軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

前線を支援します。後編

「うおらァ!」

がん! がん! とビルス率いる山賊たちが骨を砕く音が辺りに鳴り響く。

粉々にする必要まではなく、ある程度砕けばもう復活はしない。

「こちら側の仕事はほぼ終わりつつあるか。サイアスの方はまだ少しかかりそうだな」

サイアスもかなりの速度で処理してはいるが、まだ数体残っているようだ。

苛立った様子で部下に指示を飛ばしている。

「ねぇ、サイアスは魔術を使わないの?」

「我が魔術はこのような場で安売りするものではないっ!」

聞いてみたが、サイアスは怒ってそっぽを向いてしまった。

むぅ、折角レビナント家の血統魔術を見せて貰えるかと思ったのに。残念だ。

俺たちが終わってしばらく、サイアス隊も処理を終えようである。

「な、何という早さ……これなら復活を最小限に抑えられます! 早速次に向かいましょう!」

俺たちはクルーゼ兵の先導で、新たな現場へと向かうのだった。

そうして数千体は魔物の死体を処理しただろうか、死体はどんどん新しくなっていき、気づけばクルーゼ隊に追いついていた。

丁度戦闘を終えたクルーゼが声をかけてきた。

「む、ロイドではないか。サイアスもおるな。一体どうしたのじゃ?」

「死体がアンデッドとして復活しているようなので、魔術師である俺たちが処理に回っているんです」

「なんと、そういえばアンデッド系の魔物が多いとは思っておったわ。しかし困ったの、それではキリがないではないか」

「 一寸(チョット) 失礼」

話に割って入ってきたのはタオだ。

タオはクルーゼと隊の者たちを、推し量るようにじっと眺めた。

「ふむふむ、流石ロイドの姉君、信じれない程よく鍛えられてるよ。これならアレが使えるかも……」

「む、なんじゃおぬしは?」

「これは申し遅れましたある。アタシはタオ=ユイファ、しがない異国の冒険者よ。アナタに興味があってロイドに同行したね」

タオの言葉にクルーゼは一瞬キョトンとし、大笑いした。

「はっはっは、わらわに興味があるときたか! 面白い娘じゃの! ……ふむ、おぬし気を使えるのか。しかもかなりの使い手と見たぞ?」

「えぇ、あなたの知らない技も知ってるよ。例えば不死殺しの技とかね」

「ほう?」

クルーゼの興味深げな視線を受け、タオは足元に倒れ伏していた巨大な猛牛のすぐ傍を思い切り踏みつける。

どぉん! と衝撃波で猛牛が上空に跳ねる。

本来は死んでいたはずの猛牛の目は妖しく紅く輝いていた。

「おい! あの魔物アンデッド化しているぞ!」

「ブオオオオオオッ!」

荒ぶる不死の猛牛が咆哮を挙げながらタオへと降り落ちてくる。

そして――ずずん! と落下音が響き土煙が舞い上がる。

土煙の晴れたその場所には、地面に突き刺さり動きを止めた猛牛の姿。

完全に動きを止めている。ピクリともしていない。

「おおー、あのタフなアンデッドを一撃とは! 何ともすごい技じゃの!」

「――百華拳、 魂撃(コンゲキ) 。肉体に存在する魂の器部分に直接気を叩き込み破壊すれば、不死者も二度と蘇ることはないあるよ」

死霊魔術は対象となる死体に魔力を送り込み、意のままに操る魔術。

基本的に死体があれば成立するはずだが、どうやっても発動しない事がある。

それを術者の間では魂の損傷が激しいと言われているのだが、なるほど魂の器か。そう考えれば納得出来るな。

「魂の器か。ふむ、確かに意識を集中すれば何かが見える。ふむ、こんな感じか……のっ!」

そう言ってクルーゼは、おもむろに剣で魔物の死体を突いた。

気を集中しての攻撃により、先刻まで魔物の中にあった『何か』が失われていくのを感じる。

「おお、何かを消した感覚があったのう。今のが魂の器とやらじゃな?」

