軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神との対峙

「……さて、ここが神の宮殿か」

改めて、転移により辿り着いた場所は白亜の室内。

ここもまた隠し部屋のようで出入り口は存在しない。リーゴォが何やら操作するとようやく扉が開いた。

なるほど、確かに神はここにいるようだ。強い魔力の脈動を感じる。

「早く向かうぞロイドよ。神は目前、聖王めに向けられなかった怒りはせいぜい奴にぶつけさせて貰おうではないか」

「おいおいベアル、俺たちは融合を解除して貰いに来たんだ。戦いに来たわけじゃないのを忘れるなよ」

「……ふん、そうであったか。だが我らにその気はなくとも、神はどうであろうな?」

まぁ神が聖王に魔王討伐を命じた張本人なら、ベアルを前にした時どうするかは想像に難くない。戦いになる可能性は十分に考えられるだろう。

……ま、最悪力ずくで言うことを聞いて貰えばいいか。あまり戦いは好きではないが神というくらいだし、きっと面白い能力の一つや二つ持っているに違いない。それはそれで楽しみである。

「それでは案内致しますぞ。こちらでございます」

通路を抜けて広間に出る。

大階段が並び、白亜の石床が敷き詰められたまるで城のような空間。

だがそんな広間に誰もいないのは異様だ。働いている者はいないのだろうか。

「ふむ、普段は多くの使用人が忙しく働いているはずなのですが……ま、私がいなくなってかなり時間が経っておりますし、体制が変わっているのかもしれません。おっと、案内が途中でしたな。あちらが厨房、そちらが客間、向こうにあるのが最上階へ続く階段でして、そこから見下ろす風景がこれがまた見事なものでして……」

「おいおい観光案内は頼んでねぇぜ」

「神の元へ向かう道を示してください」

「おっと失礼いたしました。ついいつもの癖でして……えぇと、神のいる場所は恐らく――」

リーゴォが何処かを指差そうとした、その時である。

「――やれやれだな」

突如、辺りにしわがれた老人の声が響く。

「魔王と聖王が揃って私の宮殿に足を踏み入れるとは、全く以て度し難い」

「神サマ……!」

聖王が息を呑む。この声の主が神か。ふぅむ。

音が反響し、どこから聞こえてくるのかはわからない。

「勝手に監獄を抜け出すとは、どういうつもりなのだ?」

「一応反省はしたぜ。ケジメは付けるのが筋ってもんだからね。そして付けたからこそ、もう一度物申しにきたのさ」

「……反省、か。しているようには見えんがな。まぁいい。聞くだけ聞いてやろう」

神の言葉に聖王は待ってましたとばかりに語りだす。

「こほん、それじゃあ改めて。――監獄に繋がれてる間に考えたけど、やっぱり相手が誰であろうとも、罰を下すのは悪人だと判断してからにすべきだろう。現にこの魔王も話せばわかる奴だったし。先入観で判断するのは良くないよ」

「ふむ、それで?」

「つまりは……そう。しっかり確認しようって話さ。焦って罰して、それが冤罪だったらどうするんだよ。そうなったらあんたの方が悪人だぜ。俺だって神サマがちゃんとするなら文句は言わないし、聖王だって続けるつもりさ」

「ふむ、それで?」

「それでって……だから僕は――」

気のない相槌に聖王が声を荒らげようとしたその瞬間――俺たちの頭上が眩く光る。

迸る魔力の光。光は輝きを増していき、聖王はただ茫然とそれを見上げる。

「へ――?」

突然の事態に茫然とする聖王。溢れた光が降り注ぐ。

どぉん! と凄まじい衝撃音が鳴り響き、地面が大きく揺れた。

「どわわわっ!? な、何が起こったんだ!?」

「愚か者! 神が貴様を仕留めようとしたのだ! ボサッとしている場合ではないぞ」

ベアルが声を荒らげる。

俺の中から飛び出し、尻尾をさながら傘のように広げて全員の身を守ってくれたのだ。

「な……! 魔王が……僕を助けたというのか……?」

「チッ……我も焼きが回ったな……ツぅっ!」

苦悶の表情を浮かべるベアル。

その身体は焼きただれており、白煙を上げていた。ベアルの魔力体に傷をつけるとは、なんという一撃だ。

「貴様は言っていたな。相手をよく知りもせず敵と断じるのはよくないと。我自身も貴様をそう見ていた。その侘びだ。言っておくがこの一度きりだからな。次はないと思えよ!」

「魔王……お前、やっぱりいい奴だったんだな……! ありがとう。嬉しいぜマジで」

「……ふん、虫唾が走るわ」

はにかむように笑う聖王に、ベアルは照れ臭そうに押し黙ると俺の中に引っ込んでしまう。

意外と恥ずかしがり屋なんだよな。こいつって。

「――ふむ、魔王などに助けられるとは、お前はもはや聖王の器とは呼べんようだ」

「あ、あんた……まさか僕の話を聞いていたのは……!」

「お前の戯言などどうでもいいが、随分とお喋りが好きなようなのでな、最後の瞬間まで好きに喋らせてやろうという私なりの温情よ」

「~~~ッ!」

神の言葉に聖王は絶句する。

最初から話を聞くつもりなどなかったのだ。

ただ話を聞くフリをして、その隙に殺そうとしたというわけだ。神の割に随分と俗っぽい手を使う。

「……えげつないねぇな。とても神とは思えない汚ねぇやり口だぜ」

「我らが神がこのようなせせこましい行いをするとは、信じられません……」

グリモとジリエルもショックを受けているが、聖王はそれ以上だろうか。

信頼していた相手に背中を斬られるような想いだろう。

やるせない感情にか、聖王は肩を震わせていた。

「まぁ良い。ここへ来たという事は私の元へ来るつもりだったのだろう? 今度こそ逃げも隠れもせんから最上階まで昇ってくるがよい。手ずから葬ってやろうではないか」

「……上等さ! ここまでコケにされちゃあ平和主義者である僕も黙ってるつもりはないぜ! だが戦うつもりはない。あんたを完膚なきまでに説得してやる! 覚悟しておくんだな!」

「ふん、威勢がいいのは結構だが、最上階までの各階層には天界64神たちを集結させている。いずれも貴様と同等近い力を持つ者ばかりだ。当然それ以外にも様々な罠を張り巡らせている。それを見事突破しここまで辿り着くことが出来れば――よかろう直々に相手をしてやろうではないか」

「ああ行ってやるともさ! なぁロイド君! ……ロイド君?」

二人が何やら会話しているのを横目に、俺は神の声を分析していた。

何せこの声、随分と興味深い仕組みだったからな。

神からこの場への干渉、やけに複雑な魔力パスを通している。

単に音声や魔力撃をこの場に届けるだけならここまでする必要はないはず、にも関わらず一体何の為にこんなことをしてるのか……興味深い。

「……ま、大体わかったけどな」

「えーと……ロイド君? もしもーし。おーい?」

「悪い聖王、先に行く」

そう呟いて俺は空間転移にて跳躍する。