軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

拠点発見、ですが……

「オンッ! オンオンッ!」

翌日、早速シロが帰ってきた。

首に括り付けられている手紙をするりと解いて広げると、ガリレアの見た目に似合わぬ繊細な字が紙面を綴っている。

「えーとなになに……目標地点を探索した結果、それらしき場所を見つけた。シロがそこまで案内してくれるはずだ。……か」

流石、仕事が早いな。

「くぅーん」

「うんうん、ありがとうなシロ」

よしよしと頭を撫でると、シロは俺の襟首をひょいと咥えて背中の上に放り投げた。

「よし、行こうかシロ!」

「オンッ!」

俺がしがみついたのを確認してシロは力強く地面を蹴る。

ひとっ飛びで城の外に出て、草原を駆けていくシロ。昔よりも更に早くなっているな。

俺の『飛翔』に近いレベルである。

凄まじい速度で景色が流れていき、荒野のど真ん中で停止した。

「おー、来ましたかいロイド様。流石に速えや」

「というか結構城から距離が近かったな」

ここはサラームとバートラムの丁度中間にある荒野。

普段は人通りもほとんどなく、何か悪巧みをするならうってつけの場所だ。

「うん、この荒野なら結構無茶をやっても問題は起こらなさそうだ。イドのやつ、いい場所を見つけたな」

「裏の世界ではここいら一帯は割と有名な隠れ場所でしてね、打ち捨てられたダンジョンが多く、それを改造して住処にしてる輩がいるんでさ……おっ、あそこですよ」

ガリレアの指さす先、巨大岩盤に蓋をされたような場所が見えた。

近づいてみると、レンの薬品で浮かび上がったイドの足跡が奥の階段へと続いている。

なるほど、これなら隠れ潜むには最適だ。

「よく見つけてくれた。それじゃあシロとレンだけついてきて、他の皆は外で待っててくれ」

ぞろぞろついてこられても、戦闘になったら守り切れないからな。

シロには嗅覚と機動力、レンには薬でのより詳細な追跡力があるので必要だ。

「気ぃつけて下さいよ」

「うん、ガリレアたちもヤバくなったらすぐ逃げるんだぞ」

「はっはっは、こちとら逃げ足には自信がありますぜ!」

レンと顔を見合わせて苦笑しながらも、俺たちは地下へと潜っていく。

「うわぁ、すごく広いね」

感嘆の声を上げるレン。

目の前には直径100メートルはあろうかという巨大な穴が真下まで続いている。

恐らくダンジョンの天井を破壊し、吹き抜けにしているのだろう。

その上に岩盤で蓋をした、と。

相当手間をかけているようだが、そこまでしてここまで大きな穴を作る意味があったのだろうか。

ともあれ俺たちは穴の周りに取り付けられた螺旋階段を降りていく。

「なんかイヤーな感じ……」

「感知用の結界を張っているようだな」

侵入者が触れれば、それを術者が感知出来る結界が広範囲に展開されている。

当然、中和結界を展開してすり抜けるようにして移動しているが、レンはその際に生じる魔力の歪みを感じているのだろう。

おかげで向こうからは察知されないが、代わりにこちらも下の様子はわからない。

どんどん降りていくと、ぼんやりと明るくなっていく。

「底が見えて来たよ、ロイド」

「うん、だけどイドはいないようだな」

ここまで来ると流石に魔力を探知出来るが、周りからはイドらしき魔力は感じられない。

地面の底まで降りると、だだっ広い空間が広がっている。

レンがしゃがみ込み地面に薬品を振りかけると、ぼんやりと足跡が浮かび上がってくる。

足跡は辺りを歩き回っているようだ。

「おかしいなぁ。足跡はここへ続いているし、出て行った形跡は見当たらないのに……」

「ウゥゥ……」

シロもまた地面に鼻を擦り付け嗅ぎまわっているが、匂いの元にはたどり着かないようで辺りをぐるぐる回っている。

……ふむ、ここにいたのは間違いなさそうだが、外に出た様子もないか。

なのに気配を感じないとは何とも不可思議だ。

隠れ潜む場所は見当たらないし、一体どこへ姿を消したのだろうか。

奥には小部屋があり、そこには錬金術に使う用途のフラスコや試験機器、様々な液体や金属が置かれている。

どうやらここは何かの研究施設だったようだが……む。

ふと、俺はそこで使われているものに既視感を覚えた。

ラミアたちが行っている合成生物の実験で使われていた装置とそっくりなのだ。

人造生物の研究……? だがあそこの何倍もあるようぞ。一体何をしていたのだろうか。

「ロイド、ちょっと来て!」

「どうしたレン」

レンに呼ばれて元いた広場に戻ると、地面がぼんやりと光っている。

「薬を地面に撒いてみたの。そしたら……ほら」

「見事に中央部分だけは反応がないな」

広場の中央、半径10メートルほどの範囲だけ、切り取ったかのように薬品の反応が見られない。

まるで『巨大な何か』があったかのように。

「恐らく、イドはここにあるゴーレムに乗って逃げたんじゃないかな。それならシロの嗅覚でも追えないだろうし」

「くぅーん」

なるほど、理にはかなっている。

ゴーレムを作るにはこれくらいの大穴は必要だろうし、飛行能力を持つゴーレムなら足跡を残さず飛び去ることも可能だ。

しかし何かが引っかかる。一体何が……

「おおーーーい! おおおーーーい!」

俺が考え込んでいると、頭上から声が聞こえる。

ガリレアが何か叫んでいるようだが、遠すぎてよく聞こえない。

何やら切迫している様子だ。ここにはもう用はないし、戻るとするか。

「レン、シロ、俺に掴まれ」

「う、うん!」

二人を俺に掴まらせ、風系統魔術『飛翔』を発動させる。

風が俺たちの身体を包み、ふわりと浮いてあっという間にガリレアのいる場所まで上昇した。

「どうかした?」

「ロイド様、大変だぜ! 今バートラムを調べさせてた部下から知らせが入ったんだがよ、どうやら巨大なゴーレムが暴れてるらしい!」

「それってもしかして……!」

ガリレアの言葉にレンが俺の顔を覗き込む。

なるほど、ここに置いてあったゴーレム、か。

薬の跡からして、相当なサイズだったし理にはかなっている。

何かが引っかかるが……ともかく行ってみるとするか。

「ありがとうガリレア、ちょっと行ってくるよ」

「……気をつけてね、ロイド」

「俺たちがついてっても足手まといだろうしな。おいおいレン、寂しそうな顔してるんじゃねぇぜ」

「し、してないし!」

「オンッ!」

顔を赤らめるレンと尻尾を振るシロを地面に降ろし、俺は大きく伸びをする。

「よし――行くか」

そう小さく呟いて、俺はその場を一気に飛び去るのだった。