軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エルフの里を目指します

「おおロイドよ、お主の方からワシに会いに来てくれるとは珍しいのう。嬉しいのう」

早速俺は計画を実行に移すべく、父王チャールズの元へと足を運んだ。

ニコニコ顔で迎えるチャールズに俺は尋ねる。

「父上、先日の健康診断の結果は如何でしたか?」

「む……ま、まぁまぁだったかのう……」

バツが悪そうに答えるチャールズ。

遠くでこっそり聞いていたがリオンに結構絞られたらしい。

年齢的なものもあるだろうが、まあl王様生活とかいかにも身体に悪そうだしな。

「実は俺もリオン兄さんのおかげで健康について考えるいい機会となりまして……父上はもちろん、兄姉にも長生きをして欲しい。そこで俺はサルーム東の森にいるという、長寿の種族に何かを学べないかと考えたのです」

「長寿……エルフ族か!」

エルフとは森に生息し、狩猟や野草採取を生業にしている種族。

ずっと森に引きこもっていることから滅多に人間と深く関わらず、その外見的特徴としては耳が長く尖らせ、美しい金色の髪を伸ばし、皆同様に整った顔立ちをしている。

その最大の特徴は種そのものが非常に長寿であることだ。

「えぇ、彼らはなんらかの長寿の秘訣を持っているに違いありません。俺が行ってその知識を学んでこようと思うのです」

「おお……! なんと優しい子じゃ……まだ子供だというのにワシらの身体を気遣ってくれるとは……素晴らしい魔術師として成長していると聞いてはいたが、心の素養も育っとるようじゃの。王たるものは民衆をまとめる為に人の心を掌握せねばならぬもの。だがロイドには既にそれが出来ておる。ふふふ、将来が楽しみで仕方ないわい」

涙を流しながらブツブツ呟くチャールズ。ふと、我に帰ったように言葉を続ける。

「じゃがエルフは滅多に人前に姿を現さぬぞ。ここサルームでも目撃例は殆どなく、集落も深い森にあることから謎が多い種族よ。会おうと思っても簡単に会えるものではあるまい? どうするつもりじゃ」

「もちろん準備はしています。実は道案内してくれる者を見つけまして。こちらです」

指をパチンと鳴らすと同時に、入り口の大扉が開く。

長い金髪を揺らし、入ってきたのは糸のように細い目をした青年。

その耳はエルフの持つ特徴の通り、すらりと伸びている。

「エルフ族のバロンです。以前街に行った際に知り合いました」

俺の紹介にバロンは膝を突いて恭しく頭を下げた。

「これはチャールズ国王、お目通り出来て光栄です。私の名はバロン、ロイド様には色々とお世話になっておりまして。このたびは案内役を仰せつかりました。以後お見知りおきを。クク……」

「なんと……まさかロイドにエルフの知り合いがおったとは驚いたぞ……おっとすまぬ。エルフの者と会うのは初めてでな。つい見入ってしまったよ」

「お気になさらず。しかし我々も普段は帽子などで耳を隠しておりますからね。しかしチャールズ国王、初見と申されましたが案外何度か出会っているかもしれませんよ?」

「なんと! そうなのか?」

「えぇ、ここサルームはとてもいい国ですからね。実はかなり昔から我々エルフは出入りしているのです。こちらで採れた森の恵みを換金し、人界の珍しい品々を買って帰っていたのですよ」

