は大事だ。

「わ、何これ!? 身体の周りに空気の膜みたいなのが出来たよっ!?」

「密閉された空気の層が何枚も重なっているので泥水とかも入らない。それに踏ん張りも利くし、問題なく動けるはずだ」

「これは素晴らしい……なるほど、ロイド様が外出なされた際にやけに服を汚さないのはこういった魔術を使っているからなのですね」

感心するように頷くシルファ。

ちなみにこれは俺が普段から幾つも自動展開している結界の一つである。

「ただ防御目的ではないので、ダメージを受けると破裂するので一応注意してくれ。もちろんそれとは別の魔力障壁を展開するけど、不用意に尖ったモノなんかは触れないように」

「うん、わかったよ!」

「了解いたしました」

「じゃ、行こうか」

「オンッ!」

俺はレンとシルファ、シロを従え、排水溝へと入っていく。

魔力光を浮かべて辺りを照らしながら汚水の流れる用水路の脇を歩いていると、ネズミや虫が俺たちを避けて逃げていく。

排水溝の中は汚物とよどんだ空気でひどい悪臭がするはずなのだが、『微風結界』のおかげで新鮮な空気が吸えていた。

「二人共、大丈夫か?」

「えぇ、ロイド様のおかげです」

「うんっ、全然平気だよ」

そう言って頷くシルファとレン。

一応気を使って聞いてみたが、顔色も悪くないしこれなら問題なく進めそうだな。

シロも平気な顔で先頭を歩いている。おーい、あんまり先に行くなよな。

「これがロイド様の『微風結界』……何という快適さでしょう。下水道がまるで爽やかな高原のようではありませんか。私が代にパーティを組んだ者たちの『微風結界』は空気の清浄能力も今一つな上にすぐに割れてしまい、しょっちゅうかけ直さねばならないという使い勝手の悪いものでした。戦闘に直接関係がないからと修行を怠っていたのでしょうね。神は細部に宿る、このような小さな魔術一つとってもロイド様の魔術師としてのレベルの高さがうかがい知れるというもの……流石ですロイド様」

「こんな魔術が使えるなんてやっぱりロイドはすごいや。よぉし、ボクもいいところを見せるぞ! そしてロイドに褒めてもらうんだ! ……えへへ」

二人は何やらブツブツ言いながら、ついてきている。

ボーっとしているが、大丈夫だろうか

まぁ魔物が出てきても、シロが吠えて教えてくれるし問題ないか。

俺は下水道を奥へ奥へと進んでいくのだった。