軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

お茶会を開きます

「コニー! いるか!?」

翌日、俺は魔道具部に直行する。

中に入るとコニーがいつも通り、何やら怪しげな装置を作っていた。

「わ、ロイド君。どうしたの。こんな朝早くに」

「実は一緒に作りたいものがあるんだ。……これこれこういう魔道具なんだけど」

俺は先日書き起こしておいた設計図をコニーに渡す。

「相変わらずいきなりだけど……どれどれ……ふーむ、出来るとは思うよ。でもこの構造なら材質は変えた方がいいんじゃない?」

「へぇ、流石だなコニー。その発想はなかったよ。……じゃあこんな術式を編み込んでみるといいいかもな」

「……いい。やはりロイド君は魔術師ね。ならここもこの材質に変えれば相乗効果でより高い効果が見込めるかも」

「だったら……」

「ついでに……」

気づけば話は思った以上に弾んでいた。

やはりコニーとは話が合うな。

魔術こそ使えないがその分術式への理解は半端ではなく、時折俺でも舌を巻く程だ。

これなら俺の思い描く魔道具が出来るかもしれないぞ。

そんなこんなで俺は連日魔道具部に入り浸り、製作に没頭していた。

このペースなら問題なくお茶会に間に合いそうだ。

「しかしロイド様、何をするのかは存じませんが、わざわざ魔道具に頼らずともロイド様の魔術を使えば大抵なことはどうにかなるのではありませんか?」

「今回ばかりは魔術は使えなくてね」

何せ相手はノアとガゼル、あの二人の前で魔術を使えば隠蔽しようが確実にバレてしまうだろう。特に先日のやらかしで向こうも警戒しているだろうしな。

だが魔道具ならそこまで警戒はされていないはずである。

「なるほど、そういうことなら納得です。………それにしてもあの魔人、上手くやっているでしょうか」

なお、グリモは木形代と共にノアたちのフォローへ行っている。

あんなことを起こしたのだ。そのまま顔を出さないわけにもいかないからな。

「グリモなら色々上手くやるだろう。あいつが気が回るのは知ってるだろ?」

「魔人を人当たりの良さで評価しているのは流石と言う他ありませんが……いや、確信を得ずに妙な発言をしてロイド様を困らせるわけにはいかない、か」

ジリエルが何やらブツブツ言っている。

もしかして自分がやりたかったのだろうか。

「ロイド君、ちょっといい?」

そんなことを考えているとコニーが声をかけてくる。ザックを背負い、山にでも入るような格好だ。

「材料の紫咲草を採りに行かなきゃならなくてね。作業を進めておいてくれないか」

「紫咲草? あぁ、それなら……シロ」

「オンッ!」

俺はシロの毛皮の中から青紫色の草束を取り出した

「そ、それはもしや紫咲草!? 一体いつの間に……」

「必要になると思ったからね。予め手に入れておいたのさ」

先日の打ち合わせの際、様々な薬草類が必要になりそうだったのでレンを連れて採取に行ってきたのだ。

「まさかと思うけど幽玄茸も持っている?」

「あぁ、闇雲月花も夏虫冬花の種もあるぞ。これだけあれば足りるか?」

「数の少ない紫咲草をこんなに……それに摘んだ側から傷み始める闇雲月花や、下手に抜くとボロボロに崩れる骨天草もとてもいい状態で保管されている。手に入れるのも難しいのに処理まで上手なんて、すごいじゃないロイド君」

「まぁ手に入れてくれたのは俺の仲間なんだけどな」

幼い頃、山に捨てられ生きてきたレンは山の知識が豊富だ。

俺の下で学んだ薬学も加わったことで、より頼れる存在となってくれたな。

並べた素材を真剣な顔で見ながら、コニーは呟く。

「……ところでロイド君、もしかしてだけど薬草採取の際に魔蓄石を拾っていたりしない?」

魔蓄石とは、自然界に存在する魔力を蓄える力を持つ希少石である。

現在作っている魔道具には不要だから俺も別に探してはいない。

尤も探したからといって簡単に見つかる物でもない。それ程貴重な物である。

「いいや、拾ってないけど必要なのか?」

「そうか……いや、もしやと思っただけだよ。うん」

あからさまに残念そうにしながら、コニーは作業に入る。

工具を手に、魔道具の調子を確かめるように触っている。相変わらず見事な手際だが……そういえばコニーの作る魔道具は魔力を蓄えるものが多いよな。

それを作るには魔蓄石は幾らあっても足りないということか。

「……しかし不思議だ。どうもコニーは魔力を溜めることに拘っているように思える」

コニーの作った魔道具はどれも大量の魔力を貯蓄出来る機能を持ったものばかりだ。

高価な魔蓄石に拘らずとも、魔力なしで動く魔道具は多々ある。何か理由でもあるのだろうか。

俺の質問にコニーは少し考えて答える。

「……ノロワレって知っている?」

「あぁ、強い魔力を持ちながらもそれを制御出来ず、忌み嫌われている人たちだろう?」

レンもそうだし、俺は何人ものノロワレと呼ばれるものたちに関わってきた。

総じて他人に嫌われた人生を歩んでおり、闇の世界で生きざるを得なかった者も多い。

「実は、私の育った村ではそうした人が多く生まれる土地柄なの」

この大陸には強力な魔物が封じられていたり、神の遺物が現存したり、大魔術の実験跡だったりと、大量の魔力が溜まった土地が存在する。

そこでは体内に多くの魔力を蓄えたことで高い魔力を持った者、ノロワレと呼ばれる魔力制御が困難な者、そしてコニーのような特異体質も生まれやすい。

「私の弟も多過ぎる魔力を持って生まれて、物心ついた時からずっと寝たきりだった。医者に見せてもよくならず、結局五歳になる前に死んだ。弟だけじゃない。他の村人たちも似たようなもので、運良く生き延びても制御出来ない魔力は持ち主に牙を剥き続ける……皆をどうにか救えないか、それが私が魔道具作りに取り組もうとした切っ掛け……あ、もちろん魔術は好きよ?」

「わかっているさ」

大体、魔術が好きでなければこれ程の知識、技術は得られないだろうからな。

それに魔術師として術式を学べば、他人の乱れた魔力線を調律することも可能だ。

故に工作に時間の大半を費やす魔道具科より、魔術科に入ったのだろう。

「私だけの力では限界があるけど、魔道具なら誰にでもその治療が出来る。この世界から同じような症状で苦しむ人をなくす。それが私の夢」

魔道具を組み上げながらコニーが言う。

その額を流れる汗がキラキラと輝いて見えた。

「うぅ……なんと健気で立派な少女でしょうか。魔力を持たぬ身で術式を覚えるのは目が見えぬままで学問を学ぶようなもの。相当の苦労があったはず。にも関わらず他人の為に……なんと立派な」

コニーの言葉に感動したのか、ジリエルが涙ぐんでいる。

ともあれ色々腑に落ちなかったコニーの行動にも納得がいった。魔力を溜める魔道具は村の人たちから過剰な魔力を吸い取り発散させるためのものだったのだ。

「わかった。魔蓄石だっけ? 手に入ったらコニーにあげるよ。手伝ってくれた礼だ」

「本当? すごく助かる」

「困った時はお互い様さ」

そう言って俺はコニーと握手を交わす。

コニーと仲良くしておけば、いつか村へ招待されるかもしれない。

そうすればその土地の秘密、人々への影響なんかも知れるだろう。ノロワレが発生する村か……面白そうだな。きっと俺の魔術の研究にも役立つだろう。うんうん。