軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そしてフェスが始まります

「サリアが倒れただって!?」

驚き声を上げるアルベルト。

倒れたサリアを部屋に運び込んだ俺はアルベルトたちに報告をしていた。

「だ、大丈夫なのか!?」

「えぇ、今は眠ってきます。熱もないようですし、多分大丈夫かと」

「ふむ、色々悩んどるよーやったしなぁ。疲れが出たんやろ」

ビルギットがすごい速さで書類に目を通しながら言う。

ちなみに二人は明日の本祭は向けて書類整理中だ。

様々な店舗の許可や客席の確保、来賓への対応、参加者の整理などなどやることは幾らでもあるらしい。

「うむむ……心配だ心配だ。思い詰めて無理をしたのだろうか……」

「こらこらアルベルト、手ェ止めとる暇はあるんか?」

「姉上、しかし……」

言いかけたアルベルトだが、ビルギットの迫力に言葉を飲み込む。

「あの音楽大好きっ子が自分から代役を立てとるんやで。それだけ責任を感じとるちゅーこっちゃ。それに報いる為にウチらも気張らんといかんやろ。のんびりしとる暇なんかあらへんやろ」

「姉上……! えぇ、そうですよね」

「んむ、わかればよろしい」

ビルギットが頷いたその時、パチパチと手を鳴らす音が聞こえてくる。

「いやぁまさしくその通り! フェスの成功こそが彼女の望みなんだから、その為に力を尽くすべきだよねぇ!」

拍手の主は聖王だった。

相変わらず神出鬼没だな。おどけた様子の聖王をビルギットは強く睨み付ける。

「アンタは黙っときや。サリアの意向やから任せとるけど、本来ならぶっ飛ばしとるところやで」

「おお怖っ。いやはや、妹想いのお姉様だことで」

「言っとくけど演奏で手ェなんか抜きよったら……」

「そんなつもりは露程もないよ。聖王の名に懸けて誓わせてぜ」

「当然やろ。そんなことしたら磔にしたるからな」

「あははー、磔って聖王にそれ言っちゃう? ま、頑張るって言葉に嘘はないんでそこは安心して欲しいな」

聖王はヒラヒラと手を振りながら出ていく。

「くっ、相変わらずふざけた男め……! どういうつもりなのでしょう。いつも思わせぶりなことをしてますが」

「にゃろう、どうもあいつは掴めねぇ奴ですな。いつもフラフラしやがって、一体何がしたいんだぁ?」

首を傾げるグリモたちだが、あいつ普通に何も考えてないように思えるんだよなぁ。

本当にただ、思うままに動いているのではなかろうか。

普通に事故でサリアの音楽を奪い、普通に謝罪と償いをし、普通にサリアを励まそうとして、普通にビルギットたちに弁解をした……とか。

聖王という肩書きに加え、喋り方が思わせぶりだから周りがそう思っているだけな気がしなくもない。……まぁそれも俺の勝手な想像。何にせよ、先入観に囚われるのも良くないか。

「ま、もうすぐわかるさ」

明日はフェス本番なのだ。

俺としては魔曲の出来を確かめるという目的を果たせればどうでもいい。……あ、ベアルの復活もな。

はてさて、一体どうなってしまうのやら。楽しみで夜も眠れそうにないぞ。

そして夜が明け、フェス当日。

「ふぁーあ……よく寝た」

欠伸と共に大きく伸びをすると、グリモとジリエルがひょこっと出てくる。

「メチャメチャぐっすり寝てやしたぜロイド様」

「というかもう昼でございますよ。幾らなんでも寝過ぎなのでは?」

「色々やってて寝るのが遅くなかったからなぁ」

譜面の最終チェックをしていたら遅くなってしまったのだ。

窓の外を見ればもう陽が高くまで昇っている。確かに寝すぎてしまったか。

しかしシルファたちが起こしに来ないなんて珍しい。

「ようやく起きたみたいね。ロイド君」

ベッド脇からの声に振り向くと、椅子に座って本を読むコニーがいた。

「あんまり安らかな顔してるから、つい放っておいちゃった」

「コニー、起きても大丈夫なのか?」

「うん、最近は調子が良いの。ロイド君の音楽を聴いてるからかな」

ベアルを回復させる為の魔曲、その回復効果は宿主であるコニーにも効果があるからな。

日々研鑽を続けているが、効果は上々というところか。

「まだ意思疎通までは出来ないけど、ベアルもかなり回復してきたような感じだよ」

「なんだ、そうなのか」

「……どうしてちょっと残念そうなのかしら」

コニーが冷ややかな目で見つめて来る。

残念とまでは思ってはないが、どうせなら本番で大復活、とかやって欲しかった。

中途半端に回復してたら、その伸び代が分かり辛くなるじゃないか。

まぁベアルの魔力は膨大だし、幾ら何でも一度で全回復とはいかないか。

あらゆる現象に共通することだが、攻撃よりも回復の方がより大きな力を使うのである。なんでも壊すより直す方が難しいものだ。

「ちなみにシルファさんたちはフェスの手伝いに行ってるよ。朝早くにビルギット様に連れられて行っちゃった」

「あー、だから起こしに来なかったのか」

幾らシルファでもビルギット相手には逆らえないからな。

それでもあのシルファを連れていくとは、流石である。

「すごく残念がってた。いつも起こしているのにね」

くすくすと笑うコニー。ま、たまには休んでもいいだろう。

おかげでゆっくり寝れたしな。

「それよりコニー、寝てる間に変な奴が来やがらなかったか? 黒髪のヘラヘラした男なんだがよ」

「聖王です。ベアルを倒しに来たのなら、コニー嬢と接触をしていてもおかしくはありませんから」

グリモとジリエルが顔を出すが、二人の問いにコニーは首を傾げる。

「んー……さぁ、私は誰とも会ってないけど……」

「ま、そうだろうな」

結界に近づいた様子はなかったしな。聖王は適当な性格に見えるが、案外嘘は吐かないように見える。

やはり単に反省し、協力してくれていると考えるべきか? ううむ、わからん。

唸っていると、コニーが立ち上がり俺の手を取る。

「ロイド、それよりフェスに行こうよ。ずっと寝てたから身体を動かしたい」

「そうだな。俺もそろそろ行かなきゃだし。でも無理はするなよ」

「うん」

俺はコニーを引き連れて、会場に向かうのだった。