軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

教会に向かいます

話が付いたところで翌日、俺はサリアの元へ向かうことにした。

なお俺の横にはレンとシロが付いてきている。

「ロイドのお姉さんに会うの、すごく楽しみ」

「オンッ!」

シロはいつも通りとして、教会へ行く事をシルファに告げたところ、代わりにレンが付いてくることになったのだ。

シルファも意外と忙しいからな。

俺としても一度力を見せているレンなら気楽である。

「しかしそんなに楽しみにしなくてもいいだろ。もう俺の兄姉には何人かには会ったじゃないか。アルベルト兄さんとか」

「うん、あのすごくカッコいい人だよね」

第二王子、アルベルト=ディ=サルーム。

外見、性格ともに爽やかなイケメンで、色々と俺の面倒を見てくれている人だ。

そういえばこの辺りがアルベルトの部屋だったな――なんて考えていた時である。

「おや、もしかして僕の話をしていたかい?」

「わっ!?」

いきなり背後から声をかけられ、思わず声を上げてしまう。

振り返るとそこにいたのは件の人物、アルベルトだった。

アルベルトは驚く俺たちを見て悪戯っぽく笑う。

「やぁロイド、それにレンも」

「……驚かさないでくださいよアルベルト兄さん」

「こ、こんにちは!」

慌てて頭を下げるレンに、アルベルトは笑顔を返す。

「はっはっは、そう畏まらないでくれ。ちょっと姿が見えたから声をかけただけだよ」

だからといっていきなり声をかけられると困るんだが。

一応王位継承候補なんだから、その自覚を持って欲しいものである。

「ところで二人してどこへ行くんだい?」

「サリア姉さんの所です。教会へ一緒に行くんですよ」

「教会だと!?」

いきなり大きな声を上げるアルベルト。

だから驚かせないでくれよ。

「ふむ……読めたぞロイドめ、教会へ行く理由は人脈作りの為だな。どのような形にしろ、王となるには出来るだけ多くの民の支持を得ねばならない。教会は多くの信徒を抱えているし、今から個人的な繋がりを得ておくのは悪い手ではない……ふっ、王への道など興味がないと言っておきながら、ちゃんと考えているようじゃないか。それでこそ僕の右腕……いや、うかうかしていると僕が右腕にされてしまうかもな」

