軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

山賊たちと戦います。前編

というわけで山攻めが始まった。

山の上空に神聖魔術『陽光』で灯りを作っているので、夜の山でも十分に進軍可能だ。

「それでは皆さん、頑張っていきましょう」

まず正面から攻める部隊、その先頭を歩くのはイドだ。

俺の作ったホムンクルスだけあって操作できる魔力兵の数は千体。

念話で俺との通信も出来るし、この隊を纏めてもらっている。

それに続くのは受付嬢カタリナが集めた冒険者たちと俺の元へ残った兵、約百名だ。

彼らが操作出来るのは、まだ五十体前後。

合計約千六百名、これがイド部隊である。

そしてもう一方、イド隊のすぐ横から攻め登るのは、魔力兵の運用が上手く本人たちの戦力もある元暗殺者ギルドの面々が中心となった隊だ。

取りまとめているのはガリレア。俺の使い魔であるシロを付けており、それを介して念話での通信が可能である。

ガリレアが操作出来る魔力兵は百五十体、タリア百十体、バビロン百十体、クロウ百二十体、そしてレンは百八十体。

魔力操作の訓練をやったのが功を奏したのだろうか、一人当たりの要求数である百体を早くも上回っている。

それに続くのはギタンとラミア。二人もそれなりに魔術の心得はあるはずなのだが、現状では七十体ほどしか操れない。

魔力の有無で操作出来る魔力兵の数はそこまで変化はないし、どうやら魔力操作には魔術師としての技量よりも魔力を扱うセンスが重要なようだな。

イド隊と同様、その後に冒険者たちと兵が続く。

合計千五百名、これがガリレア隊である。

この二つの隊で連携を取りつつ、山を攻める予定だ。

戦いが終わる頃には皆、操作に慣れてもっと魔力兵を操っているだろう。

ちなみに余った魔力兵は本陣である俺たちの周りに待機している。

「ロイド様、お茶でございます」

「ありがとう」

シルファの注いでくれたお茶を飲み干す。

なお、シルファは俺の護衛である。

どうやら魔力兵がシルファの動きのイメージについてこれないらしく、すぐに動作不良を起こしてしまうのだ。身体能力が高すぎると言うのも考えものだな。

「おっ、始まりやがったぜ」

おおおおおお! と山の中で咆哮が聞こえてくる。

あの方角、イドだろうか。

そんなことを考えていると、イドから念話が届く。

『ロイド、戦闘が始まったよ。この魔力兵、中々使いやすいね』

『誰でも使えるようにしたからな。しかしお前が千体も操れるとは思わなかったが』

『こちとらゴーレム研究の第一人者だよ? 本気を出せばもっといけるさ。……しかしこれほどの魔力兵をここまで出しておいて、いくらロイドとはいえ大丈夫なのかい?』

『一応、何とかなってるよ』

『まぁ君のことだからあまり心配はしてないけどね。ともあれ無理はしないでくれよ。君を倒すのはこの僕なのだから』

そう言って、イドの念話が途切れる。

戦闘が本格的に始まったようだ。

『おーい、こちらガリレアだ。聞こえてるかロイド様よぉ』

今度はガリレアから念話が届く。

『あぁバッチリだ』

『そうかいそうかい。今しがた敵さんとぶつかったところだぜ。んー、しかし割と苦戦してるようだ。どうと魔力兵の動きが鈍いっつーか……まぁ敵さんが強いんだろうな。地の利もあるしよ。まぁとりあえず頑張ってみるぜ』

『頼んだよ、ガリレア』

念話を切った俺は、ふぅと大きく息を吐く。

額を拭うと汗が僅かに付いていた。

「ロイド様、なんか無理してないですかい?」

「あぁ、戦闘状態に入ってから明らかに負荷増えたからね。魔力兵のコントロールを維持するだけでも意外と大変だ」

基本的な操作は皆に任せているが、それを補うのはあくまでも俺の魔力で行っている。

一万体の魔力兵を操作する為、俺は膨大な魔力を使い続けているのだ。

明日までにいい感じの術式を作り上げて魔力を効率化し、俺への負担を減らさなければ自由に動けないな。

「いくらなんでもこれだけ魔力兵を維持するとなりゃあ、いくらなんでも疲弊するか。それでもまだまだ凄まじい量だが、今まで全く見えなかった魔力の底が僅かにだが見えてきやがる……! もしこのまま弱っちまえば……!」

グリモが何やらブツブツ言っているが、術式を組むのと魔力兵の維持に集中しているのでよく聞こえない。

『くそ、敵を追いかけていたら囲まれた!』

『巧妙に誘導してやがる! 下からは上がどうなってるか見えやしねぇしよ!』

『イドは『飛翔』を使って、上から見渡して指示を出せ。ガリレアはシロの鼻を使うんだ』

『ダメだ。奴ら結界崩しの矢を持っている! 僕の結界では集中攻撃されたら破られてしまう!』

『連中、さっきから妙な薬品を撒いてやがる! シロがそれを臭がって鼻が使えねぇ!』

話に聞いていた通り、山賊たちはかなりのやり手のようだ。

これは中々苦戦しそうである。

「苦戦しているようですね」

「あぁ、敵は相当の手練れだね。ここからでは状況がわかりにくいし、参ったよ」

「……私が行きましょう。本来であれば、ロイド様のお側を離れるのは心苦しいのですが、今はあの深い森の中では現場で指揮する者が必要でしょう。これでもクルーゼ様の元で戦術を習っていた身、いたずらに兵を減らすのは避けたいですから」

「うん、任せたよシルファ」

「ロイド様の剣として、敵を貫き屠ってまいります。では!」

そう言うとシルファは馬に跨り、颯爽と山へ駆けて行く。

屠るんじゃなくて、仲間に入れるんだけどな。……憶えているといいんだけど。

「お頭ァ! 奴らこっちの罠に面白いようにかかってやがるぜ!」

「クク、当然だボケ。こちとら暇さえあれば、大量の罠と策略を仕込んでるんだからよ。簡単に突破されちゃあその甲斐がねェってもんだ」

ビルスは満足げな顔で山中を見下ろす。

山頂は続く道は森の木々で偽装した天然の狩場。

下からは様子が見えず、敵に翻弄されているうちに行き止まりへと追い込まれる。

そこを囲み、叩く。

この山はこれらの罠を無数に張り巡らせており、数多の兵たちが返り討ちにされてきたのである。

今回もそのはずだった。シルファが戦列に加わるまでは。

「た、大変だお頭ァ! 狩場が潰されてやがる! 奴ら、こっちの裏をかき始めやがった!」

報告を待つまでもなく、上から見ていたビルスはすぐそれに気付いていた。

チッと舌打ちをしながら見下ろすと、今しがた破られた狩場に銀髪のメイド、シルファを見つける。

どうやら狩場への誘導を途中で気づき、囲おうとするところを逆に叩いているようだった。

「起こりに気付いていやがる、か。中々いい嗅覚してんじゃねぇの。ククッ」

「笑ってる場合じゃねぇぜ! どうすんだよお頭ァ!」

慌てる部下たちにもビルスは動じない。

しばし考え込んだあと、小さく頷き言った。

「しゃーねェ。俺様が行くしかねェかよ。おい、待機してる奴ら全員集めろ。ぶっこむぞ」

「おおおーーーっ! 流石はお頭だァ!」

部屋を出るビルスは、口元に薄く笑みを浮かべていた。