軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冒険者登録をしました

「冒険者登録でございますね。それではこちらの用紙に必要事項をに記入してください」

受付嬢から受け取った用紙にさらさらと記入していく。

名前、住所、年齢、登録職……と、その程度のものだ。

シルファは気にせず正直に書いていいと言っていた。

俺は言われた通り、そのまま記入して受付嬢に渡した。

「ふむふむ、ロイドさんはこの国の王子様なんですね。しかもかなりお若い。冒険者は危険ですし、怪我をしたり実力が乏しければ死んだりします。それに対し冒険者ギルドは安全の保証などは全くできません。特別扱いなんかももちろんできません。それでもよろしいですか?」

「うん、大丈夫」

「そうですか。よいお覚悟です」

受付嬢はにっこり笑って用紙を受け取る。

冒険者にとって、身分なんてのは何の役にも立たない。

力なき者は地を這い、力ある者は全てを得る。

完全なる実力至上主義、だからこそ修行になるとシルファは言っていた。

「さてさて書類審査はこれでオーケーですが、次はロイドさんのステータスを測定したいと思います。この水晶に手を置いていただけますか?」

そう言って、受付嬢は水晶玉をテーブルの上に置いた。

これは手をかざした相手の身体能力値を視るという魔道具だ。

前世で魔術学園に入学する際もこれを使ったっけ。

以前はどういった理屈なのかわからなかったが、今の俺ならそれがわかる。

この水晶は微弱な魔力を発しており、触れた者の身体を通る事で体内に蓄積された魔力の量、身体への影響度の高さなどを測定、独自の計算式によって演算し、ステータスとして表すというものだ。

もちろん、魔力量から見たざっくりとしたものなので、目安程度の値でしかない。

戦闘技術や知識量なども含まれない為、言うなれば身体測定とでもいうべきものである。

「へっ、そんな貧弱な水晶一つでロイド様の魔力量は測れないでしょうよ。あまりの魔力量に演算処理が追いつかなくなって、一瞬でぶっ壊れてしまいやすぜ! せめて5つは用意しやがれってんだ」

「壊してどうする。……それに俺の魔力量が詳らかになるのもあまり良くない」

流石に水晶が壊れるなんてことはないだろうが、シルファもいるしあまり大きな数値を出して変に思われるのはマズいからな。

地味にいこう、地味に。

具体的には魔力を偽装する。

体内に流れる出る魔力を極限まで絞り、更に希薄化する。

こうすれば水晶に映る値は、本来の値よりも低くなるのだ。

……余談だが相手のステータスを読み取る魔術も存在するが、この水晶とほぼ同じような理屈なので相手の実際の強さとはあまり関係がない場合が多く、触れる必要もあるのであまり使われない。

それなりの使い手が相手なら俺みたいに偽装してくるだろうしな。

「ロイドさん?」

「あぁごめん。すぐやるよ」

俺は受付嬢に促され、水晶に手をかざす。

微弱な魔力が体内を通り抜ける感覚と共に、水晶に文字が浮かび上がってくる。

魔力値A

筋力値F

機敏値F

体力値F

頑強値F

総合値E

「――ぷっ」

後ろで見ていた男が噴き出した。

「ぎゃはははは! 総合値Eだってよ! 普通はDくらいいくもんだぜ! 俺なんてCだったしな! やっぱガキだな。しょぼすぎ――」

大笑いする男の鳩尾にタオの肘鉄が、顔面にシルファの裏拳が叩き込まれた。

男はぶっ飛び倒れ、悶絶している。

「気にすることはありません。所詮は目安。特に総合値は各数値の合計でしかありません。水晶如きにロイド様の力を測れはしませんよ」

「そうそう、アタシも最初はEだったけど、すぐに上がったね」

二人は慰めてくれたが、俺としては安堵していた。

魔力濃度を一割以下にまで薄めても魔力値がAだったのは驚いたが、その副次効果で他の数値が軒並み低く出て助かった。

シルファとの訓練で普通ならもっと高い数値が出てただろうからな。

ともあれこれなら変に思われることもないだろう。

そんなことを考えていると、受付嬢が難しい顔をしているのに気づく。

「魔力値A!? ……確かに血筋と才能に恵まれた王侯貴族の方々は高水準の数値が出やすい。ですがそれでもせいぜいBやC止まり。Aなんてのは熟練の魔術師でようやく出る数値。それを僅か十歳にして……信じられないけど、水晶は最近新しいのにしたばかりだし、故障はありえない。もしかしたらこの子、世界に数人しかいないSランク冒険者に育つ器かも……! 王族なんて根性なしで、ほぼ冷やかしみたいなものだから冷たくあしらおうと思ったけどSランク冒険者の器となれば話は別。その担当となれればお給料が違うしね。今のうちから目をかけておき、大事に大事に育て上げれば……うふっ、うふふふ……」

ブツブツ言いながら、俺を見つめる受付嬢。

一体どうしたのだろうか。

「あの、どうかしましたか?」

「あぁいえ! なんでもありません。……とりあえず登録は完了しました。ギルドカードをお渡ししますのでお受け取り下さい。規定によりEランクスタートではありますが、ロイドさんならすぐにランクアップ出来ると思いますよ。それでは早速ですが、依頼を受けて行きますか?」

「もちろん!」

「でしたらこちらの依頼などがお勧めですが」

そう言って渡された用紙には、薬草採取や荷物運びなどだった。

正直どれも魔術の実験にはならなさそうだし、戦闘もないので魔物の核も手に入らなさそうだ。

「……うーん、魔物を倒す依頼とかはないのかな? ダンジョンに潜りたいんだけど」

「そちらはもう少しランクを上げてから開けてください。ダンジョン攻略となると規定によりランクB以上でなければ受けられません……えぇそうですとも。いきなりそんな依頼をやらせて失敗して挫折でもされたらどうするっての。まずは簡単な依頼をクリアさせて、成功体験を積ませないとね。うんうん」

腕組みをして頷く受付嬢の前に、シルファがずいっと出てくる。

「実戦訓練の為の冒険者登録です。ロイド様に草むしりや運び屋などさせるわけにはいきません。元Aランクである私が代わりに依頼を受けます。それなら問題ないでしょう」

「ダメです。シルファさんはもう引退なさったでしょう」

「ではもう一度、登録いたします」

「それもダメです。再登録の際は2ランク落としたCスタートです」

「……融通が利きませんね」

「……規定ですから」

二人は火花を散らし合うように睨み合っている。

「あーあー、ん、んんっ!」

そこへタオがわざとらしく咳払いをしながら割って入ってくる。

「おやおや、丁度ここに手空きのBランク冒険者がいるみたいね。それにパーティも募集している。……ねぇロイド、アタシとパーティを組んでダンジョンに行くというのはどうね?」

そしてぱちんとウインクをするのだった。