軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

地上へ戻ってきました

「わ! お帰りロイド!」

いきなり現れた俺に驚くレン。

レンの魔力を目印に空間転移にて戻ってきたのだ。

長い時間行動を共にした者であれば辿るのは容易である。

「もう演奏会は終わったのか」

「うん、だからボク一人ここで待ってたんだ」

とりあえず誰もいないようなので、魔力遮断を解く。

「それにしてもいきなりいなくなるからびっくりしたよ。どこ行ってたの?」

「ちょっとな。サリアたちはどこへ行った?」

「片づけをしているみたい。そのうち戻ってくるって言ってたけど……」

「何っ!? サリアたんと会えるのかっ!?」

いきなりジリエルが声を上げようとするのを、拳を握って黙らせる。

「あれ? 何か聞こえた?」

「さて、何も聞こえなかったが」

「……むぅ、空耳かな?」

危ない危ない、咄嗟に『音声遮断』を使って誤魔化せたがいきなり喋り出すとは思わなかった。

注意するのを忘れていたな。

「……ジリエル、俺はちょっと魔術好きの普通の少年で通っている。当然、天使を使い魔にしているなんて知られるわけにはいかない。不用意な言動は避けてくれよな」

「……! ……!」

音声を遮断しているので何を言ってるか聞こえないが、ちゃんと理解しているのだろうか。

「ぎひひ、ロイド様、自分がこの新入りに色々と教えてやりますぜ。なーに、魔界にいた頃は面倒見の良さから新人教育を一任されてたほどでしてね。この天使を一人前の使い魔にしてやりやすよ」

「頼む」

「……! ……! ……!」

何か抗議のようなものも聞こえるが、気にしなくてもいいか。あとはグリモに任せるとしよう。

「お待たせしました。ロイド君、レンちゃん、シロちゃん」

「早く帰ろう」

そうこうしていると、帰り支度を終えたイーシャとサリアとが現れた。

途端、ジリエルのテンションが上がったのかモゴモゴ動きだすが放置だ。

「二人ともお疲れ、すごくいい演奏だったよ」

「そう? 普通だけど」

「ふふっ、素直じゃないですねサリアは。こういう時は素直にお礼を言っておけばいいんですよ。ありがとうございますロイド君。嬉しいです」

「はいはい……ありがとロイド」

眩しく微笑むイーシャと、照れくさそうに微笑むサリア。

それを見てジリエルのテンションが最高潮に達したようだ。

ビクンビクンと痙攣している。気持ち悪いぞジリエル。

「? どうかしたのですか?」

「なんでもないよ。あははは……」

教会を出ると日が暮れており、サリアと共に城へ戻った。

「今日はありがとうサリア」

「ん、またね」

サリアと別れを告げ自室へ戻ると、シルファが出迎えた。

「おかえりなさいませロイド様」

「ただいまシルファ」

「レンもお疲れ様です。あとで報告をして下さいね。さ、食事の準備をしましょうか」

「わかりました。……それでは失礼します、ご主人様」

レンは俺に丁寧に会釈をすると、シルファと共に部屋を出て行った。

ふぅ、色々あったが収穫はあった。

「さーて、神聖魔術とやらを試してみるか!」

帰る途中も実験したくてウズウズしてたしな。

ジリアンの周囲の展開していた空気の壁を解いてやる。

「落ち着いたか? ジリアン」

「はっ、取り乱して申し訳ありませんでしたロイド様。御用があれば何なりとお申し付けくださいませ」

えっ、何その豹変ぶり。逆に怖いんだけど。

「すごいじゃないかグリモ、よくここまで言い聞かせたな」

「へへ、任せてくだせぇ。……といいたいところですが、実はこいつ、姉君とロイド様が仲良く話しているのを見て、いきなり従順になりやしてね。よくわからねぇ奴ですよ」

どうやらグリモにもよくわからないようだ。

「遅ればせながら、ようやくロイド様のすばらしさに気づいたのですよ。ロイド様こそ、私が忠義を示すにふさわしい主! 神聖魔術でしたら私と契約した事で既に問題なく使えるはずです。ぜひお試しくださいませ」

「お、おう……」

なんだかわからんが、従順になってくれたのはいい事だ。

特に気にしなくていいか。

「ふふふ、まさかロイドがイーシャたんやサリアたんと知り合いとはな。その上メイドのレンたんとシルファたんも可愛い! 推せる! この身体にいれば美少女とお近づきになれる機会はかなり多いと見た! 握手は当然として、ハグなんかもあり得る……! ぬふふふふ、素晴らしい! 美少女と触れ合う為ならば、忠義なんかいくらでも尽くしてやるさ!」

不気味な笑い声を上げるジリエルはおいといて、早速神聖魔術の実験に入る。

魔術というのは基本、魔術書を読む事で使用可能となるのだが、読み込みを続け理解を深めれば更なる高みに至れる。

たとえば一番簡単な火系統魔術『火球』だがこれだけでも初級から上級までの魔術書が何冊もある。

理解を深める事で『火球』のレベルが上がっていくのだ。

もちろん更に上位の魔術は、もっと多くの関連魔術書がある。

だが神聖魔術の本なんてないし、使えると言われても術式やらなんやらがわからないんだからどうしようもないんだが。

「神聖魔術の使用条件は我々天使の手で魂に術式を刻む事、そして歌などで以て我々天使とパスを通す事。術式は既に刻んでいるし、私がここにいればパスも通っております。さぁロイド様、自身の魂に強く問いかけて下さい。さすれば自ずと神聖魔術の使い方が見えてくるはずです」

「問いかける、ねぇ」

半信半疑で意識を集中してみると、頭の中に大量の魔術文字が浮かんでくる。

これは……神聖魔術の術式か。

神聖魔術の使い方が身体で理解出来る。

うむぅ、何だか損した気分だな。

魔術書を読んでないのに読んだ事になっているようだ。

ともあれ問題なく使えるようだ。

俺はその感覚の赴くまま、術式を起動させる。

神聖魔術『光武』。

眩い光が俺の手元に集まってきて、光の剣を作り出した。

出した、が……

「お、おいおい、剣の巨大化が止まりやせんぜ!?」

光の剣はどんどん大きく、長くなっていく。

「『光武』は術者の魔力を吸えば吸うほど強化される。ロイド様の魔力が並外れている結果だ。素晴らしい」

「言ってる場合か! このままだと部屋を破壊しちまいますぜ!」

グリモの言う通り、このままじゃマズい。

そう感じた俺は即座に術式を書き換え始める。

光の剣に制限術式を組み込み、これ以上大きくなるのを抑える。

「と、止まった……?」

「うん、危うくシルファに怒られる所だった」

壁へ到達する直前で、光の剣は伸び止まる。

それにしても随分立派な剣だな。

刃の部分が異常にデカいし、柄の部分もやたらトゲトゲしている

ジリエルが使っていたのはもっとシンプルだった気がするんだが。

「おお……なんという神々しさ、大天使様の八翼を思わせる。『光武』は術者の力ある形を現す。これがロイド様の剣か……! 素晴らしい!」

「なんつー禍々しい形だ。まるで暗黒竜の顎みたいじゃねぇか。こいつの魔力はやっぱり底が知れねぇぜ……!」

二人は何やらブツブツ言ってるが、とりあえず部屋が壊れなくて良かったと言ったところかな。