軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

激突! ロイドVSロイド

そして迎えた放課後、人目につかない校舎裏にてノア率いる生徒会とガゼル率いる愚連隊が集まっていた。

俺はというとガゼルの傍にて佇み、ただその時を待っている。

「しかしよロイドぉ、何だってそんな仮面を付けてるんだ?」

「目立ちたくないからね」

仮面には幻想系統魔術をかけて輪郭を暈しており、俺の正体は知れないようになっている。

かなり厳重に仕掛けており、目の前にいるノアにも悟られてはいないようだ。

憮然とした顔で俺たちを睨め付けるノアの傍らには、俺と同様仮面を被った少年――すなわち木形代に入ったグリモが立っていた。

「まさかとは思いやしたが、本気でこんなことをやるとは驚くしかねぇですぜ」

グリモから呆れたような念話が届く。

――つまり俺の画策というのはこうだ。

俺とグリモで決闘の真似事をする。

それなりの戦いを見せれば皆も納得、誤解も解ける。

そして俺は大手を振って二つのグループに入り浸れる、というわけである。

うーん完璧な作戦。今度こそ勝ったな。

「しかしそう上手くいくでしょうか。あの魔人如きにロイド様の相手が務まるとは思えませんが……」

「なーに、加減するから大丈夫さ」

「――その必要はねーかもしれやせんぜ」

俺の言葉にグリモはどこかぶっきらぼうに答えた。その瞬間である。

ずずん! と轟音が響き俺の足元が揺らぐ。

地面から生えたのは黒い閃光。

「おおっ!?」

常時展開していた結界ごと上空に吹き飛ばされた俺は、そのまま『浮遊』で空中に留まる。

そんな俺を睨み上げるグリモの両手には、巨大な炎の塊が燃え盛っていた。

「焦熱炎牙ぁ!」

炎の牙が唸りを上げながら俺目掛けて迫る。

いきなりの連続攻撃で少しびっくりしたが、グリモもやる気なようで何よりだ。

「それにしてもこの焦熱炎牙、何かちょっと妙な感じだよな」

グリモの魔術はお遊びで何度も浴びたが、全てオーソドックスなものだった。

しかしこの焦熱炎牙の術式に僅かではあるが違和感を覚える。……ふむ、気になるな。

俺は早速結界を解除し、素手で焦熱炎牙を受けてみる。

もちろん痛い。

魔術による肉体強化、常時回復をして更に纏った魔力でガードしている俺だから大丈夫なのであって、よい子のみんなは素手で最上位魔術を触るなんて危険な真似しないようにな。

「いや、するわけがないでしょう!」

「あちち」

肉の焦げる匂いと共に術式が流れ込んでくる。

ふむふむ、一見普通に見えるがやはり違和感があるよな。……ん、術式を描く魔力線、その一部分の色が少し変だぞ?

