軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔獣狩りに向かいます

準備を終えて翌日、俺たちは魔獣狩りに向かう事にした。

アルベルト率いる近衛たちが十五人は馬に乗り、各々俺が付与した武器を持っている。

彼らに護衛されるようにアルベルト、その隣に俺が、少し後ろをシルファがついてくる。

「そういえばロイドは城を出るのは初めてだったね。どうだい? 外の景色を見た感想は?」

実はちょいちょい抜け出してるんだけどなぁ。

もっと言うと前世ではしがない平民暮らしだったので、外の景色なんてそう珍しくはないものである。

「はい、色んな人たちが沢山いて、見ていて飽きないですね」

ま、そんなこと言うはずないけど。

全力で喜んでおけばまた連れてってもらえるしね。

俺の目論見通り、アルベルトは満足そうに頷いている。

「あら、アルベルト様よ。隊を組んでどこへ行くかしら!」

「きっと魔獣狩りよ! あっ、こっち見たわ!」

「きゃー! アルベルト様ぁー!」

街中を歩いていると、うら若い女性たちがアルベルトを見て黄色い声を上げている。

モテモテだなぁ。確かにアルベルトはどこから見ても完璧な王子様、世の女性たちがキャーキャー言うのも無理はあるまい。

「ところであの小さい子は誰かしら?」

「初めて見るわ。立派な服を着ているし、弟君なのかも」

「うーん、可愛らしい顔立ちではあるけど、アルベルト様と比べると……ねぇ」

同時に俺へも視線が注がれているようだ。

あまり興味もなさそうだけれど。

俺がそんなことを考えていると、シルファが重々しくため息を吐いた。

そして女性たちをキッと睨みつける。

女性たちはひっと悲鳴を上げ、そそくさと群衆へと紛れていった。

「ふぅ、世の女性たちはわかっていませんね。確かにアルベルト様は素晴らしき方です。ですがロイド様も負けず劣らず素晴らしい。いえ、将来性を加味すればアルベルト様をも超える逸材……なんと見る目のない。同じ女として嘆かわしい事です」

何をブツブツ言ってるのだろうか。

殺気が漏れてて怖いんですけど。……少し離れよう。

俺は馬の腹を蹴り、前へと進ませるのだった。

■■■

街を出た俺たちは真っ直ぐに森へと向かう。

魔獣の出た場所は森の奥にある小さな村、その奥にある巨大な湖だ。

昔から村の水源として重宝していたのだが、ある日突然魔獣が現れるようになったらしい。

困った村人たちは冒険者ギルドに討伐を依頼したが、報酬も安い上に辺境まで行って魔獣を退治するなんて依頼をやりたがる者もいるわけがない。

そんなわけで結局ギルドも国へ丸投げしたのだ。

この手の公共事業は国の仕事である。

ちなみに魔獣狩りは兵の実戦訓練や貴族の娯楽などを兼ねている。

「アルベルト様」

シルファが声を発する。

その張り詰めた気配にアルベルトと近衛へたちも異変を感じ取ったのか、馬を止め武器を抜いた。

もちろん俺はすでに気づいている。

独特の嫌な『気』が周囲から感じ取れる。これは魔物だ。

アルベルトと俺を守るように円陣が組まれ、シルファがメイド服のスカートから一本の投げナイフを取り出した。

ナイフは草むらに吸い込まれていき、ずん、と何か柔らかいものに突き刺さるような音がした。

「アオオオオーー!?」

次いで苦悶の声が聞こえる。

どうやら魔物に命中したらしい。

草むらが揺れ、犬のような顔をした人型の魔物が出てくる。

あれは確かコボルトだっけ。森に生息し、群れで狩りをする魔物だ。

コボルトは手先が器用で武器を扱うのが得意な魔物。

その技量はゴブリンなどとは比べものにならない。

加えてその手に持っているのは鋼の剣である。

それを見た近衛たちの表情が明らかに変わった。

「くっ、こいつらいい武器をもってやがるな……」

「あぁ、冒険者たちから奪ったのだろう。これは手こずりそうだ」

身体能力が同程度ならば、武器の性能差がそのまま戦力の差になる事は多い。

ふむ、こちらと向こうの人数も同程度だし、付与した武器の試し切りに丁度いいな。

「オオオーーーン!」

遠吠えを上げながら襲いかかってくるコボルトたち。

近衛たちは剣を抜き放ち、迎え撃つ。

コボルトの振り下ろす鋼の剣が、受けようとした近衛の鋼の剣と接触した。

「……え?」

驚きの声を上げたのは近衛とコボルト、両方だった。

コボルトの持っていた鋼の剣が抵抗なくへし折れ、近衛の剣は勢いのままにコボルトの胴を捉える。

そのままざくりと、コボルトの身体を切り裂いた。

「グアアアーーー!?」

鮮血が吹き出てコボルトは倒れる。

他の場所でも俺の付与した鋼の剣が、コボルトたちの武器をへし折っていく。

「な、なんだこの切れ味は……?」

「これが付与の力というものか……鋼のように頑丈なコボルトの体毛を一薙ぎで切り裂いてしまうとは……!」

その切れ味に近衛たちはとても驚いているようだ。

どうやら、付与は上手く働いているようだな。

武器で勝る近衛たちはあっという間にコボルトを追い払ってしまった。

「ははは! どうだお前たち、これが我が弟の実力だ! 恐れ入ったろう! あとでしっかり礼を言っておくことだな!」

アルベルトが誇らしげに笑っている。

おいおい勘弁してくれよ。俺は目立ちたくないんだが。

俺がジト目を向けていると、アルベルトが満面の笑みを浮かべ、俺の両肩を叩いた。

「素晴らしいじゃないかロイド。成功率もさることながら、とんでもない切れ味だったぞ? あれほどの付与魔術を使えるなんて、本当に驚いたよ」

「え、えーと……はは……」

まずい、やりすぎたか?

俺の想定以上に評価が高い。

使い手が少ないから少々やりすぎても大丈夫かと思ったが、それが裏目に出たかもしれない。

俺がどう答えたものかと思案していると、アルベルトは言葉を続ける。

「いつも本の虫だったロイドが自室にこもりっぱなしだったから、きっと何かやっているのだろうとは思っていたが、まさか付与魔術をここまで極めているとはね。道具はシルファに集めさせたんだね? とんでもない才能だ。流石は僕の弟だよ」

……どうやら俺の思い過ごしだったらしい。

俺は安堵の息を吐いた。

「は、はい。アルベルト兄さんの言う通りです。どうやら付与魔術に向いてたみたいで……あはは」

「うんうん、そうだろうそうだろう。……どうだいこれからも付与をお願いしてもいいだろうか? 道具は僕が融通するからさ。頼むよ」

「道具を!? 本当ですか!?」

「あぁ、もちろんだとも!」

今回使った道具は基本のものばかり、付与魔術には他にも色々な材料が必要だ。

それをアルベルトの力で集めてもらえるなら……これからはもっと色々なことが出来そうである。

「ふふふ、ロイドは良き才能を開花させたな。こんな年齢から潤沢な資金を使って思う存分付与魔術の修行が出来る者などそうはあるまい! このままいけば国一番、いや世界一の付与魔術師になることも不可能ではないな……!」

アルベルトが何かブツブツ言っているが、俺は様々な付与の組み合わせを考えるので頭がいっぱいだった。