軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ。

バートラム王国の北部にある宮殿、中に入ると真っ赤な絨毯の敷かれた長い、長い通路があり、その先には玉座がある。

そこに座っているのは美しき女王、シルビア。

まるで氷のように無表情なことから氷の女王と呼ばれている人物で、前に立つだけで圧迫感を感じる程だ。

「よくぞ来て下さいました。サルームの王子たち。歓迎いたします」

歓迎する気など微塵も感じない冷たい声に、俺と傍にいたアルベルトは膝を突く。

数日前、俺の元にバートラム女王から使者が来た。

曰く、都合の良い日でいいので王宮に来て欲しい、とのことだ。

突然の使者に慌てる俺を心配したアルベルトが付いてきてくれたのである。

持つべきものは頼れる兄だ。

しかし何故を俺を呼びつけたのだろうか。

……いや、心当たりは山ほどあるが。

やはり大規模魔術で街を破壊したのがよくなかったか?

はたまた街で暴れたイドを匿っているのを知られた?

あるいは禁忌とされているホムンクルスの生成が明るみに出たという線も……うーん、どれだろう。ていうかどれだとしてもヤバいよな。

まさか全部バレたってことはないと思うが……戦々恐々としている俺をシルビアが切れ長の目ででじっと見てくる。

射抜かれるような鋭い視線、まるで全てを見透かされているようだ。

「……ロイド=ディ=サルーム。あなたはとんでもないことをしてくれましたね」

そう言って大きくため息を吐くシルビア。

うぐっ、やはり何かやらかしてしまったか。

観念する俺に、シルビアが何か言おうとした瞬間である。

「お待ち下さい」

アルベルトが一歩前に出て、口を挟む。

シルビアの鋭い視線にひるむことなく言葉を続ける。

「それ以上の話をするにはロイドはまだあまりに幼い。ここは僕の顔に免じて勘弁してはもらえないでしょうか?」

「……ふむ、サルーム一の切れ者であるそなたにそこまで言わしめるとは……私の目も節穴ではなかったということでしょうか?」

「お戯れを……シルビア女王陛下の目をごまかせるとは思っておりません」

「まぁ、そうでしょうね。でなければ忙しいそなたがこんな所にいるはずがありません」

二人は何やら明言を避けるように話をしている。

一体何を言っているのだろうか。きっと庇ってくれているのだろうが……

「とはいえここまで派手にやるつもりはなかったのですが。ははははは」

「そなたの想定をもはるかに超える規格外、ということでしょうか。ふふふふふ」

かと思えば何やら楽しげに笑い始めたぞ。

よくわからないが思った以上のやらかしをしたのかもしれない。

これ以上話を聞くのが恐ろしくなってきた。

こういう時は他のことを考えて意識をそらすべきだろう。……現実逃避とも言うが。

「やはりシルビア女王の目的はロイドへの引き込みか。留学などの形をとって、様々な研究機関で技術開発をさせるつもりなのだろう。きっと条件は相当いいのだろうが、ロイドを貸し与えるのとは到底釣り合うまい。やれやれ、来て良かったよ。なんだかんだ言ってもロイドは子供、このまま取り込まれる可能性は大いにあったからね」

「今年のフェスは例年の何倍もレベルが高かった。にもかかわらず圧倒的強さで勝利し、あまつさえあの巨大ゴーレムをも倒す実力派。……技術立国である我が国としては是非欲しい人材。故にどうにかして口説き落としてその腕、存分に我が国で奮って貰いたいと思いましたが……やはりそう簡単にはいきませんか。サルーム王が第七王子の出来の良さを言い回っていたのは知っていましたが、確かに恐るべき子です。とても残念ですが、自国から出さないのも仕方ないことですね」

二人は真剣な面持ちで何やらブツブツ言っている。

いまいちよく聞こえないが、高度な情報戦をしているに違いない。

まったく、アルベルトが来てくれてよかったよ。

俺はこういう政治的なやり取りはわからないからな。

とりあえず愛想笑いでも浮かべておこう。はは、ははははは。

「ふぅ、何とか事なきを得たな」

王宮を後にしながら、アルベルトが息を吐く。

「ありがとうございましたアルベルト兄さん。僕一人ではどうなっていた事やら……」

「なに、気にすることはないよ。僕の為にやったことでもあるのだからね」

本当に気にする様子もなく、爽やかに笑うアルベルト。

性格までイケメンだ。持つべきものは出来た兄である。

「それにしても今回のフェスで我が国の技術力を他国に見せつけて牽制する予定だったが、予定していたものよりはるかに大きな効果を上げたな。大会に優勝したことで注目を集め、他国の錬金術師たちまでもが技術研修の名目で我が国に入ってきたし、父上もかなりの予算を出してくれた。シルビア女王にまで目を付けられたのは想定外だったが……副産物としてゼロフの性格もかなり改善したし、謎の巨大ゴーレムと戦ったおかげでディガーディアの機体上限値も知れた。本当に想定以上の結果だったな。これもロイドのおかげだな。全く、持つべきものは出来た弟だよ」

アルベルトがブツブツと呟きながら、歩き始める。

あ、ちょっと早いって。

俺とは足の長さが違うんだぞ。

「待ってくださいよーアルベルト兄さん!」

「ははは、追いつけたらアイスクリームを買ってあげよう」

「本当ですかっ!? よーし、がんばるぞー!」

爽やかに笑うアルベルトの背中を、俺は駆け足で追いかけるのだった。