軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

学園最高の魔術師、後編

「■」

呪文束により発動させるのは、幻想系統魔術『模写姿』。

本来は頭に描いた人物の姿になる魔術だが、グリモとジリエルの口を使い三重詠唱、かつ対象を敢えてイメージしないことで、人によって見える姿が変わるという特性を与えている。

見られる姿を敢えて特定しないことで『どのようにも』見えるようになり、結果見たの人がそうだと思った姿だと認識させるのだ。

もちろん術式は弄っているから『透視』などの視覚強化魔術でも見破るのは不可能。

流石に白昼堂々使えばバレバレだが、こうして白煙に紛れれば問題はないだろう。多分。

そうこうしているうちに二人の間近まで迫る。よーし、色々試させてもらうとするか。

「グリモ、あれを」

「はいな」

グリモの口から取り出したのは俺専用の魔剣『吸魔の剣』だ。

こいつは魔術を吸い込み無効化する術式を組み込んだ魔剣で、下級魔術であれば数百、上級以上でも数個は封じることが出来る。

「剣に封じた魔術は後でゆっくり解析可能、というわけでまずは貰うぞ二人の術式」

――ラングリス流剣術、針鼠。

剣を短く持ち、姿勢を低く構えた後に繰り出すのは全方向への突きの連打。

これは矢の雨などに対する防御用の技だ。刃に触れた火球、氷球がどんどんかき消していく。

「と、これじゃ水蒸気による煙幕が消えちゃうので……ほいっとな」

同時に発動させるのは火球と水球を二重詠唱『失敗』することで生じる白煙。これは通称『煙球』と呼ばれるもので、水と炎が混じったことで生じる水蒸気爆発だ。

ぼふんっ! ぼふふんっ! と白煙が連続して舞う中、俺は二人の術式を 蒐集(コレクト) し続ける。

そろそろかなり溜まってきたが、同じのばかりだと芸がないよな。

「よし、折角だから他の魔術も使って貰おう」

吸魔の剣に封印した火球、氷球を二人に向かって解き放つ。

相手の撃ち終わりを狙っての絶妙なタイミング、これなら対処できず、他の魔術を使わざるを得ないだろう。さぁ何を使う?