かと思えば何やらブツブツと独り言を言い始める。

もう行っていいのかな。いいだろう。

「えーと、じゃあ急いでいるので……」

「ん、あぁ。気をつけて行っておいで。しっかり励んでくるんだよ!」

そう言って笑顔で送り出される。

何を励めというのやら。

アルベルトは基本いい人なんだが、たまによくわからない時があるんだよな。

待ち合わせ場所に行くと、サリアは既に身支度を終えて待っていた。

「やっと来たわね」

「お待たせ。サリア姉さん」

「オンッ!」

「あら可愛らしいわんこ」

ひょいとシロを抱き上げるサリア。

犬が好きなのだろうか、ちょっと嬉しそうだ。

「は、はじめまして。サリア様、少し前にロイド様の従者となりました、レンと申します。以後お見知り置きを」

ぺこりと頭を下げるレンを、サリアは一瞥して言う。

「……あなた、得意な楽器は?」

「へ? い、いえ私は特に楽器は……」

「そう」

一瞬にしてサリアはレンに興味を失ったようだ。

シロとの激しい落差にレンはポカンとした顔をしている。

ていうか何故楽器? 俺も得意楽器なんかないぞ。

「ロイドはいいのよ。そういう枠じゃないから。さ、行きましょう」

無表情のままそう言って、行こうとするサリア。

いや、どういう枠だよ。

レンと顔を見合わせながらサリアと共に教会へ向かうのだった。

教会は街の中央、城から徒歩で一時間ほど行ったところにある。

のんびり歩いていると、冒険者ギルドが見えてきた。

「あ、やべ」

しまったな。今更だが道を変えて行けばよかった。

何せ俺は今、以前指名手配されていたレンを連れている。

ギルドには俺が面倒を見るという条件で話はつけているが、他の冒険者たちがどう出るかまでは不明だ。

いざとなったら何とでもするつもりだが、面倒は避けたいところだな。

そんな事を考えていると、冒険者ギルドの扉が開いた。

扉から出てきた人相の悪い男二人と目が合う。……嫌な予感。

「ちょっと待ちなよそこのお嬢さん方」

レンがぴくんと肩を震わせる。

はぁ、やっぱりか。説明が面倒臭いんだよなぁ。

俺は歩み寄ってくる二人の前に立ちふさがる。

「あー、悪いがレンは……」

「へへへ、中々可愛いメイドちゃんじゃねーの」

「……は?」

思わず間の抜けた声が出てしまう。何言ってんだこいつ。

戸惑う俺に男たちは言葉を続ける。

「そっちの不愛想な姉ちゃんも、よく見りゃ悪くねぇ顔してるぜ」

「よかったら俺たちと遊びにいかねー? こんなガキの世話なんかほっといてよぉ」

……なんだ、ただ絡みに来ただけのチンピラか。

下卑た笑いを浮かべながら、俺を押し退けようと肩を掴む男。

瞬間――俺の背後で殺気が膨らむ。

「レン、やめとけ」

俺は無表情のまま短剣を抜こうとするレンを諫める。

「でもロイドに危害を加えようとする者が現れた場合、殺害も視野に入れた上で何をしてもいいってシルファが……」

「だからって殺しはダメだろ」

全く物騒な事である。

大体こんな人通りでやり合えば、大事になるじゃないか。

「地味にやるならいいけどな。とにかく目立つのは良くない」

「はぁーい」

「何をごちゃごちゃと――」

言いかけた男たちに向け、風系統魔術『風切』を発動させる。

風の刃が男たちの腰元を吹き抜けた後、すとん、とズボンが落ちて下半身が露わになる。

「な、何ぃっ!?」

慌ててズボンを上げようとするが、ベルトを切っているのでそれは無理だ。

「ねぇお兄さんたち、そんな恰好で女の子を誘うつもり?」

「ぐ……くそっ! 憶えてやがれ!」

男たちは両手でズボンを持ち上げながら、安い捨て台詞を吐いて逃げるように去っていった。

やれやれ。とりあえず追い払えたか。

「あはは、見事なものあるな!」

安堵の息を吐く俺に、ぱちぱちと拍手が送られる。

拍手の主は中華風の服を着た少女、タオであった。

「ハオ! 久しぶりねロイド。レンとシロも」

笑顔で話しかけてきたタオに俺は手を振り、レンはぺこりと会釈をし、シロはオンと鳴いて答える。

タオは以前知り合った冒険者で、異国の拳法で戦う武術家である。

体内の『気』を操って戦うことで徒手空拳にも拘らず高い戦闘力を誇り、その腕前はシルファに匹敵する。

「人が悪いな。見てたなら助けてくれてもよかったのに」

「おや、助けが必要だったか?」

俺は苦笑いを浮かべ、首を横に振る。

タオはでしょう? と言って微笑を浮かべた。

「ところでロイド、そちらの人は?」

「サリアよ。ロイドの姉」

「ふむ、言われてみればロイドと雰囲気が似てるね。よろしくサリア。アタシはタオ、冒険者ある!」

「む……」

タオは無理やりサリアの手を取ると、ぶんぶんと縦に振った。

その距離の近さにサリアは少し戸惑っているようだ。

冒険者ギルドは国とは無関係の機関、それ故かこちらが王族だからと言って遠慮などはしないのである。

まぁ俺もサリアもそんなものを気にする程狭量ではないし、別に構わないけどな。

「それにしても珍しい組み合わせね。どこに行くある?」

「教会だよ。サリアの演奏会をやるんだ」

「へぇ! 楽しそうね! ついていきたいけど……うーん、アタシも用事があるよ。今依頼を受けたところね。グール退治なんだけど、ロイドもどう?」

「うっ、行きたい……でも先約があるから、また今度ってことで」

「よいよい、依頼はまだ残ってるから、機会があれば一緒に行くね。アタシも機会があれば教会に行ってみることにするよ。だから今日の所は 再見(マタネ) 」

タオはぱちんとウインクをすると、ひらひらと手を振り小走りに駆けていく。

それを見送りながらサリアはぽつりとつぶやく。

「ロイド、さっきはありがとう。助けてくれて」

「ん? あぁ、大したことはしてないけどね」

「いいえ、大したものだわ。万が一の場合は姉として私が何とかしようと思ったけど……」

サリアは自分の手持ち鞄を振り上げる。

その鞄、やたら鋭利な角が付いているんですけど。

下手なところに当たると死にそうなんですけど。

物騒なんですけど。

「それにしても今のは風の魔術、というやつかしら。神聖魔術とは随分違うのね」

「! サリア姉さんは神聖魔術を見たことがあるの? どんなのだった!?」

サリアの言葉に思わず食らいつく。

「私が知っているのは怪我人の治癒をしてる事だけれど、他にも色々あるみたいよ。教会には何人か使える人がいるし、通えば見る機会もあるんじゃない?」

だが興味なさそうに言うサリア。

むぅ、サリアはあまり魔術に興味がないのだろう。これ以上詳しい話は聞けなさそうだ。

やはり自分で実際に見てみないとな。

だがやはり教会には神聖魔術が使える人間はいるようだし、見る機会もあるだろう。

ワクワク感に駆られながら、教会へ足を早めるのだった。