軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

王まで何か企んでます

「ロイド=ディ=サルーム、ただいま参りました」

ある日、俺は呼ばれて玉座の間へと赴いた。

呼び出し主はサルームの王であり、我が父であるチャールズ=ディ=サルーム。

玉座に座った大柄の老人――チャールズは満面の笑みで俺を迎える。

「おお、よくぞ参ったロイドよ。久しぶりだな。三年ぶりくらいかのう」

「は、七歳の誕生日ぶりでございます」

七歳までに病気や怪我で亡くなる子供は多い為、その誕生日は特別な意味を持つのだ。

その時ばかりは忙しいチャールズも俺の為に会いに来てくれた。

まぁその時貰った言葉が「お前は歳の離れた七男だから王族争いには関係ない、気負わずに好きな事をやりなさい」というものだったのだが。

やはり国王だけあって色々と忙しいのだろう、たまに廊下を歩くのを遠目に見るくらいだ。

なのに今更俺に何の用だろう……緊張するな。

頭を下げたままの俺に、チャールズはつまらなさそうに言う。

「ふーむ、そう言えばお前は前に会った時もそうであったな。堅苦しいというか子供らしくないというか……久しぶりに会った父親に抱き着いてきてもいいのじゃぞ?」

「……お戯れを。とてもそのような真似は出来ません」

「ふむ、まぁよい。それだけ礼儀作法を学んでいる証だろうからな。これ、少し近う寄れ」

「はっ」

とりあえず機嫌は悪くなさそうだし、怒られる雰囲気ではない、か。

俺は立ち上がり、言われるがまま側に行く。

チャールズは俺の顔をじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。

「……ほう、いい顔つきになったではないか」

「ありがとうございます」

「シルファやアルベルトに聞いたぞ? 剣術に魔術にとかなり頑張っているようじゃないか」

「! い、いえ!恐縮です……!」

チャールズの言葉に俺は慌てて頭を下げた。

「何が恐縮なものか! 息子たちに剣術を叩きこんだシルファはお前の剣術の才は歴代王子で一番、国一番の剣士になる、などと太鼓判を押しておる! 城でも屈指の魔術師であるアルベルトもお前の才能に嫉妬しておったよ! 自分があの年頃だった時はまともに『火球』など飛ばせなかった、それを見事に制御しておるとな! 若き実力者であるあの二人にそこまで言わしめるとはな! 大したものだよ!」

チャールズは腕組みをしたまま、嬉しそうにウンウンと頷いている。

……うーわ、二人ともそんな事を言ってたのかよ。

俺なりに実力は隠してたつもりだったが、まだ甘かったようだ。

やはり城の中で魔術を使うのは危険だな。

あまり俺の評価が上がると王位継承に巻き込まれる可能性もありそうだし、そうなったら面倒だ。

少しは自重しなければ。でも俺の性格上、魔術の研究は止められないしなぁ……

「お前には大いに期待しておる! これからも励むのじゃぞ!」

「えーと……そう、ですね……」

返事を濁す俺を見て、チャールズは顔を曇らせる。

「……だがのう、いくらお前が優秀だからとて、今からお前を王位継承候補に加えるのは難しいのじゃ。既にアルベルトらを含む上位の王子たちにはその為の教育をさせておるからな。……お前がそう考えて頑張っておるなら心苦しい。先に言っておこうと思い、こうして呼び出したのじゃよ」

――あ、そういうことか。

つまりチャールズは俺が王位を継承権すべく頑張っていると勘違いしているのだ。

もちろん俺にそんなつもりは微塵もないので、ほっと胸を撫で下ろした。

「お気になさらないでください、父上。私は言われた通り、好きな事をしているだけです。王位継承権などに最初から興味はございません」

俺の言葉にチャールズは、目を丸くした。

そして感極まったかのように目を細める。

「――うむ、うむ、ワシの言葉に腐るでもなく、よくぞ申した! 出来た息子を持てて嬉しいぞ!」

しかもちょっと涙ぐんでいるようだ。

……本心なんだけどなぁ。

感激しているチャールズを見ながら、俺はポリポリと頬を掻いた。

「安心せい! ロイドよ、その努力が無駄になる事は決してないだろうからのう! だからその調子で邁進するのじゃぞ!」

「は、はぁ……」

「うむ、では下がって良い」

なんだかわからないが、とりあえず今までの生活は維持出来そうで安心だ。

俺は安堵の息を吐きながら、チャールズに背を向ける。

「……それにしても王位にも興味を示さず、ただひたすらに努力を積み重ねるか……齢わずか10にして大したものよ。いやはや真の王たるもの、それくらいでなくてはいかんのかもしれんな。これは王位継承候補について考え直さねばならんのかもしれぬ」

チャールズは何かブツブツ言ってるが、あまりよく聞こえない。

まぁ多分政治についてだろうな。悪いけど興味なしだ。

それより早く帰って本を読みたい。俺は足早に玉座の間を後にするのだった。