不思議に思った俺がそれに触れた瞬間である。

ずどぉぉぉぉぉん! と爆音が響き渡り、凄まじい衝撃が俺を襲う。

何が起きたかも分からぬまま吹き飛ばされた俺の背後に生まれる気配。

「絶対触ってくれると思ってやしたぜ。ロイド様ならよぉ」

耳元でグリモが囁くのとほぼ同時、黒く染まったグリモの足が弧を描く。

俺の脳天に振り下ろされた一撃をガードしたものの、先刻の炎と合わせて両腕から血飛沫が舞う。

「へぇ、術式そのものに罠を仕掛けたのか」

魔術というのは術式に魔力が流すことで発動するわけだが、術式そのものに誤りがあるとそこで暴発、弾けてしまう。

グリモはそれをわざと作り、俺に触らせることで強力な爆発を引き起こしたのだ。

変わった術式を見ると思わず結界を解除してでも触ってしまう俺の癖を利用した見事な罠である。

「ロイド様くらいにしか効きやせんがね! 効果はテキメンなようですな!」

咆哮を上げながらの連続打撃。

魔力を纏った一撃を防ぐたび、ガードした俺の腕が軋みを上げている。

「何故結界でガードしないのですかロイド様! 血が出ておりますよ!」

「出来ねぇんだよ! 結界の再展開には膨大な時間がかかるからな!」

グリモの言う通り、結界は一度解くと再展開にはかなりの時間がかかる。

故に俺は常時複数枚の結界を展開し、破られた瞬間に新たな結界を展開出来るよう術式を組んでいるのだ。

しかし破られたのではなく自ら解除した場合はその限りではない。

「オラオラオラオラァ!」

その間にも連続して繰り出される打撃の嵐。

言うまでもなく、魔術師というのはその悉くが近接戦闘を苦手としている。

殆どの魔術には詠唱があるし、発動にも若干のタメがある。

仕方ない。ここは近接戦に付き合うか。

「光武+ラングリス流……」

掌に生み出した光の剣を握ろうとした時である。掌に激痛が走り、思わず弾いてしまう。

「ロイド様ぁ!」

落としかけた光の剣を左手に宿ったジリエルが拾う。痛みは……ない。

どうやら左手は大丈夫なようだが、右手は違う。

見れば俺の掌には、何か黒いアザのようなものが浮かんでいた。

「悪ぃがロイド様よぉ、そいつも想定済みですぜ」

勝ち誇ったような笑みを浮かべるグリモ。

これは魔力痕か。無防備な状態で強い魔力に当てられると、肉体が拒絶反応を起こしこれが生じる。

もちろん俺が魔力に対して無防備なんてあるはずはないが、グリモを宿していた右掌だけは例外だ。

表皮一枚、とはいえそこだけは完全にグリモの支配下だったので、魔力痕を残すことも容易だったろう。

「――ラングリス流剣術、針鼠」

咄嗟に左手で握り直した光の剣で高速突きを繰り出すが、あっさり躱されてしまう。

「ひゃは! おせぇおせぇ!」

やはり利き手ではないからな。威力も速度も半減だ。

距離を取るどころか逆に数発のカウンターを貰ってしまった。

「どうしたんですかい!? まさかこの程度で終わりじゃあないでしょうねぇぇぇ!」

反撃も封じられ、防戦一方の俺に容赦のない打撃が降り注ぐ。

結界を消され、接近を許し、しかも片手を封じられた。ここまで追い詰められてしまえば、相当の実力差があろうと魔術師側がそれを覆すのは困難だ。

「ロ、ロイド様……! しっかりして下さい! くっ、魔人め、かくなる上はこの私が……」

ジリエルの放った光武をグリモが軽々弾き飛ばす。

「クソ天使が! 引っ込んでな!」

勢いそのままに突進してくるグリモ。

その手にはグリモ最大の魔術を携えていた。

極黒螺旋撃、グリモの使う古代魔術の中で最も破壊力に特化したものだ。

タメが大きく、かつ近距離でしか十全の効果を発揮しないがその分威力は折り紙付で、俺の結界すらも破壊する程である。

「コイツで、終わりだぁぁぁぁ!」

極大の魔力球を凝縮させた一撃が俺の胸目掛けて突き刺さる。その寸前で止まった。

「な……け、結界!?」

驚愕に目を見開くグリモ。その攻撃を防いだのは風系統下級魔術『風球』だ。

この魔術は空気の球を生み出しぶつけて攻撃するのがオーソドックスな使い方だが、飛ばさず待機発動させることで空気の塊で相手の攻撃を和らげるということも可能である。

そんな風球を軍事魔術を応用し、大量、かつ圧縮した上で俺の前面に展開したのだ。

数万を超える圧縮された空気の球、それが盾となってグリモの攻撃を殺し切ったというわけである。

「そして結界は復活する」

ついでに傷も。

「治癒光は人体に作用する魔術、回復自体は人体次第な為、どうしても効果が低くならざるを得ない。あれだけの傷を癒すには数日は付きっきりでかけ続けねばならないというのに……恐るべしロイド様……」

ジリエルが何やらブツブツ言っている。

肉体の自己修復力だけで治療しようとするから時間がかかるのであって、魔術で作り出した血肉をそのまま貼り合わせればそこそこの速度で治癒は可能だ。

それでも数秒はかかるけどな。

「ぐっ……やはりつええ……強すぎる……!」

グリモが歯噛みしているが、結構いい線いってたぞ。

俺の弱点も上手く突いていたし、昔戦った魔族クラスには苦戦したかもしれない。

「ともあれ、十分ここらで勝負はおしまいだろう。降りるぞグリモ」

「……へい」

短く答えるグリモと共に、俺たちは皆の待つ地上へと戻るのだった。