軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

巨大ゴーレムとバトルします、前編

ディガーディアを前傾に倒して街を一気に駆け抜けていると、前方から民家が崩れた。

崩れ落ちる瓦礫に混じって見えるのは、小さな子供だ。

「ロイド様、子供が落ちてきやすぜ!」

「うん、見えている」

そう言ってディガーディアを急速旋回させると、落ちてくる子供をキャッチした。

「間一髪でしたねロイド様。他にも逃げ遅れた人々がいるようですが……」

「あぁ、これじゃ戦いに集中出来ないな」

子供をそっと地面に下ろして立ち上がり魔力集中を行うと、人の気配がそこかしこにあるのが分かる。

このままだと戦いの邪魔になりそうだし、退いて貰うか。

「感知、範囲拡大、座標指定……『飛翔』」

風系統魔術『飛翔』な術式を組み替え、自分以外の生物に作用させたのだ。

バートラム街中の人間数千人+犬猫家畜が風の衣に包まれ、ふわりと宙に浮き始める。

それを全て、街の外へと飛ばした。

「お優しいこって。……ですがどうもこれだけの街にしては人が少なかったようですな」

「恐らくイドが俺と同じように街の人々を逃したんだろうな」

先刻、『飛翔』にて街の人々を浮かせた時に、広場付近に全く人がいなかった。

普通に考えれば逃げ遅れの一人や二人はいるはずだが、それがいないとなるとイドが退避させたたのだろう。

「なるほど、ロイド様のホムンクルスであればその程度、わけはないでしょうしね」

「うん、とにかくこれなら街全体を使って戦えそうだ。思う存分ね」

俺は笑みを浮かべると、思い切りレバーを倒し、全速力にて広場を目指す。

いつの間にかタルタロスの大きさは、ここからでも見えるほど巨大になっていた。

「そろそろ広場ですぜ、ロイド様!」

「心の準備をしてくださいませ!」

二人の声に頷きつつ、ディガーディアを走らせる。

目の前の時計塔の向こうが広場だ。

瓦礫を踏み潰し、廃墟を飛び越え、最後の直線に入ったその時である。

どがぁぁぁぁぁん! と激しい音と共に目の前の塔が縦に割れた。

崩れ落ちる瓦礫と舞い上がる土埃を、巨大な触手が振り払う。

その先に見えるのは、規格外な大きさに成長したタルタロスだった。

ディガーディアの二十倍はあろうかという巨体、全身の触手は更に増え、更に伸び、地面を覆うほどになっていた。

というかタルタロスの身体はほぼ触手、イソギンチャクのようになっている。

見上げた先、頭部の辺りにゴーレムらしき何かがあるだけだ。

「でけぇ……!」

「ここからではゴーレムの顔すら見えませんね」

なんという巨体だろうか。

これではどこを狙っていいかすらわからない。

「おおっ! ディガーディア! もしかしてロイドかい!?」

「ルゴール!」

声の方を向くと、マギカミリアが土煙の中から現れる。

「よかった! 来てくれたのか!」

「うん、状況は?」

「最悪ではないよ。君が来てくれたから。……もちろん良くはない。マギカミリア以外のゴーレムは全部奴に取り込まれてしまったよ」

憎々しげな歯噛みの音がゴーレム越しにも聞こえてくる。

魔力集中で探ってみると、周囲の魔力炉反応はなし。

代わりにタルタロスに全て集まっていた。

他のゴーレムを吸収し、ここまで大きくなったのか――いいね。潰し甲斐がある。

ゼロフから強引にゴーレムを奪ってきたのだし、楽しませてもらわないとな。

「やろうロイド、僕たち二人で!」

「いや、ルゴールはここで引いた方がいい」

「な……っ!?」

信じられないといった声のルゴールに、俺は言葉を続ける。

「もう燃料が切れかけているんじゃない? 関節部を破損してるみたいだし、装甲もボロボロ、もう限界だと思うよ。ここは俺に任せて後方に下がるんだ」

折角の一対一の戦いに水を差されると困るしな。

「し、しかし……」

「そのゴーレム、大事にしてるんでしょ?」

それにマギカミリアの外装には、無駄ともいえる程の膨大な手間がかかっている。

術式や制約もなしにゴーレムを女性型をする理由は、愛しかないだろうからな。

そんなゴーレムを巻き添えにするのは非常に心苦しい。

図星だったのだろう、俺の言葉にルゴールは息を呑んで答える。

「……あぁ、その通りだよ。かつて我が国を守った英雄、戦女神と敬われた人を模したマギカミリア。この機体には僕たちの想いが込められている。だから無理はしなかった。出来なかった。……でもね、同じ錬金術師としてアレを野放しには出来ないんだよ。ゴーレム製作には大勢の人が関わっている。莫大な金と膨大な時間がかけられている。そんなゴーレムが制御不能に陥り、街を破壊したなんてことになったらもう二度とゴーレムを作れなくなるからね」

ルゴールの言う通り、遥か昔から今現在に至るまで人々は様々な技術が生み出してきた。

そんな中、人の力で御しきれない危険な技術は禁術とされ闇に葬られてきたのである。

一度目をつけられれば同系統の技術にも目を向けられ、そうなったら錬金術そのものが禁じられる可能性すらあるだろう。

そうさせない為にルゴールら錬金術師は逃げなかったのだ。

自身の手であのゴーレムを止め、皆にゴーレム自体は悪しき禁術ではないと証明せねばならないから。

魔術史にもそうして禁術とされてきたものは幾つもある。

気持ちはわかる。俺だって極悪な魔術師の暴走で魔術全てが禁じられそうになったら、命がけで戦うだろうからな。うんうん。

「どちらかと言えばロイド様がやらかす側じゃないっすかね」

「というか既に大分やらかしている気も……」

グリモとジリエルが何やらブツブツ言っている。

そうこうしているうちに、煙が晴れたその向こうでタイタニアと俺の視線が合う。

「待ちわびましたよロイド、ようやく来てくれた!」

「イド……!」

「ふふ、あなたを見下ろせる日が来るなんてね。タイタニアを作った甲斐があるというものです。ふふ、あははははは!」

勝ち誇ったように高笑いするイド。

だがすぐに笑うのを止め、こちらを向き直る。

「戦力差は歴然、とはいえ相手はあなただ。出し惜しみをして勝てる相手だとは思っていません。最初から全力で行きますよ」

タイタニアが一歩、二歩と歩み寄ってくる。

そのたびに地面が揺れ、家屋が崩れる。

すさまじい圧力、まるで大気が震えているようだ。

俺はそれに応じるべく、ディガーディアのレバーを握りしめた。