軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

まさかの再会、です

「うーん……よく寝た」

眠い目を擦りながら起き上がると皆は既に朝支度を終えていた。

「おはようございますロイド様。女王の用意した案内役とやらが来ているようですよ。さ、早く着替えましょう」

俺の服を脱がせながらシルファが言う。

そういえば先日、街を案内してくれる人を寄越すとか言ってたな。

窓の外を覗くと宿の入り口に客引きのように派手な格好をした男が佇んでいた。

手にした旗には『ようこそエルフリーデン』『観光大使』などと書かれており、服や帽子にも赤や黄色などの原色が使われ、やたらと周りの目を引いている。

「……なんとも派手だな。目立ちまくってるじゃないか」

「物珍しさに沢山人が集まってきてるね。あまり人だかりになっても困るし、早く降りてあげようよ」

俺の顔を拭きながらレンが言う。

そうだな。やることは沢山あるし、のんびりしてたら時間がもったいない。

急いで準備を終えて宿を出ると、俺に気づいた男がお待ちかねとばかりに声をかけてきた。

「やーっと出てきてくれたかい。待たせすぎだぜお客様。いやお客様は神様だっていうけどさ、あくまでもそれはこっちの心構えの問題であって、客側が好き放題やっていいって意味じゃないよねぇ。僕が平和主義者じゃなかったら抗議の一つもくれてやるところだぜ。そこんとこヨロシク」

「この無駄に長ったらしい口上は……」

黒目黒髪に中庸な体躯、普通の背丈、平凡な顔立ち。

如何にも印象が残らなさそうな風貌だが特徴的な喋りが全てを台無しにしている。それが彼、聖王だ。

神の御使いとして聖王庁のトップに君臨する存在、特に彼の使う魔曲は魔王ベアルをも封じる力を持つ曲者である。

「おや、ロイド君じゃあないか。こんなところで会うとは奇遇だねマジで」

「そういうお前こそ、どうしてここに?」

少し前、彼とは天界での事件を共に解決したわけだが、その後は聖王庁へと帰ったはずだ。

なのに何故、こんなところにいるのだろうか。

「んー、説明すると長いんだけど、かいつまんで言うと遭難かな?」

「遭難て……馬車で来たんじゃないのかよ。確か別れた時は待ってただろ?」

「そうなんだけどさ! ちょーっとサルーム観光をしてたら先に帰られちゃったんだよ! たった三日ほどなのに、ひどいよねぇ。……ま、たまには歩いて帰るのも悪くないかーってトボトボ帰ってたワケだけど、地図を見たらこの森を通って帰れば近いじゃんと気づいたのさっ! そうしたらいつの間にか迷い込んじゃったってワケ」

「阿呆ですぜ」

「馬鹿ですな」

呆れた顔で聖王を見るグリモとジリエル。

ここは迷いの森、それなりの準備がなければ入れない魔境である。

ていうか普通の森だったとしても、碌に魔術も使えない聖王が徒歩で踏破するのは無理だろう。

「いやいや、僕も無策だったわけじゃないぜ!? 魔曲を使って森の動物たちを従え、反対側に行こうとしたんだよ。……ただ彼らに森の反対側という概念が分からなかったようで、ぐるぐる森を回ることになっただけなのさっ!」

「やっぱり馬鹿ですぜ」

「やっぱり阿呆ですな」

別種族である動物たちには俺たち人間の考えは通じない。

多少の指令なら聞かせられても、あくまでも短い命令に限られるのだ。

森を突っ切って反対側に行くなんて高度な命令を聞かせるのは不可能である。……いや、動物誑しのアリーゼ姉さんならできそうだけれども。

「そんなこんなで森を彷徨い歩いていた僕は気付かぬうちにこの国へと辿り着き、エルフたちに助けられたというわけさ。いやー我ながら素晴らしい幸運だよ! これも日頃の行いのおかげかな? いやー流石は僕、最も神に近しき存在なだけはあるよねぇ! はっはっは!」

「何も自慢にもならねぇですぜ……」

「何も考えていないのでしょう……」

大笑いする聖王に冷ややかな視線を向けるグリモとジリエル。

相変わらず適当な奴だ。俺でももう少し計画的に行動するぞ。

とはいえあれから結構日が経っているはずなのに、何故帰らないのだろうか。

あれだけ親切なエルフたちなら森の外まで送り届けてくれそうだが……世話になった恩を返しているのだろうか。意外と恩に着る性格なのかもしれない。

「彼があの聖王ですか……なんというかこう、イメージが崩れますね……」

「うん、なんていうか……てきとー?」

「どいひー!」

散々な評価を下され、バタンと倒れる聖王。

そういえばシルファたちは直接会うのは初めてだっけ。

……そうだ。こいつに会ったら聞きたいことがあったんだ。

「ところで聖王、ギザルムについてだが……」

「さー行こう行こう! 観光大使の仕事だぜ。エルフの国の細かいとこまで案内してあげるから感謝してくれよなっ!」

言いかけた言葉はかき消される。

以前俺が倒した魔族、ギザルムが聖王と共にいた。

その理由を聞きたかったんだが……ま、普通に考えて聖王が使役していたんだろうな。

奴の魔曲は魔族に対して異様な力を発揮する。消滅したギザルムを甦らせることが出来ても不思議ではない。

ま、仮にまた襲ってきたとしても、今の俺なら瞬殺出来るしどうでもいいか。

……それにここにはレンがいる。辛い記憶を蘇らせてしまうかもだし、わざわざ触れる必要もないか。