ワクワクしながら見守る中、ガゼルは僅かに顔をしかめた後に指を鳴らした。

瞬間、眼前に迫った氷球が爆ぜる。

む……普通に『火球』じゃないか。つまらん。でもあんな近距離で瞬時に迎撃するなんて、俺でも難しいかもしれない。

「ロイド様は常に結界を張ってるんだから、あんな危ねーことはする必要ねーでしょう」

まぁそうなんだけども。それよりノアの方はどうだろうか。

「ほう……」

ノアは少し目を丸くしながらも、迫る火球に防御の姿勢すら取ろうとしない。

直撃の寸前、火球が弾ける。そこにあるのは薄い魔力の膜――結界だ。

どうやらノアは俺と同様、常に結界を展開しているようである。

「ふん、何とも頼りない結界ではありませんか。ロイド様のとは比べ物になりません」

まぁそうなんだけれども。というか二人共、今のを難なく処理するか。

小技の使い方で魔術師としての技量は知れる。俺としては違う魔術を見せて欲しかったが、これはこれで面白い。

まぁ学友となれば彼らの魔術を後々ゆっくり見ることもできるか。これから楽しみだな。

俺はこっそり煙を抜け出し、その場を離れるのだった。

そして夜、俺たちは寮にて食事をしていた。

「如何でございましょうロイド様」

「うん、美味しいよシルファ。レンも随分腕を上げたもんだ」

「えへへ、ありがとう」

ちなみにビルギットが寮一棟まるごと貸し切り広々と使わせて貰っている。

寮には大部屋が二つと小さな部屋が十つあり、五人と一匹で使うには広すぎる程だ。

「しかし……いいのでしょうかビルギット姉さん。僕たちは一応ここの学生ですよ?」

「ええんやって。その分の金は払うとるし、こちとら王族、ある程度は安全面も考慮せんとな」

あっけらかんと言い放つビルギット。まぁ俺としては部屋が広々使えるのは有難い。

「それにシルファらの美味い料理も食えるしな。皆の栄養管理はしっかり頼むでー」

「恐れ入ります」

「ますっ!」

シルファと共に慌ててレンが頭を下げた。

それをねぎらった後、ビルギットはアルベルトをじっと睨む。

「……それよりアルベルト、今日の授業やけんども……ハァ、アンタはいまいち経済センスがあらへんなー。人に気づかれることなく利益を掠め取るのは経済の基本中の基本やで?」

「姉上、それは長期的に見ると損失です。誠実に接することで取引先とも良好な関係が築けるはず。そうすれば利益はおのずとついてくる」

しかしアルベルトもまた持論を返す。ビルギットは少し嬉しそうな目をしつつもわざとらしくため息を吐く。

「甘ちゃんが。そんな考えやと悪人共にあっという間にケツ毛まで毟られるで」

「それでも僕は人を騙すような真似はしたくありません」

「にゃにおう? この美人教師に逆らうとは随分えー度胸しとるやないのん。ゆーとくけどこの寮を貸し切ったんは夜にアンタの家庭教師をやる為でもあるんや。しっかりそのお花畑の頭に詰め込んだるさかい、覚悟しぃや」

「望むところです。姉上」

二人は何やらバチバチと火花を散らしている。

俺には経済とか興味ないからどうでもいいけど、なんとなく楽しそうだな。

「そういえばレンはどうだったのですか?」

「うんっ! すっごく楽しかった! 友達も出来たんだよ!」

「いえ、そうではなくて」

目を輝かせるレンに、シルファは首を横に振って答える。

「ロイド様にお仕えする者として恥ずかしくない姿を見せているのか? と問うているのです。試験の出来は? 授業にはついていけそうなのですか?」

「え、えぇと……一応授業も何とかついていけると思う。友達になったロゼッタって子もボクのこと褒めてたし……」

ロゼッタ……どこかで聞いた名前だな。

「薬術科筆頭生、『芳しき紫薔薇』と呼ばれしロゼッタ嬢ですよ。名しか知りませんがきっと花のような美しさなのでしょう。是非お会いしたいものです。ふひひっ」

不気味な笑みを浮かべるジリエル。

そういえばさっきシドーが学園のすごい生徒を語ってる時にそんな名を聞いた気がする。

そんな生徒と友達になっているなんて、やるなレン。

「ならよろしい。しっかりと励むのですよ」

「は、はい……」

シルファにそう言われ、レンは安堵の息を吐く。

ところでシルファの方はどうだったのだろう。そんな俺の考えを見透かしたかのようにアルベルトが言う。

「剣術科で仲良くなった子たちに教えて貰ったけど、シルファは試験官を打ち倒してしまったらしいよ?」

うわ、やりそう……その光景が目に浮かぶようである。

「しかも剣術科の筆頭生であるマクシミリアム=トーの決闘を受け、そちらも瞬殺してしまったとか。その強さ、洗練された所作振る舞いから早くも『麗しき紅薔薇』なんて呼ばれているそうだ」

「お恥ずかしい限りです」

シルファは恭しく目を伏せる。

確かにビルギットは目立ってこいと言っていたが、いきなり筆頭生を瞬殺するなんてあまりにやり過ぎじゃなかろうか。

「評判は聞いとるでシルファ、まずまずのスタートってとこやな。これからも気張りや」

親指を立てながらシルファを褒めるビルギット。

初日でこれなのに、これ以上目立たせるつもりだろうか。先が思いやられるな。

「しかし相変わらずってーか、皆、半端ねぇくらい優秀ですな」

「えぇ、流石はロイド様の兄姉、そしてシルファたんにレンたんと言ったところでしょうか」

グリモとジリエルの言う通り、皆相当目立っているようだ。

これなら俺自身、あまり注目を浴びることもなさそうだな。この調子で頑張って欲しいものである。