「……驚いたある。魂撃は基礎さえ出来ていれば難しい技ではないけど、魂の器を見つけるには心眼が必須。それを見ただけで成功させるなんて!」

目を丸くするタオを見て、クルーゼは大笑いする。

「はっはっは! まーわらわは天才じゃからのー! よしお前ら、ここらの魔物を全て魂撃で仕留めて見せよ。やり方は見たから出来るじゃろ?」

「うおおおおっ!」

言われるがまま、クルーゼ隊の者たちは魔物の死体に攻撃を始めた。

流石に一発で成功する者はいないが、何度も攻撃するうちに成功する者が出始めた。

「おおっ! 今確かに手応えあったぞ!」

「こちらも出来るようになりました!」

「俺も俺も!」

小一時間もすればその場にいた兵たちは皆、魂撃を習得していた。

おお、流石はクルーゼ隊、皆腕自慢揃いだな。

流石にタオやクルーゼのように一度で魂の器を打ち抜く者はいないが、

クルーゼはそれを見て満足げに頷いている。

「うむうむ、それでこそ我が精鋭たちよの。よぉしこれで後方の憂いは消えた! 数名は戻って他の者たちに魂撃を教えよ。まだ未熟な者は少し後ろを歩き練習しながらついてこい。さぁて者ども稼ぎ時じゃぞ! 全軍突撃! 存分に敵を駆逐するがよい!」

「うおおおーーーーっ!」

まるで地鳴りのような声を上げる。

凄まじい気迫だ。クルーゼ隊は魔物を踏み潰すように前進していく。

「タオと言ったか。礼を言うぞ。この戦いが終わったら望む褒美をくれてやろう」

「楽しみにしておくよ」

「はっはっは! 楽しみにしておくがよい!」

一方的にそう言って、クルーゼは隊の中に入っていった。

タオはそれを見送りながら、ほうとため息を吐く。

「中々剛気な人あるな」

「クルーゼ姉さんは気前の良さも有名なんだよ。金貨百枚でも何でも叶えてくれると思うよ」

クルーゼ隊の士気が異様に高い理由の一つはこれだ。

他の軍より命を賭ける事が多い第二部隊は、功労に応じて非常に高価な褒美を貰えることになっている。

文官たちは苦言を重ねているが、クルーゼは王女権限で無視しているとか。

タオは少し考えて、ぽつりと呟く。

「……そうね、じゃああの人と一つ手合わせしたいと言ったら、受けてくれるかしら」

「ええっ!?」

俺が驚くのを見て、タオはくすくすと笑う。

「あはは、何その顔。アタシを何だと思ってるある?」

物欲の権化、と言いそうになるのを何とか飲み込む。

いつもなら隊のイケメンたちとお茶会を催してくれ、とか言いそうなものだが。

「そ、そりゃ喜んで受けてくれると思うけど……どういう心境の変化?」

「この大陸に来てからアタシは自分が井の中の蛙だったのを嫌になるほど思い知ったね。だから山籠りをしてたけど、強くなるにつれて自分の未熟さを思い知らされる気持ちよ。クルーゼ様は恐らくアタシが今まで会った中で一番の達人、稽古をつけて貰えばもっともっと強くなれるある」

真っ直ぐに前を向きタオは言う。

俺はそんなタオの手を取り、ぶんぶんと振った。

「タオがそんな真剣だったなんて……感動したよ! 俺も出来る事があれば何でも協力するからね! 新しく覚えた技の試し撃ちとか!」

「ホントあるか?」

嬉しそうなタオだが、それはこちらも同じだ。

やはり気は奥が深い。

クルーゼとの修行で得たタオと戦えば、より効率的に新たな気の技を覚えられるだろう。うん。

「ってーかよ、何で王族がこんな前線に出張ってるんだ? しかも王女がよ」

今更ではあるが、至極もっともな疑問にビルスは首を捻っている。

サルーム《うち》は個性を伸ばす教育方針なので、やることやってればある程度は自由に出来るのだ。

シュナイゼルもクルーゼも、次期王位継承権を持つ者としてやるべきことはやっている。

やっててアレなのだ。うーん恐ろしい人たちである。