軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

湖に着きました

「ふんふんふふーん♪ ふふーん♪ ふふふーん♪」

上機嫌で鼻歌を歌いながら、俺たちの先頭を行くタオ。

行き先が同じだからと同行を申し出、アルベルトもそれを許可したのだ。

もちろんただついてくるわけではなく、魔物が出てきたら戦闘もこなしている。

戦闘力は近衛たちより二段は上といったところか。

というか以前会った時より技が冴えている気がする。

あれから修行でも積んだのだろうか、一人で魔物を半分くらいは倒している。

その強さと性格から最初は警戒していた近衛たちもタオに心を許し始めていた。

「全く、アルベルト様もあんな怪しげな少女に同行を許すなんてどうかしています。ねぇロイド様?」

「あはは……そうだね」

ただシルファはタオの事が気に入らないのか、不機嫌そうだ。

俺もタオとは目を合わさないようにしているのだが、チラチラこちらを見てくる。

……まさか俺の事、気づいてないよな。

「じー……」

いつの間にか、タオが俺の近くにまで来てじっと見つめていた。

うおっびっくりするじゃないか。

「ねぇ君、アタシたちどこかで会ったことないか?」

「さ、さぁー……わからないなぁー……」

いきなりの質問につい視線が泳いでしまう。

「むぅ、なんだか怪しいね。……でも会ってるはずがないのはアタシにもわかる。なのに何なのこの感じ……?」

ヤバイな。この視線、怪しまれている気がする。

その原因は間違いなく『気』の呼吸だ。

ついさっきまで、修行の為に『気』の呼吸をしていたからな。

呼吸の仕方がロベルトと似ているから怪しんでいるのだろう。……しくじった。

とはいえいきなりやめたら不自然だし、ここは知らぬ存ぜぬで押し通すしかない。

あの時、姿を変えていたのは不幸中の幸いだったな。

「ロイド様、森の方を見てくだせぇ。あの娘が探しているという祠、アレがそうじゃないんですかい?」

グリモの声に従い森の方へ視線を向けると、木々の隙間から古ぼけた石の建物が見えた。

ナイスだグリモ、追い払うチャンスである。

「タオ、あれが君の向かおうとしている祠じゃないのかい?」

「おおっ、まさしくあの祠よ。ありがとね! 兵士の皆さんにもお世話になったね。それではアタシはこれで失礼するよ!」

タオは慌ただしく頭を下げると、すごい速さで走っていった。

ふぅ、良かった。何とかバレる前に追い払えたか。

「ありがとな、グリモ」

「へっ、気にしないでくだせぇ。ロイド様の使い魔として当然のことをしただけっすよ……それにこの程度であんたの信頼を変えるなら安いもんだぜ。くくっ」

「ん? 何か言ったか」

「い、いいえ何も! そ、それよりあの祠、なんだか妙な感じがしますぜ」

「そうなのか?」

うーん、遠くからではよくわからないな。

だが単独行動は出来ないし、機会があれば行ってみるか。

「アルベルト様、湖が見えてきました」

先行していた近衛が声を上げる。

目を凝らせば木々の隙間から、湖面が太陽の光に反射してキラキラ光るのが見えた。

「よし、ここらで休憩するとしよう」

アルベルトの号令で俺たちは湖付近に陣を取り、しばし身体を休めることにした。

ふー、馬ってちょっと疲れるんだよな。

走ったり飛んだりした方が圧倒的に速いし楽だ。

俺が石に座って身体を休めていると、シルファがを湯気の立つティーカップを差し出してきた。

「どうぞ、ロイド様」

「ありがとう」

ふーふーと息を吹きかけて冷まし、ちびっと飲む。

若若し爽やかな香りが疲れた身体に染み渡るようだ。

「……ふぅ、シルファの淹れるお茶は相変わらず美味しいね」

「お誉めに預かり光栄です」

恭しく礼をして下がるシルファ。

近衛たちは半分はテントを設営し、もう半分は弓矢を手に夕食用の獣を狩りに赴いていた。

「隣、いいかい?」

「もちろんです」

指示を出し終えたアルベルトが俺の横に腰を下ろした。

「シルファ、僕にも紅茶をくれ」

「はっ、ただいま用意いたします」

アルベルトはシルファにそう命じると、こっそりと俺に顔を近づける。

「ロイド。中々やるじゃあないか」

「えっ!? な、何のことですか……?」

「とぼけるなよ。あのタオって子さ。お前の事が気になっていたようだったぞ」

「はあっ!? い、一体何を言い出すんですか」

アルベルトの言葉に、お茶を噴き出してしまう。

「ははは、照れなくていいとも。愛する弟が女性に好意を寄せられているのを見るのは僕は嬉しいよ」

「いやいやありえないでしょう。俺はまだ子供ですよ」

「いいや、ありえるさ。少なくともただの子供を見る目ではなかったな。もちろん今すぐどうこうというつもりはないだろうが、将来的には……って感じの目だったぞ? 気づいてないかもしれないが、最近シルファがロイドを見る目も少し変わってきているんだぜ?」

シルファやタオが俺に好意をもっているだと? ありえなさすぎるだろう。

いきなり何を言い出すんだ全く。

俺の冷たい視線を意にも介さず、アルベルトはうんうんと頷いている。

「王族たるもの、女性からそういう視線を向けられる事は少なくない。まぁ有り体に言えばモテるということだが……あまり彼女たちを甘く見るなよ? 女性が僕たちを見る目はとてもシビアだ。あまりだらしなくしていると、冷水をぶっかけられちまうぞ?」

「は、はぁ……」

すごく真面目な顔で何を言っているんだろうこの人は。

もしかしてアルベルトは女性関係でひどい目にでもあっているのだろうか。

「――アルベルト様」

「うわっ!?」

いきなり後ろから声をかけられアルベルトはびくっと肩を震わせる。

振り向くと満面の笑みを浮かべるシルファがいた。

シルファは笑顔のまま、手にしたティーポットを差し出した。

「驚かせて失礼いたしました。お茶が入りましたよ」

「あ、ありがとう……」

シルファから茶を注いでもらったアルベルトは、ティーカップをずずっとすする。

そしてぶっと吹き出しそうになり、なんとか堪えた。

熱かったのか渋かったのか、はたまた両方か。アルベルトはゲホゲホとせき込んでいる。

「アルベルト様と言えど、あまりロイド様に余計な知識を与えませぬようお願いします」

「あ、あぁ。もちろんだとも!」

「それを聞いて安心いたしました。ではごゆっくり」

シルファはにっこり笑うと、俺たちに背を向け去って行った。

「……な? 怖いだろ?」

そう言ってアルベルトは苦笑する。

いや、どう考えても自業自得だろう。