「ふむ、なるほど知らぬはワシらだけで存外昔から国交はあったという事か。幻の民族が実はすでに出会っていたとは、なんとも愉快だのう。わっはっは」

「全くでございますとも。ククク……」

可笑しそうに笑う二人。

しばらくしてチャールズは膝を打った。

「いや、色々面白い話を聞かせて貰った。バロンよ、お主が良いと言うなら是非もない。ロイドをエルフの国へ案内して欲しい」

「よろこんで」

「ロイド、お主もエルフの国にて様々なことを学んでくるとよいぞ」

「ありがとうございます。父上」

俺はチャールズに頭を下げると、玉座の間を後にするのだった。

「ご苦労だったな」

「ククッ、突然呼び出されたから何事かと思いましたよ。ロイド様」

自室に戻った俺はバロンに掛けていた術を解く。

現れたのは短い灰髪の青年、バビロンだ。レンと同じく元暗殺ギルドの一人で色々こなせる器用な奴である。

「ナイス演技バビロン。みんな元気してる?」

「あぁ、元気過ぎて困るくらいさ。レンにも会いたがっていたぞ」

レンと談笑を交わすバビロン。

彼に『模写姿』を使ってエルフの姿へと変え、昔知り合ったエルフのバロンということにしてチャールズに紹介したのだ。

流石に案内人もなしにエルフの国に行くと言っても、ダメと言われるだろうからな。上手くいって良かった。

「それにしてもロイド様、よくエルフ族についてご存じでしたね。もしや会ったことがあるのですか?」

「まぁな」

実は俺はかつてエルフの国へ行ったことがある。

その時に見た青年とバビロンを混ぜた姿が、先刻のバロンなのだ。

「あれは確か三、四年くらい前のことだったか。サルーム近くの森にエルフの国があるというのを本で見たから、ちょっと行ってきたんだよ」

「エルフの国に行った理由……ロイド様のことだから魔術関連ですよね。間違いなく……」

「ていうかこのノリ、すでに嫌な予感がしてきたんだけど……」

バビロンとレンが何故か既に引いているが、俺は構わず話を続ける。

「森は迷路のようになっていて、普通に進むと奥へは入れず決して辿り着けないようになっている。森全体が大きな魔力溜まりになっているようでな。それにより侵入者を惑わしているようだった」

強い大地の魔力は土地全体に強い歪みを生じさせる。

レンたちを苦しめたノロワレ現象や、コニーのように魔王を宿したりなど、恐らくこの森もその類だったのだろう。

「迷いの森ですな。かつての魔軍進撃でも魔人たちは迷っちまって中に入れなかったんでさ。まぁ大して旨味もなさそうだから、無視してたんですがね。ちなみにロイド様はどうやって越えたんですかい?」

「仕方ないからまっすぐ飛んで突っ切った」

「……そんなことだと思いましたけれどもね」

「結局どんなまやかしもまっすぐ突っ切れば抜けられるんですよねぇ。まぁ普通の術者には不可能なのですが」

呆れ顔になるグリモとジリエル。

俺としては調べながら正規ルートでの攻略をしようと思ったのだが、当時はそこまで魔力の制御が得意じゃなかったし、あまり長い時間城を抜け出すと怪しまれるので力任せが一番早かったのだ。

「でまぁ、エルフの国に辿り着いたはいいが入り口には衛兵たちが待ち構えててさ。いきなり襲い掛かってきたから大変だったよ。何もしてないのに敵扱いだなんて酷いよなぁ」

「いや、普通に無断で侵入したからじゃないの……?」

「しかも他種族となると問答無用で攻撃されても仕方ないのでは……」

ドン引きしているレンとバビロンに説明を続ける。

「それでもどうにか平和的に収めようと頑張ったんだが、向こうが火を使ってきてさ。避けた拍子に森に火がついて燃え広がったわけだ。折角訪れたエルフの村を焼かれて困るしな。水の魔術で消火を頑張ったんだけど火が回る速度が思ったより速くて……思いっきりやると死人が出そうだったしさ。いやぁ、当時は俺も未熟だった」

「! あの森の大火事。あれはロイド様の仕業だったのですか」

「知ってる! 迷いの森に発生した謎の大火事! 大騒ぎになってたよ!」

そういえば新聞にも大きく載っていた気がする。なんだか恥ずかしいな。照れるじゃないか。

「全然褒めてねぇと思いやすぜ」

「むしろ完全に呆れられてます」

「……ともあれ、結局それどころじゃなくなっちゃってな。そのままエルフの国を後にしたのさ」

「鬼畜っ!」

全員の声が綺麗に合わさった。

ひどいな。俺が火を付けたわけじゃないんだぞ。

エルフたちがあんなに攻撃してくるとは思わなかっただけである。消火も手伝ったんだしむしろ優しい方だろう。

「……で、結局それっきりになったので、ほとぼりも覚めただろうと思って久々に見に行こうと思ったわけだ。あの時は殆どエルフの国を見て回れなかったしな」

「絶対また同じようなことになると思うんだけど……」

「次は上手くやるさ」

あれからかなり魔術の研究を行い、以前より数段加減が上手くなっているからな。

今の俺なら火矢の数千本くらい射掛けられても一瞬で消滅させられるし、神聖魔術『浄化』もあるから敵対心は全て消せる。仮に森に火がついたとしてももエルフたちを結界で守りながら大規模魔術『水穿龍』で洗い流せばいいだけの話である。

皆が訝しむように見ているが、今度こそエルフたちとも仲良くやれるに違いない。……違いないのだ。少しは信じてくれってば。