軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

山賊を潰しにいきます

「あれ? タオさんは来てないの?」

レンが辺りを見渡すがタオの姿は見当たらない。

シルファはどこか残念そうに首を横に振る。

「どこを探してもいませんでした。全くいつもは呼んでもないのに出張ってくるというのに……」

どこかへ行ったのだろうか。

魔力を広げて街の中まで気配を探ってみるが、どこにもいないように感じる。

「自宅や彼女が行きそうな場所も当たってはみたのですが」

「見つからなかったのか」

頷くシルファ。

タオとシルファはあまり仲良くないと思っていたが、よく自宅や普段行きそうな場所とか知ってるな。意外である。

「受付さんは何か知らないの?」

「んー、そういえばひと月ほど前から見かけませんね」

カタリナが唇に指を当て、首を傾げる。

ひと月前っていうとゴーレム武闘会があった頃か。

そういえばあの時、試合で負けたタオは珍しく落ち込んでいた気がする。

「ショックで国に帰った、とかでしょうか?」

「あの娘がそんな殊勝ではありませんよ。ですが負けてそのまま、というような軟弱者とも違う。……きっとどこかで腕を磨いているのだと思います。諦めが悪い娘ですからね」

シルファは確信めいたように頷いている。

何だろうこの通じてる感。

二人は案外仲がいいのかもしれないな。

「とはいえいないものは仕方がありません。それよりロイド様、これだけの大部隊となると、ロイド様お一人では指揮を取るにも限界がございます。どうでしょう、軍師を加えられてみては?」

「軍師、か」

確かに、現実問題として俺一人で彼らの指揮を取るのは難しいだろう。

「ロイド様は面白いモン見つけたら、指揮なんかほったらかして見に行きそうですしね」

「それをカバーする人物、確かに必要でしょうね」

うんうんと頷くグリモとジリエル。

いやいや、いくら俺でもそんな無責任なことは……ない、とは言い切れないかもしれない。

「……そうだな。しかしそう都合よく軍師なんて見つかるのか? 明後日にはもう大暴走が大陸門を襲うんだぞ」

アルベルトから聞いた期限は明後日、それまでに大陸門へ集まらなければならない。

遅れたら折角の大イベントに参加出来なくなる。それは避けたい。

俺の言葉を待っていたかのように、シルファは頬を赤らめてコホンと咳をする。

「それはその、僭越ながらこの私めが務めさせていただければと。こう見えてクルーゼ様に兵法の指南を受けておりまして……」

「そういうことなら大陸門に向かう道中にめちゃくちゃつえー山賊団がいるってぇ話を聞いたことがあるぜ」

シルファが言いかけたところで、ガリレアが割って入る。

「何でも三千人を超えるとかいう巨大山賊団でよ、元々はバラバラだった山賊たちを何年か前に夜王と名乗る一人の男がまとめ上げたんだ。とんでもなく頭が切れる奴で、軍も何度か動いたが攻めきれずに撤退を余儀なくされたとか。だが山に居座ってはいるものの人を襲ったりはしねぇらしいから、国もそれ以上手を出してはいないってよ。そいつを軍師にするってのはどうですかい? ロイド様」

「な……山賊を軍師として使うおつもりなのですか!? ロイド様、いくら何でもそれは……」

「いいんじゃないか」

シルファが何か言いかけたところで、俺はガリレアの言葉に頷く。

山賊にそこまでの興味はないが、相当の戦術と統率力がないと軍を相手にすることは出来ない。

しかも人を襲わずに三千人もの軍を維持しているということは、食料や何やらも自給自足しているのだろう。

それを一人で指揮しているとは、夜王というのは相当出来る奴とみた。面白い戦術、ひいては魔術の使い方も見られそうだし、行ってみる価値はある。

「それに道中なら、皆が魔力兵を使う訓練代わりになるかもしれないしな」

ぶっつけ本番で魔力兵を使って戦わせるより、その方がより戦果を見込めるはずだ。

仮に夜王とやらを仲間に出来なくても、それはそれで美味しいだろう。

「しかしロイド様よう、よく知りもしねぇ奴に軍師なんて大事な役目を任しちまっていいんですかい?」

「反目するのであれば神聖魔術で浄化してしまえばいいでしょう。あれを使えばどれほど不徳の輩だろうがロイド様に従順になる」

そう、神聖魔術『浄化』を使えばその邪心は消え去り、どんな悪い奴も真人間に変えてしまうのだ。

……いや、真人間というか若干その、人格改造的な術なので倫理的にはちょっとアレなのだが。

「あー、あの外道魔術かぁ……これだから天使どもはよぉー」

「誰が外道魔術だ! 神に仕える者たちの為の神聖なものなのだぞ! 訂正しろ魔人!」

ジリエルは憤慨しているが、グリモの言うことも一理ある。

ともあれ使う相手は選んでいるつもりだ。素直に従うなら使うつもりのないしな。

「ロイド様がそう仰るのであれば、私からこれ以上言うことはありません。その山賊のアジトとやらを潰し、使えそうであれば軍師をやらせるとしましょうか」

「ははっ、ロイド様からすりゃあ大した相手じゃないかもしれねぇがな」

「というかロイドとまともに戦える相手なんているのかな……」

「そもそも我々がやることがあるのかどうかすら……いえ、ロイド君をS級冒険者にするにはここで恩の一つも売っておきたいところ。頑張りましょう皆さん!」

「えーと……私たちはそれなりに頑張りましょうね」

「というか僕たちはついて行ってもいい……んですよね?」

「バカ、じゃねーとシルファ様に殺されるぞ」

「ひっ、くわばらくわばら……」

皆、何やらブツブツと言っているようだが、各々の声が混じってよく聞こえない。

ま、何でもいいか。

「ではロイド様、アルベルト様の元へ軍の編成が終わったと報告に行って下さいませ。私は彼らに兵としての教育をしておきますので」

「それじゃあ僕は魔力兵の使い方を皆に教示しておくかな」

「助かるよシルファ、イド。任せた」

俺は二人に皆を任せると、アルベルトの部屋へ向かうのだった。